040
多田のカードは三枚目に、『恐れ7』のカードを選んできた。
カードの質が、3枚目で明らかに劣っていた。
喜んだあたしは、すぐに冷静になった。
(残り2枚のカード……果たしてどんなカードを持っているのだろうか)
多田は、さっき言っていた。「ここで決める」と。
だけど、カードの数字が『恐れ7』。それにしてはカードが弱い。
つまり、ここで勝負に来るのは嘘だ。
あたしは、多田の言葉を分析していた。
だけど、この勝利ははっきり言ってとても大きかった。
『怒り7』は、あたしが持っている最弱カード。
一番弱いこのカードで勝てたことは、戦略的にかなり有利になった。
まあ……多田が10の数値のカードを持っていたらどうしようも無い。
(次のカードを、慎重に選ぼう。残りは2枚だし)
だけど、あたしが考える間もなく多田はカードを置いた。
今回は、かなり早くカードを置いてきた。
ここで選んだカード、選ばれなかったカードは自然と5枚目のカードになるのだ。
つまり、ココが最後の選択になるのだ。
(どっちを選ぶか?)
カードの手札は『喜び8』『激怒9』の2枚。
多田は相変わらず、冷静な顔でカードを置いてきた。
表情もほとんど変わらないし、さっきの嘘のセリフがあった。
さっきの戦いで、あたしはあえてエースを使わなかった。
この戦いで、多田の計算に僅かなズレがあるのかもしれない。
少し悩んだあたしは、1枚のカードを選んだ。
「では、カードの変更はないか?」
テミスの問いかけに、あたしも多田も変更しない。
そして、カードがオープンされた。
あたしが出したカードは、『喜び8』。
対する多田の出したカードは……『悲しみ7』だった。
(『悲しみ7』対応するカードだ)
カードの強さは7、だけど対をなすカード。それでも数字が上回ったあたし。
「8対7で勝者天瀬 雪乃。2ポイント目」
光山は、あたしの2ポイント目を宣告していた。
これで、同点だ。
あたしの手元には、最後の1枚のカード。
多田にも手元には、1枚のカード。カードを選ぶことは、これ以上出来ない。
「では最後のカードを、セットしてくれ」
テミスの指示通り、あたしと多田はカードをセットした。
セットしながら、多田は口を開いた。
「そうか、そういうことか……君も特別だったのか。天瀬 雪乃」
「何よ、フルネームで呼ばないで」
「三戦目……君は、エースを出さなかった。
僕は、ずっと君がエースを出すモノだと思っていた。
でも、あそこは君がエースを出してこなかった。
一番弱いカードで、あえて僕に挑んできた」
多田は、あたしの考えを見抜いていた。
そう、エース……『激怒9』は、最後まで残していた。
「僕は、エースを使わせなければいけなかったんだ。君に」
「何を言っているの?」
「見れば分かる」多田は、達観した顔であたしに言っていた。
「最後のカードを、オープンする」
光山が宣言した瞬間、2枚のカードが表になった。
あたしの目の前には『激怒9』のカード。
多田のカードは、『恍惚9』の黄色いカードが出ていた。




