014
烏嶽の顔が、悔しさに滲む。
大きな腕で、体も大きな烏嶽。
体を震わせて、目元が隠れていた。
「勝者……天瀬 雪乃」
テミスが、あたしに勝ち名乗りを上げた。
それを聞いて、烏嶽が迫ってきた。
「ふざけるな、この戦いは俺が勝つはずだ!
なんで乱入されて、俺がここで負けないといけない?
次のターンで、俺がお前の母親『天瀬 市香』をコールすれば俺の勝ちだったのに!」
だけど烏嶽があたしに向かって突進しても、見えない壁で阻まれた。
「無駄です。ゲーム以外で、絶対に危害を加えることは出来ません。
これは、全てルールですから」
「光山、お前っ!」
烏嶽は、赤くなった顔で風紀委員の光山に向かっていく。
怒り狂った大きな烏嶽は、それだけで迫力があった。
だけど、冷静な顔で光山が見ていた。
「あらら、テミちんに絡んでいったんだ。バカなの」
冴木は、口元を抑えて笑っていた。
その烏嶽は、光山の襟元を掴もうと手を伸ばす。
だけど、電撃のようなバチンとした音と電気が烏嶽の手を弾いた。
「いってぇ!」
「審判に触るのも、反則行為です。あなたには、ペナルティーを与えます」
「オマエッ!何のつもりだ?」
「あなたの稼いだ全ポイントは、既に天瀬 雪乃に譲渡しました」
「でも、その審判が他のプレイヤーを助力しただろう」
「えー、女天栖はそこまで助言していないかな」
冴木は、しらばくれた様子で言い放っていた。
冷めた顔の光山は、首を横に振っていた。
「確かに、彼女はあなたのカードの答えをカンニングして伝えたような不正をしてはいません。
今回の助言は、初参加プレイヤーに対する助言として処理されます。
よって、何の問題もありません。
しかし、あなたの暴力は認められるものではありません」
「これは、暴力じゃない。不満を口にしただけだ。
それに審判の裁きが、明らかにおかしいだろ。贔屓だ!」
「照美栖は、贔屓なんかしません。
歴とした審判であると同時に、本物の神です」
「神?ふざけたことを言っているんじゃねえぞ!」
苦々しい顔で、烏嶽は光山を睨む。
これは、演技ではない。はっきりと、怒っているのが感じられた。
「ようやく本気で、怒ったね」
「当たり前だ。大体なんで冴木が、ゲームに邪魔をする?」
「だから言ったでしょ。あたしはねー、彼氏に頼まれたのよ。
黄金ルーキーのユッキーを、助けるようにって」
「だから、彼氏って?ふざけたことを言うなよ!おい、梶原っ!やれ」
烏嶽が叫ぶと、視聴覚室の後ろのドアが開いた。
そこから、写真で見た男にしては少し長い髪の男が入ってきた。
「烏嶽先輩、やるんすか?」
「ああ、こいつらを始末しろ。
こんなゲームの負け方は、到底納得できない」
大柄な烏嶽もまた、立ち上がって光山達を睨んでいた。




