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デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者諸共殺されて腹立った俺は、最強ゾンビになって美人悪役令嬢とかイケメン人狼なんか連れて復讐序でに無双しようと思います-  作者: 蠱毒成長中
CASE4 "毒蛇蟹"の正体と新たなる戦い

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黒幕との接触→事態は予想外の展開へ……?

大雪と屍人に蝕まれる佻尾市での激闘!

後をズンダー4649号に託したナガレは遂に黒幕を追い詰めるが、

彼を待ち受けていたのは誰もが予想だにし得ない衝撃の展開で……?

 俺の名前は、北川ナガレ。



『ヅァリッダブライッ――バアアアアアアッ!?』

『グオルドジ――グブウウウウウウッ!?』

『ヴァグネッ――ヅダギオォオッ!?』

『ズッバアアア――ギリイイイイイグウッ!?』

『ドグガギッ!? ――デギゴオオオオオッ!?』



「まず僕らズンダー隊がここに来た経緯なんですけど、

 まぁ要するに至ってシンプル、

 『明らかに不自然なくらい雪降ってる上に屍人コープスまで出たからどうにかしてこい』って

 上からの要請があったからなんスね」


 迫り来る屍人コープスどもを撃退しつつ、

 老舗組織『極東四七守護霊会』所属のクローン兵、ズンダー4649号様の話に耳を傾ける蟹座の死越者エクシーデッドだ。


『明らかに不自然なくらい……と仰有いますと、

 本来佻尾ってこんな豪雪地帯じゃないんですか?』

「ウイッ。勿論豪雪地帯は豪雪地帯なんスけど、

 今の時期にここまで降るのは流石に異常なんスね。

 なので当会としては、佻尾市街での屍人コープスの異常発生のみならず

 この異様な寒冷化と降雪も悪意ある何者かの介入を疑ってますなのだ」


 成る程確かに今は暦の上じゃ秋の終わり頃……

 地域にもよるだろうがそれでもここまで本格的に、

 雪像作りさえ躊躇われる程雪が降るとは考え難かろう。


「そういうわけで出動が決まったんスけど、

 直前になって『月夜議事会』幹部のマインデッド様から『佻尾市には蟹座の死越者が向かっているので現地で合流の後援護してほしい』と頼まれましたのだ」

『成る程それで態々助けに来て下さったと』

「元より当会は我が国(わーくに)とそこに暮らす民を助け護るのが使命、

 そこには死越者あなたも当然含まれておりますのだ」

『そいつぁ何とも有り難い話で……』



『ヴウヴギイイイイイ!』

『ヴィナヅマアアアア!』

『ザッザナミイイイイ!』

『ブージヴォオオオオ!』

『ヴラッドゥヴォオオ!』


 感動的な雰囲気をぶち壊すように現れる変異体ども……

 どうやら奴らは本当に敵をキレさすのが好きらしい。


『しかも五体揃ってマシンフューザーかよ……!』


 マシンフューザー……

 変異過程で何かしらの機械類を取り込み、

 身体の一部として駆動させる能力を獲得した"ロボゾンビ"とでも言うべき変異体だ。

 個体差は激しいが概ね基礎能力ノ高い武闘派が多く、

 自警団でも『遭遇時、装備や人員が不十分な場合は逃げるべし』と定められる程の難敵だ。


 ともすりゃ少なくとも俺と4649号様、理想を言えばもう数人ほど増援が欲しい所であるわけだが……

 ここに来て4649号様は思い掛けない申し出をされてきたんだ。


「北川殿、ここは僕らズンダー隊がなんとかするんで、

 あなたは黒幕を探し出して成敗して下さいなのだ」

『……大丈夫ですか? 奴ら揃って重武装ですし、

 なんか大砲とか機銃とか生やしてますけど』


 俺は心の底から4649号様の身を案じていた。

 だが対する小さな勇者は、あくまで余裕綽々ってな口ぶりで言ってのける。


「フッフッフ、これだから外野は困る……。

 僕らズンダー隊は当会が魔界二十三閥族入りする以前から各時代の戦場を駆け抜けた、

 言わば百戦錬磨のエリート部隊。


 記憶移送を絡めたクローニングによる実質的な不老不死に加え、

 遺伝子操作等々の強化改造を施された僕らが、

 こんな矜持も信念もない死肉の傀儡風情に遅れを取ろう筈もないんスね!」

『4649号様……!』

「加えて今回此方の現場には僕らズンダー隊の指揮官として、

 武闘派幹部の凍死霊フローズン・ファントム

 白雪カンリュウ様に同伴して頂いておりますのだ」


 凍死霊フローズン・ファントムってのは凍死者の霊魂が変じたアンデッド系の魔物……所謂雪女みてーな種族だな。

 変異の経緯が経緯なもんで低温に強く、冷気や氷雪を操る魔術・神通力に秀でていたり、その手の異能を持つ傾向にあるぞ。


「"雹雪忍后ひょうせつにんごう"の異名を持つ彼女は当会でも首位に食込む戦闘の達人!

 吸熱系魔術の達人であり特に寒冷地での戦闘で真価を発揮なさいます故、此度の現場に於いてはまさに一騎当千の猛者に御座いますのだ!

 よってどうか、ここは僕らに任せてあなたは早く黒幕を探り当てて下さいなのだ!

 あとこれが白雪カンリュウ様の顔写真ですのだ!

 もしお会いしたら宜しく言っておいて下さいなのだ!」

『わかりました。ではお言葉に甘えて頂きまして……どうか、ご武運を!』

「そちらこそお気を付けてなのだ!」



 てな感じでその場をズンダー隊の皆様に託した俺は、

 一連の事件の黒幕を探るべく行動を開始した。



 そして、積雪に足を取られながら探し回ること約2時間半……



「ブーギッギッギッギッ!

 よくぞ我が秘密基地まで辿り着いたな侵入者ァ!」


 探り当てた目的地――町外れの廃墟を改装した"秘密基地"――で待ち受けていたのは、

 トランクス一丁でネクタイに白衣っつーふざけた身なりをした豚獣人オークらしき腹の出た中年男。


『あぁ、まぁ……表にデカデカと"秘密基地"って電光掲示板立ってたからなぁ。

 近付きさえすりゃ見付けんの簡単だったぜ、掌握派技術開発課長のテクノピッグ・オークナッツ』

「ブギィッ!? 何故吾輩の名と肩書きがわかったっ!?」

『なんでってお前、看板とこに書いてあったじゃねーか本名も肩書きもよぉ』


 そう、このオークナッツって豚は、止しゃいいのにてめえの拠点をド派手な見た目にしてやがった。

 発光ダイオード(LED)だかネオンサインだか知らんが

 雪深い夜中でもガッツリ見えるほど飾り立てられたその場所を見付けた俺は、

 『本件との関連性はともかくとして、とりあえず掌握派な時点で殺しとかなきゃヤベーな』ってことで建物内に上がり込んだってワケだ。


『然し驚いたぜ、てめーみてぇなバカで不細工なただの豚が掌握派で要職に就いてるなんてよ』

「ブギギギッ! 吾輩を見た者は皆決まってそのように吐かしおる!

 然し吾輩が掌握派の要職であるのは紛れもない事実ゥ!

 というのも、話せば長くなるのであるが――」



 じゃあ、カット。



「――ということで、吾輩はこの天才的な頭脳と技術力、

 そして豚獣人であるが故の性技と精力を見込まれ技術開発課長兼、

 女性罪人等処罰等担当官としての地位を手に入れたのであるが――


『なげーよ』


「ブギョワアアアアアッ!?」


 いい加減鬱陶しかったんで、適当に拳銃をぶっ放す。

 不運にも豚野郎には掠りもしなかったが、

 代わりに如何にも違法臭ぇ下品なタペストリーをぶち抜けたんで良しとしよう。


「なっ、あっ、あぁっ! きっききっ、貴様ぁっ!

 なんということをしてくれたのだっ!?

 このタペストリーは新進気鋭の同人サークル『ええ愛堂あいどう』が

 一昨年の冬コミにて命がけで刊行した成人向け同人誌

 『ヴァンキッシュド・ウマ娘』シリーズ事実上の最終作、

 『四◯◯◯◯イス◯◯ワー◯付編』購入者限定麻雀大会の上位入賞商品で、

 宇宙にこの一点しか存在せぬのだぞおおおおおっ!?」


 ビンゴ、やっぱ違法な代物だったぜ。

 『ウマ娘 プリティダービー』は馬主との関係が拗れるのを防ぐべく、成人向け二次創作を許可してねぇからな。


『命懸け、か。ならいっそ死んじまえばいいんだ、お前もそいつらも……』


 つーか何だよそのクソさしかなさそうなタイトルの同人誌……

 関わったヤツ全員ヘルライズをフォースライズしてゼツメライズしとけっつんだ。


「ぬっぐぅぅぅぅう! よくも我が魂、我が至宝に傷をつけてくれたなぁ!?

 断じて許さんぞ、汚らわしいリビングデッドめがぁ!」

『うっせぇ豚野郎、俺はリビングデッドじゃねえ。デミ・アンデッドだ。

 つーか、掌握派所属で佻尾ここにいるってこたーよォ~


 さては、今回の豪雪と屍人の異常発生に絡んでるヤツだなオメー?』


 当然、無関係でも殺すがそれでも一応聞いておく。

 まあ、素直に答えるかどうかの問題が出て来るわけだが……


「ブギョギギギギギィ! よくぞ聞いてくれたァ!」


 幸いにも奴は極度のバカ、かつ煽てられると調子付く性格だったようで素直に答えてくれた。


「いかにもその通り!

 此度の市街地侵略作戦、通称"カルビオハザード計画"こそは吾輩の晴れ舞台~!


 吾輩の開発した魔術式物体転送装置"ハイパーグレートオメガスペシャル"を用いて

 各地からかき集めた屍人コープスどもを適当な市街地に嗾け制圧、

 その混乱に乗じてそのまま掌握派の支配下に置くという恐るべき計画なのだァァァァッ!」

『なんで五星戦隊ダイレンジャー風なんだよ……


 つか、お前が操ってんの転送装置だけ?

 ってことは寒冷化を引き起こしてるのは別のヤツだってのか?』

「よくぞ見破ったなリビングデッドよ!」

『デミ・アンデッドだボケが』

「やかましい、どちらでも変わらんであろうが!


 此度の作戦、当初の計画ではいい感じに住民が腑抜けてた方が多分制圧もし易かろうということで田舎町を狙う予定であったのだが、

 途中から制圧した後の事も考えて大型ショッピングモールやオシャレなカフェ、あとスイーツショップやアミューズメント施設も幾らかある市街地を狙う方向へ路線変更してな」

『いやもう路線変更の理由が予想外に頭悪いじゃねえか』

「更に上層部は、雪の多い土地ならなんやかんや制圧も簡単だろうと判断され、

 結果的にこの佻尾市が選ばれたというわけだ。

 そこまでは順調だったのだが……あの女ぁぁぁ~! 思い出しただけでも腹が立つ!」


 豚が言うには、佻尾市が選ばれた段階になって

 "カルビオハザード計画"へ急遽新たな人員が投入されることになったそうだ。


 そいつの名前は青佐江雪あおさこうせつ

 ヴェルベリット・ルナティックやサキエッラ・ネレイドミネートと並び称される掌握派大幹部"大弥真智おおやまち 麗鈴りりん"の手下をやってる凍死霊フローズン・ファントムで、

 寒冷地での戦闘や冷気・氷雪の扱いに関しちゃ掌握派トップクラスの達人だという。

 気温を下げたり雪雲を操るのも得意らしいから、佻尾市のライフラインを麻痺させてより円滑に作戦を勧めようってのが上層部の魂胆だったんだろう。



(寒冷地での戦闘や冷気・氷雪の扱いが上手い凍死霊フローズン・ファントム……

 まるで極東四七守護霊会の白雪カンリュウ様みてーだな。嫌な偶然があるもんだぜ)



 然し掌握派トップクラスと言うとどうにもしっくり来ねえが、

 魔界二十三閥族第十五位『サタニック・リージョン』の精鋭部隊を壊滅寸前にまで追い込んだとか、

 平成末期、陰で革命派に支配されてた北方四島を僅か八日間で何もかも氷漬けにして壊滅させたとか、

 実際問題として物騒な逸話には事欠かねえ化け物らしい。


「強大な力を持つとは言え、奴は純粋に寒さで凍え悶える人間を見るのが趣味なだけの小物……

 よって計画への参入は点数稼ぎを狙った大弥真智の指示によるものであろうが、

 とは言えどのみちあの女がまた吾輩の邪魔をしてくるのかと思うと怒りで気が狂いそうだったわ!」

『どんだけ嫌いなんだよ』


 豚野郎は青佐江雪を相当怨んでやがるようだった。

 なんでも普段は冷淡・冷酷で自己中な癖して豚の野郎相手にゃ妙に親切で、

 事あるごとにすり寄って来ちゃ恩着せがましく世話を焼いてくるんだそうで、


 『思い遣りに見せかけた慢心が透けて見えるし、

  男に優しく接してる自分に酔ってる偽善者っぷりには虫唾が走る。

  派閥内の弱者である男に優しくして周囲の女相手にマウントを取ろうとしてるんだろうが、

  そういう所含め一挙手一投足全てが救えなさすぎて腹が立つ』そうだが……


 俺に言わせりゃ、掬えなさ過ぎるのは他ならぬ豚野郎の方だと思わずにいられなかった。



(だってそうじゃん?

 理由はどうあれ他人が思い遣りを以て優しくしてくれてて、

 しかもそれがどっかの人妻みてーにお節介が過ぎて空回ってるとかでもねぇなら、

 もう深読みとかせずにそいつの好意を甘んじて受けつつ有難がっとくのが普通だろ。

 なんなら革命派が男に優しくしようもんなら村八分にされそうな所、

 そのリスクも承知で敢えて接してたんなら……

 青佐の奴はこの豚野郎に脈アリだった可能性すらあるんじゃねーのか?)


 正直くだらねーマウントなんざ取りたかねーが、

 これでも一応恋愛経験あるクチなんでそんな風に思わずにいられなかったんだ。


 ……ま、これから死ぬこいつに態々恋愛指南なんぞしてやるつもりもねーがな。



『ああそうかよ。そりゃ災難だったなあ。

 然し豚野郎、オメーには感謝してるぜ……』

「ブヒッ? 何が感謝だ、

 自分の置かれている状況も理解せず偉そうに――

 『オメーがな?』

「ぴぎっ!?」


 咄嗟に回転式拳銃"新宿酔いどれ色男ギガント・ディック・ザ・スイーパー"を向けてやれば、

 一気に縮み上がって硬直した……かに、思えたが……


「こ、殺すのか!? 吾輩を!? 殺すつもりか、リビングデッド風情が!」


『デミ・アンデットだよ』


「……い、ぃい、いいぞ! 殺したくば殺せ!

 だがこの秘密基地は主を守るように設計されている!

 即ち貴様が吾輩を攻撃したその瞬間、基地の全システムが貴様を殺しにくるぞ!

 システムは魔術を組み込んだ超高性能AI制御により無敵の性能を誇る!

 電力供給が断たれでもせぬ限り止めることは不可能なのだァァァァッ!」


 また五星戦隊ダイレンジャーかよ。

 さてはこいつ世代か?


『ホウ、そらえげつねぇな……

 ところで電力供給ってのはどこから?

 電線に細工して東電……じゃなかった盗電でもしてんのか?』

「戯けぇ! 技術者たる吾輩がそんな安っぽい真似をするかァ!」


 いやお前ウマ娘のAI生成二次エロ絵の購入・所持とかいう盗電より安っぽい真似してたじゃん。


「この基地の電力は吾輩が開発した発電機『KOKORO-GA-PYONPYON』によって賄われておる!

 その所在は異次元につき並みの者では干渉不可能であるが、

 唯一この基地内に隠してあるコアブレーカーを下ろせば電力供給を断ち切ることは可能だァァァァッ!」


『また五星戦隊ダイレンジャーかよ。

 俺世代じゃねぇんだよこの野郎』


「然し乍らリビングデッドよ!」


『デミ・アンデットだよ』


「今更コアブレーカーを探しに行こうなどとは考えんほうが身の為だァァァァッ!」


『だから五星戦隊ダイレンジャーは世代じゃねぇつってんだろ』


「何故ならばこの基地のシステムは吾輩の意のままに自由自在!

 今よりコアブレーカーを探しに出ようものならば吾輩からの徹底的な妨害が待ち受けておるのだ!」


『いやそこはだァァァァッって言わんのかよ。

 ダイレン世代なのかそうじゃないのかどっちなんだよ』


「ともかく諦めることだな!

 吾輩は最早誰にも止められん!

 遠からず佻尾は我が物となろう!

 さすれば日本国が我が手に堕ちるのも時間の問題よ!」


 鉄砲向けられてんのに大した余裕だな……。

 ならその余裕、一瞬の内に突き崩してやるとしよう。


『ほーほー、そらスゲェ話だねェ……。

 ところで豚野郎よぉ、

 オメーの言う"コアブレーカー"ってなぁこれのことかぁ?』

「ブギッピ!?」


 カーゴパンツの左ポケットに入れてたのを取り出し見せ付けてやれば、豚は目に見えて動揺しやがって……どうやら図星らしい。


「なっ、そっ、そそっ、それっ、はぁあっ!

 それこそはまさしくこの秘密基地の電力供給を司るコアブレーカーではないかっ!

 何故貴様がそれを持っているぅ!?」

『何故って聞かれてもなあ……玄関入ってすぐそこの棚の上に堂々と警告文つきで置いてあったから持ってきただけだけど』


 正直当初はそんな重要なもんが玄関に置いてあるなんて思いもせず、

 どうせ偽物だろう、まあ無いよりはマシだしどっかで適当にぶん投げるかーぐらいの考えだったんだが……

 まさか本物だったなんてなぁ。


「いや警告文には『危険! 触るな!』とか黄色と黒で書いてあったであろう!?

 貴様文字が読めんのか!? 警告色も理解できん色盲か!?」

『失敬なヤツだな。文字ぐれぇ読めるし色盲でもねーよ。

 それ言ったらお前こそあんな分かり易い所にそんな重要なもん置きっ放しにしてんじゃねーよ』

「置きっ放ではない!

 敵の先入観と思考の裏の裏の裏の裏をかいた隠し場所であるぞ!」

『裏の裏の裏の裏だと結果的に表じゃねーか。

 まあいいや。とにかく無駄話し過ぎたせいでもう六千字過ぎてんだ、

 退屈拗らせた読者が感想も書かずに愚図り始める頃だからブレーカー落とすぞ』

「いや落とすなよ! それ落としたら証明から暖房まで全部止まるから吾輩凍死するであろう!?」

『切るな? ……成る程わかったぞ、所謂フリってヤツだな?

 確かにお前の体型、今は亡き上島竜兵御大に似てるし、

 そら賢くてもリアクション芸人魂は持ってて当然だよなぁ』

「持ってないが!? まずそもそもフリではないが!?」

『同じダチョウ倶楽部の寺門ジモン御大も博識で多芸なお方だって逸話は有名だしなぁ』

「聞けよ! 吾輩の落とすなはフリではないと言っておろうが! とにかく落とすでないぞ!?


 というか退屈過ぎて愚図る読者って何であるか!?

 それは間違いなく作者の思い込み、感想を書かぬ大多数の読者に対する当て付けに過ぎんであろう!?


 貴様リビングデッドとは言え仮にも主人公であるならば、

 居もしない存在を捏造し不特定多数を逆恨みで貶める作者の蛮行に手を貸すような真似許されんのではないか!?」


『うるせぇ、俺はリビングデッドじゃなくて

 デミ・アンデットだってさっきから何回も言ってんだろいつ覚えるんだよ』

「そこ!? 吾輩結構色々言ったの突っ込む箇所そこだけであるか!?

 他にもっと突っ込むべき箇所幾らでもあったであろう!?

 そもそもリビングデッドもデミ・アンデットもさして大差無かろうが!

 たとえどんな差があろうとも、

 どちらも死者が亡骸ごと魔物化したもののうち、

 その完成形たるアンデットになり損なった出来損ないとの事実に相違ははあるまい!?

 自覚するがよいぞリビングデッド、貴様のその言い分は無職ニートがせめてもの意地を張ろうと『フリーター』や『休職・休職中』を名乗るのと同じこと、

 所詮貴様はあの屍人コープスどもと大差ない、

 単なる汚れたリビングデッドに過ぎんのダぁぁぁぁぁあああああああっ!?」


『うるせえ』


 話の途中、絶好のタイミングでコアブレーカーを落としてやると、豚野郎は面白いように絶叫してくれやがった。


 これが日テレの名番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』の定番コーナー『日本列島ダーツの旅』だったら

 年末特番の村人グランプリで優勝候補ぐらいにはなってただろう。


「き、きき、きさっ、きさっまぁぁぁぁ!?

 あれだけコアブレーカーを落とすなと言ったのに何故落とすうううう!?」

『……何故、って言われてもなあ……察してくれよそのくらい』


 なんか前に殺した掌握派の雑兵どもも悲しいくらい知能低かったけど……

 なに、掌握派ってバカばっかりなの?

 ろくに勉強できない奴らが妥協案で入る、入試答案に名前さえ書けりゃ入れるような治安最悪の高等学校か何かなの?


「さっ、さささっ、さささ察しろだとおお、おおおおおっ!?

 ふっふふ、ふざけたことっをおおっ、

 ぉぉおおっっ、

 ぬか、ぬ、

 抜かすなこの、

 たっかが、り、

 リビングデッド風ぜ――『違ぁう!』――いがぁっ!?」


 突っ込むと同時、意図せず発射された新宿酔いどれ色男ギガント・ディック・ザ・スイーパーの弾丸は豚の眉間を貫通……奴を即死させた。


『俺はデミ・アンデッドだ。

 "何度も言わせるな"なんて言わねえからいい加減覚えてくれよ……


 と、もう聞こえねえか』



 どうも、感情的になる余り無意識の内に引き金を引いちまっていたらしい。

 我乍らなんて失態だ……或いはそもそもあんな雑魚相手にここまで尺を割いちまったのがまず失態なわけだが、

 ともかく俺は二人目の黒幕、凍死霊フローズン・ファントムの青佐江雪を捜すべく、電力を喪い家主の死んだ秘密基地を後にした。



 ……その後、幸いにも青佐はすぐに見つかった。

 豚野郎に夜這いでも仕掛けるつもりだったのか、

 秘密基地のすぐ近所にある空き地で寒冷化を引き起こしてやがったからな。


 屍人の転送を止められたとして青佐を片付けねえことには佻尾市民も無事では済まねえワケで……

 奴の拠点ヤサが早く見つかったのは、俺にとっちゃ余りにも好都合だったんだ。



(……オイオイ、マジかよ)



 だが然し……辿り着いた現場ってのは、決して手放しで喜べるほどいい状況でもなかった。

 所謂"好いニュースと悪いニュースがある"ってヤツさ。



(勘弁してくれ、ふざけんじゃねーぞ……

 こんな展開あんまりじゃねーか)



 一つ。好いニュース……

 即ち

 【俺は青佐のクソを徹底的に容赦なく、何が何でもぶっ殺せると決意できた】



(放送十周年記念、

 オリキャス再集結で描く本編の正当続編だと思って見てみたら、

 大麻ハッパキメたが如きイカレジジイ共の自己満足やらかしで、

 ファンの誰も望んでねえゴミみてえな結末になっちまった『復活のコアメダル』みてーなモンじゃねぇかよ……)



 二つ。悪いニュース……

 即ち



(いや、もっとひでえか……。

 なんだ……

 ヒロイン個々人の経歴・人格面での詳細な掘り下げとか、

 一つ屋根の下で暮らす者同士の絆を描く心温まるエピソードなんかを期待してたのに、

 その実蓋開けてみりゃ『死霊の盆踊り』と大差無かった漫画版『スイートホームメイド』みてーな……)



 【『極東四七守護霊会』幹部

  雹雪忍后ひょうせつにんごう"白雪カンリュウ様が、

     死 ん で る 】


 俺は二人の顔なんて知らなかった。だから最初は否定したかった。

 『逆だ』『勘違いだ』『白雪様が青佐を殺したんだ』って、そう言いたかったんだ。



(ああ、「逆だ」と言えるもんなら言いてえよ今だってなあ……)



 だがどう足掻いても無理なんだ。

 死越者の研ぎ澄まされた感覚が、全身の神経が『目の前のこの女こそ、白雪様をぶっ殺した青佐のクソ阿婆擦れだ。さあぶっ殺しちまえよ』と、力強く訴えかけて来るんだ。

 死体は原型を留めてなかったが、4649号様から貰った顔写真の特徴が

 僅かにだが確認できてたってのも確実な証拠だろう。


 そんな返答じゃ信用ならねえってんなら、

 より具体的に、明確な根拠を述べよう……。

 そもそも今まで、俺は短期間の間に大勢の淫魔と出会い、その内革命派と掌握派の奴らを殺し、

 血を浴び、骨を砕き、肉を引き裂いてきた。噛み付いたり、威嚇がてら死体を食ったことさえあった(クソ不味くてすぐ吐いたけどな)。

 

 だから俺は既に、奴らを覚えてしまってるんだ……

 この身に備わる五つの感覚で、明瞭に!

 身なりや顔を見れば大体わかる。

 声を聞けば台詞の内容で凡そ察せる。

 体臭を嗅げば殆ど確信に至れる。

 近接武器の手応えでも意外と識別できる。

 死ぬほどマズい死体の味は、思い出すのも嫌になる。



(……最悪だ。マジ最悪。

 ほんと、こんな展開望んでなかったのになあ……)



 つまり淫魔の所属を五感で判別できちまうんだ、俺は。


 だから即座に理解しちまったのさ……

 今目の前に佇んでいるこの全身青い淫魔型のアンデッドが、まさに掌握派の青佐江雪だって事実をな。



「……――」


(なんだこいつ、切り裂かれて氷漬けになった白雪様のご遺体の上に

 汚えケツなんぞ乗せやがって……

 布減らした改造和服に気取ったポーズで『ぬ~べ~』のゆきめ夫人にでもなったつもりか……)


 身の程を知れ、阿婆擦れが。

 てめえは『東方Project』のチルノか『シルヴァリオ ヴェンデッタ』のウラヌス辺りが精々だ。


(……若しくは"そいつらに例えるのさえ不適切"、か)


 ともあれヤツへの殺意はいい感じに昂りっぱなしだし、ここいらでド派手に暴れてやろうじゃねえか。



(……ブチ殺すぞ、ゴミがぁ)



 てなワケで次回は弔い合戦だ。期待して待ってろ?

次回、名も顔も知らぬ白雪カンリュウを弔うべくナガレが修羅と化す!

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