051
(YUKINO‘S EYES)
ターンが切り替わり、あたしの二度目のチョイス。
なぜ、81という数字を雪乃が言ってきたのか分からない。
だけど、遥乃からヒントを引き出すことは難しい。
唯一のヒントは、遥乃に関した数字であるということ。
その数字は、あたしが買ってあげたオモチャの数では無かった。
(遥乃が選んだ数字は、本当に彼女に関する数字では無いのだろうか)
前回の多田の事もあった。
嘘をついて騙すことも、このゲームでは当たり前だ。
それこそ心理戦で、私は遥乃の言葉を考えていた。
考えながらも、あたしはにこやかな顔を見せていた。
「今、あたしは特別なことをしている」
「何を言っているの?」
「あたしは、平凡が嫌いだった。だけど、今の私は平凡を夢見ている。
遥乃と一緒に、学校に行ったり……お昼を食べたり。そんなことをしたい」
「雪乃は、なんで急にそんな事を言うの?」
遥乃の顔が、険しくなった。
だけど、あたしは笑顔だった。
追い詰められていて、ゲームで劣勢なのにもかかわらず笑顔を見せていた。
「だって、そうでしょ。
あなたと一緒に、カードゲームをしている。
小学校に上がった最初の夏休みの夜、おばあちゃんの家に行ったとき覚えている?
あのとき、ババ抜きをしたよね」
「それが、何なの?」
「あのとき、なかなかジョーカーを引き続けて……1時間も決着つかなかったよね」
「そうね、覚えているわ」
「あたしも、雪乃もジョーカーを引き続けて……全然決着がつかなくて……」
「最後は、私が折れたんでしょ。あなたに、ハートの5のカードを引かせて」
「おお、覚えているのね。最後のカードも」
あたしの言葉に、遥乃は少し照れくさそうな顔を見せた。
だけど、すぐに遥乃は真顔に変わった。
「今回はあなたに、ハートの4を渡さないわ。
あなたのスペードの4が揃って抜けることは、絶対にない」
「遥乃、あなたはちゃんと記憶力があるのね」
「何?私はそんなことを」
「もしかして、それが答え?」
「違うわよ」
「じゃあ、試してみてもいい?」
穏やかな顔で、あたしは遥乃を見ていた。
不機嫌に軽く怒った遥乃は、腕を組んでいた。
砂時計の砂が、確実に落ちていく。
「バカじゃないの?」
「そうだろうね」
穏やかな顔と対照的に、あたしは頭をフル回転していた。
遥乃は、さっきの会話で数字を言っていた。
最初のターンの数字から鑑みて、考えをまとめた。
(……まあ、最初の数字が82。
つまり十の位は8ではないし、一の位は、2ではない。
その情報だけが、唯一ある)
あたしは、真っ直ぐ前を向いた。
(それでも、多分この数字は一度選んだ方がいいと思う)
そこで、あたしはある数字を思い出した。
「コール『55』あたしは二度目の数字を選択した」
「なるほど、この数字を選んだのね」
「そう、5月5日。この日を覚えている、あなたと私の誕生日よ」
「ええ、覚えているわよ。雪乃」
それは、双子のあたしと遥乃の誕生日だ。
だけど、遥乃は口元に笑みを浮かべた。
「でも残念ね、どちらもかかっていないわ」
遥乃は、嬉しそうに話していた。
それでも、あたしには焦りが無かった。
その顔を見て、逆に優勢の遥乃は不安な顔を見せていた。




