043
あたしは、恐怖で顔が青ざめていた。
どうして、こうなったのだろう。
静かな病院の廊下を、あたしの足音だけが聞こえていた。
呼吸を乱すあたしは、必死に走っていた。
(でも、どこに逃げればいいのだろう?)
あたしは分からない。闇の中で迷っていた。
目の前は、どこまでも闇の道が続く。
まだ、蛍光灯は灯りがついていた。
だけど、人の気配はない。
あたしの走る音だけが、廊下に響いていた。
あたしの後ろでは、一人の気配を感じられた。
(冴木は、まだあたしを追ってくるのだろうか?)
ゆっくりと歩きながらだけど、剣を持って迫ってきた。
神である冴木が本当だったら、あたしに逃げる場所はない。
(遥乃は、どうしたらあたしのもとに戻ってくるの?)
神々しい光を、放つ遥乃をあたしは見てしまった。
特別な遥乃は、さらに特別な存在になってしまった。
もう、遥乃はあたしと同じ女子高生になることはないのだろうか。
冴木の言うとおり、あたしの双子の姉は神になってしまうのだから。
走れば、奥のエレベーターに近づく。
だけど、このフロアにはエレベーターは来ていない。
「もう、なんで来ないのよ!」焦るあたし。
「ここで死ねばいいのよ、簡単な話」
いつの間にか冴木は、あたしの背後まで距離を詰めていた。
剣を持って、堂々と歩きながら不敵に笑っていた。
「どうしても、あなたはあたしを殺したいの?」
「遥乃が神になるために、あなたがどうしても邪魔だから。
遥乃は、本当に素晴らしい神になるわよ。
彼女と口づけをして、あたしは確信したから」
冴木は、堂々とした顔を見せていた。
待っているエレベーターは、まだ四階まで来ない。
苛立ちと、焦りが背中から迫ってきた。
冴木は静かな殺気を放ち、あたしを殺そうとしていた。
(どうしよう、あたしは……)
足の震えが、止まらない。
冴木が近づく中、あたしは呼吸を乱していた。
(こんなところで、死ぬわけにはいかない。
こんな変なところで終わることは、絶対に出来ない)
焦りと震えがある中、チンとエレベーターの到着音が聞こえた。
エレベーターが開いた瞬間、あたしは飛び込むように乗り込んだ。
それでも、剣を持った冴木が静かに走って距離を詰めてきた。
剣を突き立ててきた冴木は、あたしに向かって突き刺そうとした。
だけど、その剣はエレベーターの開いたドア……ではなく見えない壁に阻まれた。
「ちっ、邪魔をするな」
よく見ると、エレベーターには一人の人間が立っていた。
その人物は、短い髪の男子生徒。冴木の彼氏……だった人だ。
「あなた、裏切ったの?」
「さあな、お前も俺を見捨てただろ」
そこに立っていたのは、多田 勢場だ。
大人しそうな男子生徒は、そのままエレベーターのドアを閉めた。
冴木は突入をしようとしたけど、剣はエレベーターのドアに阻まれた。




