013
冴木は、なぜあたしを助けてくれたのか分からない。
でも、あたし一人では気づかなかった烏嶽の違和感。
それに気づかせてくれたのは、皮肉にも冴木だった。
視聴覚室の入り口で、冴木はにこやかに笑っていた。
(何にせよ、このヒントは大きい。
これで、あたしが最後にする質問は一つ。
この反応で……烏嶽の答え方であたしの読みが確信できるかどうか)
砂時計の砂が、ドンドン無くなっていくのが見えた。
それでも、あたしは口を開いた。
「あなたは、どうしてあたしの父を最初に選択したの?」
あたしの質問が、静かな視聴覚室に響く。
はっきりと、烏嶽にもこの質問は聞こえた。
その瞬間、烏嶽は一瞬目が泳いだ。
「それは……お前の家が金持ちだからだ」
「そう」それは烏嶽の仮面が、剥がれた瞬間だった。
言葉もたどたどしい、烏嶽の本当の顔だ。
今まで、一度も答えに近づく質問が出来なかった。
だけど、ここで初めてあたしは彼の答えに近づく質問が出来た。
(確信した。答えは……)
砂時計の砂が、間もなく落ちていく。
そして、あたしは口に出した。
「あなたが選んだのは『烏嶽 啓剛』です!」
あたしのコールを聞いた瞬間、苦々しい顔を見せていた。
「ちが……」口で否定しようとした。
だけど、口が不確定な力でねじ曲がって烏嶽の口からこう聞こえた。
「正解です」
烏嶽は、負けを認める言葉をあたしの前で話した。
話した瞬間、右手は力強く握りしめていた。




