048
(HARUNO‘S EYES)
光山と冴木は、手を繋いでいた、
この神々のカードゲームを、二人で維持していた。
二人とも神であり、神のゴールデンタイムをずれたこの時間。
ゴールデンタイムに、初めてゲームを行なう。
光山と冴木の間には、大きなサイコロが出てきた。
六面体のサイコロは、二つの名前が書かれていた。
私……遥乃と対戦相手の名前だ。
光山が、大きなサイコロを振って、私『遥乃』の名前が出てきた。
「先攻は、天瀬 遥乃」
「……」話を聞いて、私は頷いていた。
先攻は遥乃だ。
光山と冴木の前にある、右の天秤に砂時計が乗っていた。
真正面に立った二人組の冴木側には、遥乃がいた。
二人組の光山側に、対戦相手の天瀬 雪乃が静かに立っていた。
私よりも髪が短い、双子の妹。顔が、少しキリッとしていた。
「では、開始」光山と冴木の宣言が、ハモってゲームが開始された。
同時に、私の近くにある天秤の皿にのっかった砂時計が反転していた。
「さて、まずは雪乃」
「遥乃、あなたは……本当にあたしと戦うの?」
「ええ」私は、静かに言い放った。
「雪乃、ところであなたは普通な自分をどう思うの?」
「確かに普通で、あたしは平凡よ」
「なれば、特別に憧れると思うの?」
「そう」私は、双子の姉だ。
妹の雪乃の考えを、簡単に当てる自信があった。
私の双子の妹、雪乃はどこか控えめな存在だった。
だけど私がゲームに負けて、幼くなって雪乃は変わった。
甘えん坊だった彼女は、強気で立派な雪乃に変わった。
だけど、絶対に変わらないモノがある。
「あなたは普通で平凡で、つまらなくて退屈」
「酷いことを言うのね、遥乃は」
「だからこそ、特別に抗おうとする。あなたには何も無いのだから」
「そうかもしれない」観念した様子で、私の話を聞いていた。
「ねえ、雪乃」
「なによ?」
「あなたが、負けたら消えるのでしょ。怖くない?」
「遥乃は、あたしに消えて欲しいの?」
私の質問で、雪乃が逆に質問で返してきた。
にやりとした私は、雪乃の考えが読めた。
(あの子の一の位は、多分間違いないと思う。
この質問に、即答できないと言うことは……おそらくあの数字しか選ばないでしょうね)
心の中で、そう思いながら雪乃に質問に答えた。
「そうね、消えてもいいと思うわ。
雪乃は、もう私が生きる上で必要じゃ無い」
「それは、冴木 女天栖の考えなの?それとも遥乃の考え?」
「さあ、どっちでしょう」私ははぐらかした。
「でも、あたしは遥乃と一緒に帰ることだけ考えていないから。
あたしにとって、遥乃が一番大事な存在で、あたしの全てだから」
雪乃は、険しい顔で私の事を見ていた。
その目は穏やかで、母親のような優しさも感じられた。
「なによ、そんな目をしないで」
私は、険しい顔で雪乃を睨む。
それでも、雪乃は穏やかな笑顔を見せていた。
雪乃が穏やかな顔を見せて、私は別の言葉を口にした。
「ねえ、雪乃。私に素直に数字を教えて欲しいけど」
「絶対に教える訳には、いかないわ」
「まあ、そうね。ところで逃げている間、多田君とどんな話をしたの」
私は、雪乃の後ろにいる人物を指さした。
彼の名は、多田 勢場。
私が負けた相手、そして雪乃と一緒に逃げた男子生徒。
垂れた前髪の男子生徒は、気弱な見た目をしていた。
だけど、私は知っていた。
彼は、ゲームが始まると強気に変わった性格の男だ。
カードゲームの天才的な頭脳を持つ多田は、私たちのゲームを見ていた。
「たいしたことを、話していないわ」
「雪乃は、彼氏いないからああいうタイプが好きなのかなって、思ったの」
「違うわ……多分」雪乃は、少し照れて否定した。
多田をじっくりと見ているけど、やはり彼も照れていた。
「なるほど、あなたにとって多田が好きなのね。そうか、そうか」
「違うからっ!」
「でもでも、多田君はいい子よね。
以外とああいう子は、性癖が強いから気をつけてね」
「勝手な推測を言わないでよ!第一、多田君には……」
「冴木さんでしょ。でもフラれたみたいよ」
私は、多田をいじった。
いじられた多田は、照れていて恥ずかしそうな顔を見せた。
私は、ルールを知らない間にボコボコにされたんだ。
これぐらいいじめても、バチは当たらないでしょう。
多田 勢場をからかいながらも私は、対戦相手の雪乃を見ていた。
感情豊かな雪乃だけど、なかなか揺さぶってもボロを出さない。
さすがは神々のカードゲームを、最強の多田 勢場に勝っただけのことはあった。
それでも砂時計の砂が落ちていき……あと僅かなところまできていた。
十の位のヒントがあまり無いけど、それでも答えは出さないといけない。
「まあ、しょうが無いよね。とりあえず、あの数字を言うね」
数秒後、私は口を開いた。
「じゃあ、コールするね。『51』」
私の言葉を聞いた瞬間、雪乃の顔が驚きで目を丸くしていた。
「当たっている?」
「一の位は正解よ」
当たっていれば、絶対に雪乃は言わなければならない。
これは、光山と冴木の神の力だ。カミアラソイのルールで、人間は不正が絶対に出来ない。
神が仕切り、神が裁くゲーム。だからこそ、このゲームは世界一正しいゲームなのだ。
口に出した雪乃の焦りの顔を見て、私は余裕の顔を見せていた。
「ありがと」一の位の正解を言った雪乃に、感謝を伝えていた。




