017
(YUKINO‘S EYES)
初めての神々のカードゲームのゲーム後から二日後、あたしは学校に来ていた。
平日の午前中の学校、教室の中にあたしの姿はあった。
休み時間ともなれば、教室の椅子に座って友達と会話をしていた。
そんな当たり前の日常が、あたしにもあった。
同じ制服を着て、同じような毎日を過ごす。
平凡で、普通で、代わり映えしない世界。それがあたしの世界であり、本当のあたしなのだ。
そして、あたしにも普通に友達はいた。
「ねえねえ、今日の帰り……ドーナツ食べに行かない?」
あたしに声をかけてきたのは、ミディアムカールの茶髪少女。
明るい雰囲気の女子で、茶色のブレザーを着ていた。
ブレザーのアクセサリーは、ネクタイのあたしと違ってリボンの少女。
活発な顔と、崩した笑顔の少女の名前は『野部 両子』。
2年D組の生徒で、出席番号は38。
「この前、行かなかったっけ?」
座っているあたしは、疑問を口にした。
あたしの幼なじみの両子は、あたしよりも少し背が高い女子だ。
食べることが好きな両子だけど、モデル体型なのか痩せた体をしていた。
「新作のドーナツが、おいしそうなのよ。ホラこれ!」
見せてきたのは、スマホのドーナツ屋のアプリだ。
マロン味のドーナツが、確かに旨そうに見えていた。
しかも、今は三時限目の休み時間。
小腹が空いてきたところに、このチラシアプリはまさに飯テロだ。
「そんなの、お昼前に見せないで!」
「えー、おいしそうじゃん。今から、食べに行こ」
「今日は、ちょっと行くところがあるから」
「遥乃さんの所?」
両子がその名前を出すと、顔色が曇っていた。
あたしと幼なじみである両子は、双子の姉である遥乃とも知り合いだ。
二人の共通の知り合いの両子は、とても気にかけてくれた。
「まあね。遥乃のお見舞いも、あたしは行かないといけないし」
「大丈夫、雪乃?」
不安な顔を見せた両子は、あたしの両肩をいきなり掴んできた。
いきなり掴まれたあたしは、照れた顔を見せていた。
「ちょっと、両子っ!」
「なにか、悩んでいることは無い?
雪乃は、遥乃がいなくなってからいろんなモノを抱え込んでいる様子で……私は心配なのよ」
「平気よ」
両子がドーナツ屋に誘ったのも、あたしに気を遣ってのことだろう。
だからこそ、あたしは笑顔を見せていた。
取り繕う笑顔は、それでも両子に見破られてしまう。
「うん、だからありがとうね。両子、今日はやめとくから。
また、今度誘ってよ」
「そっか」それでも、不安そうな顔を見せる両子。
不安そうな両子の頭を、あたしは優しく撫でていた。
「あたしは、今日も元気だから」
笑顔を見せたあたしの視界に、一人の人物が姿を見せた。
それは、避けようにも避けることが出来ない。
眼鏡をかけていて、大人しい男子生徒『多田 勢場』の顔が見えた。
多田はあたしの近くの机に近づいたけど、あたしは感情を殺して彼の動きを追っていた。
クラスメイトにいる多田こそ、あたしの遥乃を倒した相手。
そして、あたしが倒すべき相手が同じクラスにいつもいた。
どうしても、視界に入ってしまうクラスメイト。
だけど、彼とはまだ戦う資格はない。
あたしはその光景を見ていて、常に怒りを押し殺すだけでやっとだ。
どこで精神の感情が張り裂けて、壊れてしまうか分からない。
そんな危機的な緊張感の中に、あたしは引き戻されてしまう。
「ねえ、雪乃?」
「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしていた」
それでも両子の声で、あたしは苦笑いで取り繕っていた。




