悪夢の幕開け→尚、見ている当人にとっての悪夢とは限らない
今年最初の更新です。
新年明けましておめでとうございます。
本年度も宜しくお願いします。
読者者君、新年明けましてお目出度う!
本年も『デッドリヴェンジ!』『追放Vtuber』他
害獣会とその傘下コンテンツを宜しくお願い申し上げるぜ!
(まあこの箇所書き始めたのは大晦日だし、
劇中の時間軸も年明けまで一ヶ月以上あるがな……)
さて今更だが改めて自己紹介をさせて頂こう。
俺の名前は、北川ナガレ。
【ぐぶぇ、がっ……!
きっ、さまああ゛っ!
愛する妻を新居ごと爆破する夫がいるかァァァッ!】
『誰が愛する妻だこのスカポンタイクーンがァ〜
騙すつもりならもっと解像度上げてこい間抜けェ……』
明晰夢ん中で敵と遭遇するっつー前代未聞の状況になんとか順応する、蟹座の死越者だ。
さて、時は遡ること前回終盤。
青佐のクソが仕組んだ術のせいで暴走した俺は、
散々暴れ回った挙げ句雷に打たれたような衝撃と共に意識を失った。
『なんだよ作者の野郎またこの展開かよ何度目だよ』と内心愚痴りながら目を覚ますと、そこは見覚えがあるようなないようなよくわからん場所だった。
部屋の内装は初めて見るが、部屋の中のもんの内三分の一程は間違いなく俺の私物で……
床を出て部屋の中を進む度に察した所に依ると、
どうやらそこは地元の都心一等地に立つ新築戸建ての一軒家で、
俺は若くして起業し瞬く間に世界長者番付へ名を連ねる迄に成り上がった
新進気鋭の敏腕経営者ってことになってるらしく……
飾られた写真には、知らねぇ女とガキ二人……
その時点でもう、俺は気付いちまったんだ。
(……明晰夢、かあ)
そう。当事者にとって余りにも好都合過ぎる、絵に描いたような"理想的な暮らし"の光景……
生前の俺ならあっさり現実と信じ込んでいただろうそれを、
然し狂った化け物の俺は即座に虚構だと見破れた。
死越者の持つ耐性のお陰か、
心のない死人だからかは分からんが……
なんにせよこんなマヤカシに囚われる理由なんてありゃしねぇ。
「あら〜♥ おはよう、あなたっ♥
ゴハンできてるわよっ♥」
「……」
ふらりと立ち入った炊事場で何やら洒落た料理を作る、
裸エプロンのアホ女……
ネット広告でよく見る品のねぇAI生成写真めいた外観のそいつを
妻などと認識できるワケもなく。
(――――"爆破"してェなァ……
このクソみてぇな空間の全域をよォ―――)
挙げ句、憎しみの余り無意識に『こんな空間なんて纏めて吹き飛ばしたい』などと物騒かつ幼稚極まりない考えを拗らせた挙げ句……
(『週刊ストーリーランド』の通販回に出て来た自爆ボタンでもありゃいいけどなァ)
あれがありゃ、こんな豪邸一件吹き飛ばすのさえ造作もねぇだろうに……
なんて、到底現実に起こり得ねえ出来事に期待しだす始末。
すぐさま『そんなものはないし、自爆で問題が解決する確証もない』って結論に至り、
取り敢えず目の前の、俺を誘惑しにかかってる
クソウザってぇ下品な裸エプロンをどうするか考えようとした……
その時だった。
「……?」
ふと空いていた左手に、箱型の何かがすっぽり収まるのを感じた。
平たい箱型で、軽くて硬いそれは何だと見てみれば……
(……マジかよ)
それはまさしく俺の思い浮かべたあの"自爆ボタン"だったんだ。
(……まさか、俺の夢ん中だから結構色々俺の思い通りに色々できるとか?)
なんかよくわからんし、あんま調子こくのも良くはなさそうだが……
とりあえずこの自爆ボタンを力一杯押すぐらいはしてもバチ当たらんだろう。
(画面前じゃ元旦早々空気読まねぇクソプレートの所為で地震起きたっつーし、
縁起悪い出来事吹き飛ばしていい一年になるように、的な願いも込めて
一発派手にやっちまうかァ……!)
願わくばこの自爆でもって、
全宇宙の不幸や理不尽が吹き飛んでくれ、
そしてこの話の展開が俺にとって好都合に進んでくれと
そんな願望を込めて左手の装置を殴り付ける。
「ねぇ~♥あなたぁ~♥
こっちで私と一緒に夫婦の時間を――――
「うらァッ!」
全力を込めた拳は、防護カバーを粉砕しボタンに到達する。
肉体が生前に戻ってたんで上手くいくか不安だったが、どうやら杞憂だっらしい。
光るランプ、響く電子音……本編で見た通りだ。
あとは"全て可能な限り自分に都合よくなれ"と念じながら爆発を待つばかり。
「――――偽りの悪夢よ、
虚無に帰しやがれェッ!』
「えっ!? ちょ、待っ――!」
思わず飛び出た叫びを合図に、
装置は爆発を引き起こし……
「――――そんな、バカなあああああああっ!?】
狙い通り、何もかも俺にとって好都合な形で全てを吹き飛ばしたんだ。
〈=皿= 〉<で、そのタイミングでもって
謎の力で生前にされてた俺も
目出度く元の死越者に戻れたってワケだ。
……原理? 知らねぇ。
『……見事な爆発っぷりだ。
ディズニー百周年の失敗駄作程じゃねぇが、
あんなド派手に爆発して万事解決ってんじゃ読者ウケも悪そうだしなァ』
辺り一面焼け野原と化した、明晰夢の世界。
但し俺自身は、死越者の姿に戻りこそすれ全くの無傷……
『本当に俺の思ったようになったなァ』
地味に制約があって思う通りにいかない、
なんてことがなくて良かったぜ。
(さて、となるとあとはどう始末をつけるかだが……
正直このまま脱出して終わりってのもつまんねぇし……
ここいらで思わせぶりに下手人が登場、とかしてくれりゃいいんだが……)
流石にそこまでは夢見すぎかなー、とか思っていると……
【ぐ、っぅうっ……!】
思わせぶりに下手人らしき声がしたんだ。
見れば十時の方向六、七メートル先に例の下品な女が倒れ伏していた。
衣類はボロボロで全身煤塗れ……
ギャグ漫画によくいる火事とか爆発事故の被害者みてーな感じと言えば伝わるかな。
【なぜ、だ……!
こんな、ハズではっっ……!】
続けざまに、そいつの身体はドロドロに溶け始め……
奴の"真の姿"が露わになる。
【私は、完璧だ……
失敗など、有り得ないっっ……!
なのに、なぜだぁ……!?】
ゴムめいた質感で、匂いのキツい洗剤みてぇな色の皮膚……
頭髪の代わりに頭から何本も生える極太の触手……
何の動物とも言い難い変な形をした手足……
総じて如何にも宇宙人とか地球外生命体然としたそいつこそ、
俺をこの"ふざけた明晰夢の世界"へ閉じ込めた張本人だったんだ。
【この私、ルーザイマ星人ザーリイの支配から、
こうもたやすく抜け出すなど……!】
そいつの名はザーリイ。
惑星間渡航をこなす程の技術力を誇る惑星ルーザイマ出身の異星生物だ。
次回、予期せぬ展開により最悪の事態に!




