042
冴木も光山も、風紀委員は不思議な存在だ。
彼女たちは、自分を神と勝手に称していた。
この世界に、神なんか存在しない。あたしは、そう思って生きてきた。
だけど、彼女たちは不思議な力を使っていろんな事をしていた。
突然現れたり、カードが勝手に動いたり……様々な事が起っていた。
だから、最近はいろんな事が起っても気にしなかった。
手品より、神という言葉がそもそも当てはまるような気がしてきた。
そんな神と名乗る冴木は、あたしに言い放った。
「天瀬 遥乃を神にする」と。あまりにも一方的に。
そんなこと、させてなるものか。
あたしは、いても立ってもいられず夜のバスに飛び乗った。
そして、あたしは心配な顔で遥乃に会いに病院に来ていた。
あたしは、一人でこの病院に着てきた。
夜のこの時間に、遥乃に会いに行くのは初めて。
当たり前の話だが、本来は夜はお見舞いが出来ない。
だけど、病院には素直には入れたし、受付にも人がいない。
そして、あたしは遥乃いる四階のフロアに到達したとき……空気が変わった。
(なに、この雰囲気は)
夜の病院は、とても暗い。
灯りが消えた病院の廊下を、走って遥乃の個室に辿り着いた。
「遥乃っ!」あたしは叫ぶ。
あたしの目の前では、神々しい光を放つ遥乃がベッドの上に立っていた。
その姿は、子供っぽい姿ではない。
女子高生の姿の遥乃だけど、様子が違っていた。
「遥乃?」
「遅かったわね、雪乃。ああゲームしていたんだ」
「ええ、そうよ。その様子だと……」
「戻ったわ。だけど手遅れね」
「何が手遅れなの?」
あたしは、おそるおそる聞いていた。
神々しい光を放った遥乃は、あたしを見下していた。
「全てが、手遅れ」
光が強くなって、遥乃は浮かび上がった。
そして、右手を広げてあたしに向けていた。
「私は神になる。この世界を変えるために、この腐った世界を変えるために」
遥乃はそう言いながら、あたしに強い光りを放っていた。
「ちょっと、遥乃っ!」
「そのために、まずは遥乃の枷である一人の人間を消し去らないとね」
そんなあたしの背後から、声が聞こえた。
そこに姿を見せたのは、冴木だ。
相変わらずうさ耳カチューシャに、茶色の髪。
制服姿の冴木は、ゆっくりとこの病室にやってきていた。
「冴木……あんた、どうやって……」
「わかるでしょ。女天栖は正真正銘本当に神なんだって」
堂々と冴木が、個室に入ってきた。
腕を組んで、怪しく微笑みながら。
「あなた、遥乃に何をしたの?」
「だから遥乃を、神にした。それだけよ。
天瀬 遥乃は……多田 勢場以上に神にふさわしい存在だった。
それだけよ、だから消えなさい」
冴木はあたしに、歩いて近づいた。
同時に、どこからともなく一本の剣が出てきた。
出てきた剣を右手に握った冴木は、そのままあたしの腹を突き刺そうとした。
突き刺そうとしたけど、あたしは紙一重でかわした。
僅かに遅れたら、あたしはあの剣で貫かれていただろう。
「あっ!」恐怖で、あたしの顔が青ざめた。
だけど右手に剣を握り、剣を構える冴木。
「外したの、私?」
冴木は、不敵な笑みを浮かべながら剣を握っていた。
あたしに対して、はっきりと殺気を放ちながら。
だからこそ、あたしは恐怖を振り払って走った。
冴木の入ってきたドアが、開いていた。あたしは、そこに向かって走り出していた。
(ダメだ、ここは逃げよう)
恐怖を感じながら、あたしは病室を抜け出して走り出していた。




