029
多田 勢場と牛王 秀太。
二人の男子生徒は、どんな関係があるのだろうか。
狭い四畳半の美術準備室の中は、五人の生徒が集まっていた。
あたしと、榊原。光山に多田……そして牛王の五人。
「あなたは多田……それとそっちは牛王……」
「ええ、彼は生徒会の牛王ですよね。
しばらく見ないうちに、隠密行動をするようになったね。
でも、君の魂は僕の中にある事を忘れないでよね」
「え?」あたしは、驚いていた。
多田は、高笑いをしながらあたしを見ていた。
「そうだね、君は僕を倒したいんだろ。僕もどうしても、戦ってみたかったんだよ。
姉妹丼なんか、最高じゃないか」
「バカにしないでよ」
「そうよ、戦うのは私だから。多田 勢場」
ここでいきり立ってきたのは、榊原だ。
険しい顔で多田を睨んできた。
「君は、既に階級はノーマルに戻ったのでは?」
「私は……うっ!」スマホを榊原が見て、確認した。
苦々しい顔を見せて、舌打ちをした。
「どうして……私がこんな女に……」
「負けたんだから、君は素直に眠っておく必要があるんじゃない?
そうでしょう、照美栖」
「はい、では……」光山がしゃがんで、大きな天秤の右の皿を指で下げた。
下がった瞬間、榊原の顔が眠そうな顔になった。
十秒もしないうちに、榊原はその場に眠っていた。
「寝た?」
「少しの間、記憶を消しました」
「相変わらず仕事が早いね、照美栖は」
多田が、感心していた。
光山はそのまま、榊原を近くにある机に座らせていた。
さっきまで喚いた榊原は、静かに眠っていた。
「これって……」
「光山 照美栖は神だからな」
「神?また、それ?」あたしは、難しい顔を見せた。
だけどあたしは、この中でさらに気になる人物がいた。
魂が抜けたような、フラフラと歩く牛王。多田のそばに歩いていた。
「牛王は、どうしたの?」
「彼も元々はプレイヤーだった。
だけど昨日、僕のゲームを見に来ていたので久しぶりに操ってみたのだよ。
僕は彼の精神を、こうやって手に入れたからね」
「は?」
「カミアラソイは、神になるためのゲーム。
最高階級『ゴット』になるには、『ノーマル』10人と『プレミアム』を90人倒さないといけない。
負けると、ポイントも減るし。
僕はそう思っていた、だが違ったようだね。君のやり方を見て、感心しているんだよ」
「階級ポイントの剥奪、でしょ」
「大方、牛王が指示を出したのだろう。
まあ、僕は今まで99人をバカ正直に倒してきたけどね。
そして現在は、99ポイントまでたまった。
君は、烏嶽と……そこの榊原から『望み』でポイントを奪っていたのだろう」
多田の言葉に、あたしは頷いた。
「だから、今度は僕が君のポイントを奪うよ。
特別な天瀬 遥乃と、妹雪乃を倒せば僕は神になる。姉妹丼ってやつかな?」
「下品な言い方ね。それ、やめて」
クラスにいる多田の喋り方と違う。普段は大人しく、目立たないクラスメイト。
それとも多田の本性は、こちらが本当なのだろうか。
「さて、次の戦いは天瀬 雪乃と多田 勢場でいいのか?」
「ああ、構わないよ」
「ええ」あたしも多田も、同意した。
ついに戦える、あたしの姉を倒した多田と。
同じクラスメイトで、遠い存在だった多田と。
このカミアラソイで、ようやく戦うところまで来ていた。
「では、最初にこのカードを渡そう」
無感情な風紀委員光山が、天秤に触れて何かを呟く。
すると、天秤の皿からカードが現れた。
そのカードが、あたしと多田に向けて飛んできていた。
「このカードは?」
「ゲームの日時は四日後。場所は、未定。決まり次第メールを送る。以上」
「以上って……ちょっと」
しかし、あたしが声をかけたときはすでに光山の姿が無かった。
多田もまた、あたしに背を向けていた。
「君と戦えることを、楽しみにしているよ」
怪しく笑いながら、多田は一人でドアを開けて出て行った。
あたしは、魂の抜けた牛王と美術準備室に残されていた。




