023
渡されたカードは、『ダイヤのジャック』だった。
(これは……一発バーストね)
頭の中で、考えていた。目の前にはカードを、引かない榊原がいた。
「『トレード』」あたしは、迷うこと無く宣言した。
だけど、目の前の榊原の口元は笑っていた。
「カードは受け取らない、つまり『ストップ』。
そのカード、どう見たってオーバーしているでしょ」
あたしの顔を見て、黒髪の榊原はすぐに否定した。
冷静な目で、はっきりと強く言い放っていた。
そして、あたしの手元に『ダイヤのジャック』が戻ってきた。
このゲームは、相手がカードの引き取りを拒否した場合は手元に残った。
ダイヤのジャック、つまりはこのカード一枚で11。
つまり他のカードを、受け取った瞬間にオーバー。
だけど、ゲームのルールは3枚セットで11を目指すゲーム。
つまりこのゲームのあたしの負けが、あっさり決まってしまった。
(オーバーよね、やっぱり)
あたしは、ため息をつく。だけど、ゲームはまだ終わっていない。
相手の榊原も、静かに一枚目のカードを引いていた。
難しい顔で、カードを見ていた。
そして、榊原は『トレード』を宣告してきた。
表情を一切崩さず、榊原はカードを前に出してきた。
(なぜ、ここで『トレード』をしてくるのだろうか)
榊原も、カードがオーバーしているのだろうか。
普通に考えたら、あたしは『レシーブ』をする気はない。
だけど、あたしは榊原をじっと見ていた。
(レシーブをするか)
あたしは、じっと榊原を見ていた。
腕を組んで、あたしの様子をじっと見ていた。
当然、あたしは相手のカードを見ることはできない。
どのみちあたしはオーバーだ、だからこそ始めは相手の手札を読むことにした。
受け取った瞬間、オーバーが確定するのは間違いない。
特に大事なのは、あたしがレシーブをした後の榊原の顔だ。
「早くして?」
「ええ、決まったわ」
あたしが、榊原の方を見ていた。
「レシーブ」
あたしはコールをした。
既に11の数字を引いているあたし。
何を選んでも、あたしはオーバーが確定していた。
それでも、あたしはあえてこのカードをレシーブした。
必ず、1枚のカードをレシーブしなければいけないのだから。
「はい、あげるわ」
カードがあたしに向かって、渡された。
そして、あたしが受け取ったカードを表にした。
出されたカードはやはり、『ハートのキング』だ。
11+13で24、完全にこれはオーバーだ。
カードが少ない榊原は、再びカードを引き直していた。
あたしは、榊原の顔を見ながらじっと考えていた。
(これって、相手の手が進んだだけじゃないかしら)
あたしは不安の様子で、榊原がカードを引くのを眺めていた。
(さて、今回のゲームであたしは敗北が決まっている。
後は、榊原の手が進まないことだけを祈るしかない)
榊原は、もう1枚カードを引いていた。
これであたしと、榊原のカードは2枚ずつだ。
だけど、最後の1枚をあたしは引こうとした。
「あなたのカードはトレードです。強制トレードで、強制レシーブになります」
光山の一言に、あたしは驚いた顔を見せた。
それと同時に、榊原は高笑いしていた。
「そう、あなたはカードを選ぶことが出来ずに私にトレードをするの。
そうでなければ、いけないのがこのルール」
「そうね、これって」
「そう、あなたはトレードをしなければいけない」
榊原は、はっきりと言い放っていた。




