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体育館は、初めて『カミアラソイ』を見た場所だ。
静かに広い夜の体育館、灯りがついていた。
初めて見たカミアラソイと同じく、あの人物が立っていた。
「光山 照美栖風紀委員」
「さっき以来ですね」
「そうだね」
光山は、制服に腕章が特徴の風紀委員。
彼女がここにいるときは、カミアラソイだけでしか出会ったことのない人物。
普段の彼女が、どんな人間か分からない。
「彼女が、ここに呼んだんだ」
「ここに?どうして?」
「あなたを、どうしても保護しなければならない。
同じ風紀委員の冴木 女天栖が迷惑をかけた」
深々と、光山が頭を下げていた。
丁寧で姿勢のいい謝罪だ。
「あ、いえいえ。気にしなくてもいいですよ。
今回の件は……冴木が勝手にやったのでしょ」
「それでも、冴木の暴走を止める役目が神である照美栖にはある」
光山は、責任を感じて頭を下げていた。
そして、間もなくして頭を上げていた。
「ところで、どうしてあたしをここに招いたの?」
「安全な場所が、ここしかない。
ここは神が、唯一力を発揮できない場所。だからこそ、ココが避難場所になる」
「それで、あたしはどうすればいい?」
「あなたは、双子の姉を救いたいのでしょう」
「勿論よ」あたしの悲願であり、ゲームを始めた当初の目的。
だけど、冴木の暴走のせいでその望みも叶わなくなっていた。
「彼女を戻すには……」
「あら、雪乃。そんなところにいたのね」
体育館の重そうな扉が、ギギギッと重音と共に開いた。
開いた瞬間、二人の人物が姿を見せていた。
一人は風紀委員の腕章をつけた女子生徒。
そしてもう一人は、赤いミディアムヘアーの女子生徒だった。
「遥乃と冴木……」
「やっぱり来ましたね」
「ええ、あなたが手引きをしていたのですね。
失望したよ、テミちん」
光山を見て、冴木は笑って指さした。
隣の遥乃は、無言であたしをじっと見てきた。
ここに来て、神になった遥乃はまだ大人しい。
あたしをじっと見て、静かに立っていた。
「それで、この場所に招いた理由は神の力を封じるだけで……生きられるとでも?
無駄ですよ、遥乃はどんなことがあっても神になります。髪にさせるから。
彼女……天瀬 雪乃は必ず消滅させます。ごめんね」
「神の力を使って?」
「いいえ、ガチで戦ったらこの九州が沈むでしょ。
それに、女天栖はもっと簡単な方法があるじゃない?」
そういいながら、冴木はカードを1枚投げつけた。
そのカードはいくつものカードに分裂して、遥乃の回りを飛び回っていた。
それを見て、光山もカードを1枚取り出した。
「そうだったわね、神が本気で戦わなくてもいいようにこれがある」
光山もあたしに向けて、カードを投げてきた。
「そう、私たちにはカミアラソイがある」
光山は、不敵な顔ではっきりと言い放った。
それと同時に、光山が冴木の手を握っていた。




