016
(TADA‘S EYES)
九州地方の地方都市、ここは農業が盛んな『仲津市』。
それでも、駅前に続く大通りは昼夜を問わずいつも賑わっていた。
昼から夕方に変わる肌寒い秋の時間、学生服のまま歩いていた。
僕の隣には、一人の女子生徒。
傍目から見ると、それは親しい高校生カップルに見えた。
授業中は眼鏡をかけるが、普段はコンタクトレンズだ。
隣では、うさ耳カチューシャで茶髪の女が歩いていた。
茶色のブレザーに、白のミニスカート。
男子生徒の僕と、あまり身長が変わらない大きな女子生徒。
「それで、ゲームは天瀬妹ちゃんが勝ったよ」
「そうか、ご苦労」
僕は、冴木 女天栖の話を、淡々と聞きながら歩いていた。
周りには、いろんな店が見える。
カフェやカメラ屋、さらにはシティホテルも見えた。
「まだ、階級は低いけど……上がってきたら本当に戦うつもりなの?」
「そうだね。彼女が欲しがるモノを、僕は全て持っているから」
「遥乃の頭脳と身体能力」
僕は、天瀬 遥乃に勝利をしたのは四ヶ月ほど前。
彼女は、その後学校に来ていない。
「遥乃元生徒会長は、才能があるか?」
「どうだろう」
「ある程度、君の中では答えが出ているのだろ?わかるよ」
「えへへっ、分かっちゃいますか。流石セイバー」
「勢場だ。伸ばさない」
淡々と僕は、冴木と話をしていた。
僕と彼女は、ワケあってカップルだ。
原因は、冴木と『光山 照美栖』との確執だが、そんなモノはどうでもいい。
「ねえ、セイバー。あそこにホテルあるよ」指さした冴木。
「絶対に行かない。まだ夕方だろ」
「えー、たまにはこういう行為が、彼女的にも……」
「そこまでのラブラブカップルじゃないだろ、僕らは」
「まー、そうだよね」
佐伯を無視して、僕は先を歩く。
少し遅れて、冴木が小走りに近づく。
背中に腕を伸ばして、にこやかな顔を見せていた。
「明日、ゲームでしょ?」
「ああ、カミアラソイに参加した。今度の相手は、師道君だっけ?一年の」
「彼は野球部の生徒ですよね、ゲームの場所は」
「野球部のグラウンド」
「完全アウェーだね」
「ビジターと言うらしい。そういうときは」
『師道 雄平』は、野球部で一年生レギュラーになった男子生徒だ。
明日戦う対戦相手だ。神々のカードゲームで、最近頭角を現してきた男子生徒。
彼の対戦相手は、軒並み運動部の部員。
「おそらく彼が欲しいものは、天瀬 遥乃の運動神経だね」
「女にしておくのは、勿体ない運動神経らしいね。流石は、元生徒会長」
「でも、セイバーはちゃんと使いこなせていないでしょ」
「必要ない、本気出したら部活の勧誘が面倒くさいしね」
「セイバーらしいねぇ」悪戯っぽく笑っていた冴木。
「僕はただ、神になれれば、それでいい」
「ええ、もうすぐだもんね。神々のカードゲームの卒業」
「それより、冴木」
「なーに?」
「最近、アイツにちょっかいを出しに行っているんじゃないか?」
「えー、知らない。何のこと?」
明らかに何かを隠した様子で、しらばっくれた冴木。
偶然見えた通りの時計の時間を見て、僕はあることを思いだした。
「あっ、電車の時間が近いじゃ無いか」
「ねぇ!」
「僕は走るよ、また明日」
制服姿で、スニーカーの僕は走り出した。
ここで、天瀬生徒会長から奪った足の速さが、とても生きてきた。
(16時43分、この電車に間に合うか)
僕の少し前には、仲津の駅が見えていた。
信号が赤から青に変わる刹那、スピードを落とさずに一目散に駅へと走って行った。




