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三度目のゲームも、オーバー数字の多いあたしからだ。
毎回先攻を選んでいても、プロテクションカードと違って有利を全く感じない。
それでも今回は最初のカードを引いて、あたしは少しだけ安心した。
(『ハートのエース』だ)
出てきたカードを見て、ようやくあたしはほっとした。
今まで最初のカードが、オーバー確定の絵札だったのでこれで一安心だ。
それでも、ほっとした様子を顔には絶対に出さない。
そう、これは初めてのチャンス。
エースは1、つまりゲーム最強のカードを手にした。
このゲームで、何とか勝負を決めないといけない。
あたしの運は、クズ運には悪い意味で自信があった。
つまり、チャンスはそう多くない。
トレードをしてこないあたしを見て、榊原が口を開いた。
「いいカードを、引いたのかしら?」
「さあ、どうでしょう?」あたしはしらを切っていた。
光山から、榊原もすぐにカードを引いてきた。
「バレバレなのよ」と呟きつつも1枚目のカードを、榊原も確認していた。
榊原も、最初はトレードをコールしてこない。
問題は、2枚目のカードだ。
一枚でも絵札が入れば、このゲームは速攻オーバーしてしまう。
だけど、トレードで押しつけることも可能だ。
一発オーバーの絵札の処理こそが、このゲームの鍵になる部分だろう。
現在出ている絵札は、4枚。
山札には、後8枚の絵札が残っていた。
この絵札を引かないようにするしか無いが、こればかりは運だ。
それに、絵札以外にも10とか9もかなり危険な数字もあった。
光山から2枚目のカードを、あたしは引いた。
おそるおそる、あたしはカードを見た。
微妙な数字のカード、『ダイヤの8』を引き当てた。
合計は9、まだオーバーしていないが11まで僅か2までしか余裕が無い。
そのカードを見ながら、あたしは考えた。
(さて、トレードをするか?それとも次のカードで勝負をするか?)
いやおそらく榊原は、ここでトレードをしても乗っからないだろう。
それでも、ここでトレードをする意味があるのだろうか。
あたしは、悩んだ末にトレードをコールしなかった。
2枚目も動かないあたしを見て、最後の1枚は榊原に渡る事が確定した。
強制トレードと、強制レシーブだ。
難しそうな顔で、じっと伏せられたカードを見ていた。
彼女も、順調なのかカードを見ながら悩んでいるの仕草を見せた。
榊原も手札の良さが、それだけでも窺えた。
現在は9、まだ可能性は残っているがかなり厳しい。
そんなあたしの状況を知らずに、榊原は無表情でカードを引いた。
カードを引いて、中身を確認した榊原。
カードをじっと見てる榊原に、首を捻っていた。
(さて、ここでトレードでもするのだろうか?)
あたしは彼女の手札が、分からない。だけど榊原は、考えが長くなっていた。
このゲームのターンには、制限時間が無い。
考えて、悩んでいる間は、次のカードを引くことは出来ない。
三分ほど長く悩んでいた榊原は、ようやく口を開いた。
「トレード」。榊原はコールをしてきた。
『トレード』のコールをした瞬間、緊張感が美術準備室の空気を支配していた。




