雪原の激闘!→そこに隠された真相とは……
約一週間ぶりの更新かよ遅ぇよバカヤロー!
……しょうがねぇだろ師走外伝とか追放Vtuberとかあったんだから!
俺の名前は、北川ナガレ。
『上等だ、テメーは徹底的に痛め付け苦しめ乍ら地獄に送ったらァ!』
「ひいいいいっ!?」
≪ディップァァァァ!≫
恐らく俺を騙してハメようと企んでやがると思しき陰陽師風のガキと、
序でにその手下らしい空飛ぶ巨大ディプロカウルスと、それから青佐をブチ殺すべく本気を出す蟹座の死越者だ。
『掌握派のゴミがぁ!
てめえが何者か知らねえが、
安い芝居で俺を騙そうとしたばかりか、
そのために「白金の不死者団」のガルゴノーツ団長さえ侮辱しゃあがってゴラァ!
タダじゃ済まさねえぞォァ!』
何を言ってんだかサッパリな読者諸氏も居られようが……
まあ要するに、だ。
あの掌握派と思しき和装の小僧、
発言の内容から察するに俺を騙して掌握派に引き入れるべく
『白金の不死者団』のアリオン・ガルゴノーツ団長、
ひいてはその上司にあたる魔界二十三閥族第零位『ボーダーフールズ』の皆様迄をも黒幕に仕立て上げようとしているものと思われた。
即ちこの俺、北川ナガレが今迄に過ごして来た
"過酷乍らも充実した日々"の全てはボーダーフールズによって仕組まれた仮初めのもんで、
そしてそもそも俺自身とて悪の組織ボーダーフールズの罠にかかり洗脳されていて、
奴らの陰謀に加担させられそうになっているのだから、
その洗脳から脱しなきゃならねぇ。
……というのが、
どうやらあの小僧の言い分なようなんだが……
『その程度の安っぽい策に引っ掛かるワケねーだろボケがァァァ!』
「なんで!? 待って!? 何が!? 何の話!?
なんでオレ掌握派ってことになってるの!?
てか騙そうとしたとか団長を侮辱したとか何の話!?
全然身に覚えがないんだけどぉぉぉぉ!」
≪ディーップ! ディプロッ、ディップロォー!≫
「はあ!? いやいや、オレちゃんと伝えたじゃん!?
誤解を招くような言い方なんてしてないって!」
『なァにをワケのわからねぇことをゴチャゴチャ話してやがらァァァァ!?』
――『カアッ!』『シャッ!』
「ぎゃあああ!? なんか飛んできたぁぁ!?」
≪ディプロォ! ディプディプディ、ディップロォォォ!≫
「はぁ!? 毒ぅ!? しかも石化と肉溶かすヤツって
メチャクチャヤバいじゃん!」
『逃げんな小僧ォ! と序でに両生類も!』
≪ディップ、プロァァァアアア!?≫
なんかディプロカウルスが謎にキレてるようだがともかく、俺は尚も奴らを追い続ける。
状況としちゃ青佐を先に始末しとくべきだが、
といってこいつらを放置したままじゃどの道妨害されるから結局は同じことだ。
≪ディプ! ディプディディプロ!≫
「ああ、そうだな!
話が通じないんなら、話が通じるように実力を示す!
来いよ北川さん!
ハサミも毒ヘビも捨てて掛かってこい!」
ほう! 丸太どころか米袋も持てねぇヒョロガリチビが一丁前に州知事ネタとはやるじゃねぇか。
(俺にあの台詞を吐かせて死亡フラグをおっ立てるつもりだろうが……そうは行くかァ!)
とは言え普通に攻撃したんじゃ面白くねぇってコトで、
俺は言われるまま蟹爪と身体から生えた毒蛇を節足に変化させる。
『誰がぁ……誰がテメェなんかっ……!』
極力相手にバレないよう、身体に方向自在の高出力ジェットエンジン"爆炎反社"を装着……
『テメェなんか怖かねェッ!』
啖呵を切った俺は全部の節足にぐっ……と力を込め、
圧縮した筋肉を解き放つが如く踏み込み、助走付きで跳躍……
『ィ野郎ォぶっ殺してやらァァァアアア!!』
空中で件の台詞を叫んだ俺は、節足を円錐状に束ねながら全身を回転させる。
その姿は宛ら"キチン質の生きたドリル"……
助走のお陰でそのままでも幾らかスピードは出るが、
飛距離と威力が心配なんで念のため"爆炎反社"を起動しての加速を忘れねぇ。
『ゥアアアアアアァァァァァアアアアア!』
『うわうわうわうわ! ヤバヤバヤバヤバ!』
≪ディプロッ! ディプロロプロルァッッ!≫
『あっ! そ、そうだ! け、結界っ!
てやぁぁぁっ!
樋口流陰陽術漆拾捌ノ型・春日部結界!』
『ヅェアアアアアアアアアアアア!』
「ぐううっ!?」
小僧は何やら障壁魔術のようなもんを発動、
ジェット戦闘機の体当たり並みの破壊力を誇る俺の飛び蹴りを受け止めたが……
「うわあああああ!?」
≪ディプロァァァッ!?≫
『ヅグェアガッ!?』
耐久力に限界があったんだろう、
障壁は粉々に砕け散りその際に生じたエネルギーが小僧と俺の双方を吹き飛ばす(勿論ディプロカウルスもな)。
「そ、その技は流石に卑怯じゃない……?」
≪ディップロァ……≫
『戦場に卑怯もクソもあるか間抜けェ……
そもそも俺ァテメーに言われるがまま、蟹爪と毒蛇制限して蟹の節足と武器で勝負したんじゃねぇか。
寧ろ寧ろ正々堂々な戦いをした戦士だと褒められて然るべきだろうがよ……!』
「っ……そういうの、屁理屈って言わない……?」
『屁理屈で何が悪い。
こちとら職歴一年未満の新人とは言え通り魔やってんだ……
喧嘩売ったんなら歯ァ食い縛って命張れやガキぃ!』
強烈に啖呵を切る俺はその時、自分は何も間違っちゃいねぇと思っていた。
――――だが……
「大変なのだー! 一大事の緊急事態なのだー!」
「おお、これはこれは我が同胞ズンダー44031号。
そんなに慌てて一体どうしたのだ?」
俺たちが雪原でドンパチやり合ってる最中にも、
外野では大騒ぎになりつつあったんだ。
「我が同胞4646号! 丁度いい所に!
緊急事態なのだ!
とても拙い状況になってしまったのだ!
これは最早危機的状況と言う他ないのだぁぁぁ!」
「落ち着け同胞よ。まずはずんだ餅でも食べて落ち着くのだ」
「心遣い感謝するのだ……」
「それで、一体どうしたのだ? 緊急事態とは?
佻尾市近辺の屍人はほぼ根絶され、
根源たる掌握派の豚獣人も蟹座の死越者北川ナガレ殿の手に掛かり万事解決。
加えて寒冷化に関しても
実行犯の青佐江雪が新潟事業所の白雪カンリュウ所長に討伐されほぼ解決。
屍人の残骸処理と除雪作業も完了した今、
残す所は青佐の術にかかってしまわれた白雪所長と北川殿の救助のみ」
「如何にもそうなのだ……。
そしてお二方の救助には必然、樋口流陰陽術の使い手が必須ということで、
京都事業所の樋口伸容所長見習いが使われたのだ。
けど……」
「けど、なんなのだ?
確かに伸容所長見習いは何かとポンコツで数字に弱くて忘れ物が多くて
電話対応や書類仕事もからきしな上私生活もグダグダだけど、
こと陰陽術の腕前に関しては当会トップクラスの実力者であり、
術を抜きにしても現場に出た時の働きぶりは目を見張るものがあるのだ。
特に洗脳や魅了、幻術や変異なんかの
精神や体組織へ作用する異能や術への耐性と対処能力は先代を凌ぎ、
歴代の樋口家でも五指に入るほど。
更には所長見習いの欠点を完璧にカバーしうる式神のディプ朗所長見習い補佐もいる以上、
此度の案件など所長見習いにしてみればお茶ノ子祭々木っ端の火なのだ。
まして苦戦なんてするわけないのだ」
「ウイ。それは紛れもない事実なのだが……
なんというか、今現在の樋口所長見習い、
何故か北川殿から敵と勘違いされて絶賛交戦中なのだ……」
「――――えぇー……?」
44031号様の発言はまさに予想外そのもので、
それを耳にした4649号様が絶句されたのは言うまでもねぇ。
次回、ナガレは青佐江雪の最悪な置き土産から抜け出すことはできるのか!?




