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あたしの手元には、5枚のカードがあった。
このゲームは、感情の強さがカードの強さ……数字として表現されていた。
普段の多田を、あたしは学校でよく見ていた。
クラスメイトだし、席は一番前に多田が座っているし、嫌でも目に入ってしまう。
遥乃との戦いの後に、彼の事が気になって仕方が無い。
だけど2年D組の中では大人しく、余り目立たない男子生徒だ。
だけど、カミアラソイでは絶対王者。
カードゲームの天才で、あたしの知っている人を何人も倒していた。
同じクラスでありつつ、あたしと全く接点のない男子生徒。
そんな彼と、神々のカードゲームという同じゲームをしていた。
そして、敵としてあたしの目の前に堂々と彼が立っていた。
カードを広げて、最初の1枚を選んでいた。
(さて、何を選ぼうか?)
5枚のカードを、あたしは眺めた。
多田にも、5枚のカードが持っていた。
だけど、牛王はある情報を言っていた。
(ブルチックゲームは、多田にとってそれほど有利なゲームじゃない。
このゲームなら、君にも勝機があるかもしれない。
だけど……彼の戦術は天才的だ)
直接戦った牛王が、多田 勢場という男を分析していた。
昼間の生徒会で聞いた言葉を、あたしは真剣に受け入れた。
(確かに多田のリアクションは、大袈裟ではない。
クラスの中でも、とても大人しい部類だ)
つまり、感情値は強くはない。
だけど、多田が天才と言われるのは読みの鋭さだろう。
あたしは、そう推測していた。
(最初に、何を選ぶのだろうか)
多田が持っている手札は、勿論分からない。
カードの強さだって、フェアでは無い。本人の感情が大きく影響するからだ。
(カードの強さなら、多田には負けない。彼よりも感情はあなたが遥かに豊だから……)
賀木も、あたしの事を信じてくれた。
カードの絶対的強さを信じて、あたしは1枚のカードを選んだ。
伏せた瞬間、やはりカードが一気に大きくなった。
最初のカードは、あたしは既に決めていた。
(このカードを、まずは選ぶ)
伏せた1枚のカード。
それは『悲観8』のカードだ。最強でも無ければ、最弱でも無い。
平均値のカードで、相手の出方を見る選択をしてきた。
このカードの最大値は10で、8はかなり高い数値だ。
後は感情による強弱もあるけど、まずは数値の平均的なカードで様子を見ることにした。
(多田君は、どんな戦術で来るのだろう)
それを読み解くためにも、最初のカードは大事だ。
目の前の多田は、少し考えて悩んだ仕草を見せた。
「考えるのが、君は早いね」多田が喋ってきた。
「最初のターンだしね」
「いろいろと僕の対策を、君は考えてきたようだね」
「ええ。あなたの戦術は、恐ろしく危険だから」
「僕も君のカードは、強いのじゃないかって思った。
正直照美栖は、僕を負けさせたいのではと思えてきたんだよね。
だから僕がかつて苦戦した『ブルチックゲーム』を、選んだと思っているほどだ。
多分、この初戦を負けたら僕は終わりだと思う」
「あら、いきなり敗北宣言?」
「そうだね、負けたら降伏するかもね」
多田の言葉は、完全なブラフで揺さぶりだろうか。
それとも、彼の本音だろうか。
分からないが、多田も1枚カードを伏せて出してきた。
「カードは出そろったな。
両者、最後の変更はいいか?」
ここで、最後のカード変更が出来る。
最も相手の手札が分からない中で、カードの変更に何の意味があるのだろうか。
光山の言葉に、あたしと多田は首を横に振った。
「ではカードを、オープンする」
そして自動的に開いた大きなカード。
開いた瞬間、あたしは多田のカードを見て目を大きくした。
「『激怒10』……まさか」
私も持っていない10の数値の最強カードを、いきなり多田は出してきた。
私の出した、『悲観8』の数字ではどう足掻いても勝てない。
「ポイント1、多田」
審判光山の声だけが、静かな神の箱の中に響いていた。




