044
そのまま、あたしは男子の多田と一緒に乗っているエレベーターが下がっていた。
あたしは、体を起こして呼吸を整えた。
走っていたし、足の震えがまだ止まらない。
病院のエレベーターの中は、結構広い。
二人きりのエレベーター。
少し離れて、あたしは立っていた。
「多田君、どうして?」
「君を追いかけに来た。君ならば、絶対に遥乃の所に行くと思ったから」
「そう、ごめんなさい」
あたしは多田に、素直に謝った。
「大丈夫?」
「あたしは、平気だし……」
でも疲れた顔で、呼吸はまだ乱れて整えていた。
「あれが、神『冴木 女天栖だな」
「ええ、彼女は狂っているわ。あたしを、殺そうとしたし」
「そうか、それは大変だったね」
「全くよ、遥乃はおかしくなっていたし」
少し多田と話をして、安心した。
よかった。多田は普通の人間だ。
「でも、遥乃はおかしくなっていた。
神にするとか、冴木が言っていたし」
「ああ、冴木は初めから、そう考えていたのか」
「何かあるの?あなたの彼女でしょ?」
「形式的なカップルだよ。本質は違う」
多田は、エレベーターを眺めていた。
エレベーターのボタンは、3、2と減っていく。
「冴木は、神を生み出したい様子だった。
自分の手で、神を呼び出すつもりだ。だけどそれは、必ずしも僕で無くてもいい」
「それが、遥乃だったのね。でも遥乃は……」
「君を、どこまでも追いかけてくるはずだ。
神になるには、人間をやめないといけない。
そのために、結びつきの強い人間を消す必要がある。
僕も、その話を冴木からされたよ」
苦笑いをしていた、多田。
ゲームをしているときの自信たっぷりな多田は、そこにはいない。
普通の男子高校生の多田が、そこにはいた。
「あたしは、どこに逃げればいい?」
「学校に向かう」
「学校って?」
「仲津西高校だよ」
多田が言うと、あたしに向けて手を差し出してきた。
あたしはそんな彼の手を握り、立ち上がっていた。




