昏睡死越者、目覚める→『白金の不死者団』からの招待状
『葬送のフリーレン』を読み始めました。
ヒット作だし発想が秀逸だしやっぱり大ヒット作ってことでそりゃまあヒットしたのも頷けるような完成度だなって思いました。
まだ二巻までしか読んでませんけど、それでもやっぱりヒットしただけあるんだなってのはわかった感じですね。
俺の名前は、北川ナガレ。
『グウオオオオオオオアアアア……』
『ガアアアアアア……』
『グィギギギギギィィィ……』
『オイオイ、勘弁してくれよ。こんな街中で屍人、それも変異体の群れなんてよ……
折角偉大な先輩にお会いできるってんでワクワクしてたのに、楽しい気分が台無しじゃねえか』
雪の降り頻る深夜の街中で厄介な屍人どもに遭遇し戦わざるを得なくなっちまった、不運な死越者だ。
『まあ、なんだな。
二十一世紀最高峰の出版物と名高き不朽の名作漫画「葬送のフリーレン」最新十一巻のシュタルク少年もこんな気分だったのかもしれねェ』
『グウウガアアアア!』
『ゴウゴッゴガガアアアッ!』
『ブオッボオオオオオォォォ……』
『……つってまあ、俺ぁまだ二巻の途中までしか読んでないんで十一巻の内容なんてまるで知らんがね』
ただそれでも『葬送のフリーレン』は二十一世紀最高峰の出版物で、漫画界に名を残すべき不朽の名作だとは思ってるがね。
(というわけだから『フリーレン』ファンのみんなもそうでないみんなも、
本作への感想・レビューやらそのへん宜しく頼むぜ? 作者の野郎、いよいよ病んじまって何仕出かすかわかんねーからさ……)
周りに言われて休むようにはなったらしいが、根本的な問題解決には至ってねえからな……。
みんなも作者の野郎が病んだ挙句に何かしらヤバいことやらかしたら気分悪ィだろ?
(奴を癒すにはみんなの感想やレビューが必要なんだ……
『感想やレビューなんて熱心なヤツが書いてるんだから自分は書かなくていい』なんて他力本願ムーブかますなんて、みんな当然そんな真似しねえよなぁ?
この作品を読んでくれてるみんなは思い遣りがあって優しいもんなあ?
俺ァみんなの信じてるからよ……くれぐれも裏切ったりしねーでくれよな?)
さて、そんじゃ何故こうなったのかについて回想形式で説明していくことにしよう……。
「うおおぉぉぉおおおおおっ! キタちゃああああああん!
よく目ェ覚ましてくれたああああああっ! 俺ァ心配で心配で仕方なかったんだあああああ!」
『あー、はいその……すんません雲井さん、なんか心配かけちまって……』
「「北川の兄貴ィィィィィィ! よくぞご無事でえええええええっ!」」
『おお、お前ら……悪かったな……』
変異補助薬『ミューテーションスターター』の副作用でぶっ倒れてた俺が目覚めたのは、前日深夜帯から約半日ほど経過した昼頃のことだった。
今までも何度かあったこととは言え、それでもみんな心配してくれていたようで……
雲井さんや蚕豆コンビの二人はじめとする街の顔馴染みは大抵泣きながら俺の無事を喜んでくれたくらいだ。
「全く君って奴は!
薬のお陰で幾らか戦いやすくなったとは言えそれでも未だに昏睡のリスクもあるし、
死越葬態なる怪物化の力を使いこなせてるとは言い難い状況なんだから
もう少し冷静に動いてくれないと此方としても困るんだがね!?」
『申し訳御座いません、早川さん……』
「本当に早川さんの言う通りだよ!
そりゃ近頃は魔界二十三閥族との縁ができたお陰でモンスター連中とも幾らか戦えるようにはなったけど!
それでも革命派の奴らとまともに渡り合えるのはこの街じゃキタちゃん、あんただけなんだよ!?
そうでなくたってあんたは泥得自警団の最高戦力で団員たちにとっての精神的支柱なんだからさ、
そこんとこ忘れて貰っちゃ困るんだよ!
あんたはもう自分だけのもんじゃないんだってしっかり自覚して貰わないとねぇ!?」
『……はい。申し訳御座いません、周防団長……』
ただ当然、それだけじゃ終わらなかった。
早川さんはじめ技術開発チームの皆様や、
周防団長を始めとする自警団の方々には散々怒られ説教を食らった。
まあそこはなんつーか当たり前だと思ったし、
そんだけ俺自身がこの街のみんなから大事に思われてるんだと思うと自分自身の軽率さに腹が立って仕方なかった。
(そうだ……変わらねぇと……
まずは何としてもてめえが何者かっつーのを自覚して行動を改め、
かつ戦力として確実なレベルアップ、ステップアップを……強くならねぇと……!)
てなワケで俺はマインデッド邸へ赴き、ルージュ様に頭を下げた。
『どうかっ!! どうかこの下賤な死体風情めに御慈悲をっっっ!!!』
『……取り敢えず頭を上げなさい北川くん。
話はそれからだ』
例によって丁寧に饗して下さったルージュ様が仰有るには、
何と彼女はその辺りも見越して裏で動いて下さっているのだそうで……
『その辺りの世話も陽炎一族に頼み込んでいてね、
あちら側としても君に興味があるとかで、受け入れには積極的なのだが……』
『何か他に問題がおありで……?』
『うむ。あちら側も様々な別件で慌ただしく、それらを片付けないことには何とも、といった感じらしい』
ああ、やっぱそう簡単には行かねぇか……
俺は内心落胆する。
だがルージュ様は、如何にも見計らったようなベストタイミングで『然し』と話を切り出した。
『然し、然しだよ……
実に運良く、或いは仕組まれたが如く、
この私へ接触してきた愉快なヤツが居てね……』
『愉快、に御座いますかィ……?』
『ああ、愉快だとも。
何せそいつときたら、今日日珍しく屋敷へ手紙を送り付けて来たのだからね』
加えてルージュ様曰く、封筒に書かれていた差出人の名前がまたぶっ飛んでたらしい。
というのも……
『封筒の当該欄に曰く、差出人の名は……
「魔界二十三閥族第零位『ボーダーフールズ』客員特殊戦術指揮官
兼
同組織傘下『白金の不死者団』代表
"白羊宮の死越者"アリオン・ガルゴノーツ」
……と、ある』
『なんてこった……!』
そいつはまさに衝撃の展開だった……
驚きの余り、蟹座の癖して不死鳥座っぽい台詞が出ちまうぐらいにはな。
『手紙の内容としてはまぁ、シンプルなものでね。
ガルゴノーツ氏自身の自己紹介と「白金の不死者団」の紹介、
それから君に「白金の不死者団」本部へ来るよう伝えて欲しいといった旨の内容だったよ』
手紙を見せて頂いて確認した所に拠ると、
『白金の不死者団』ってのはガルゴノーツ氏が設立した死越者用の支援団体で、
死越者のシステムを作り上げた『ボーダーフールズ』と死越者各位の橋渡し他様々な役割を総合的に担うべく設立されたらしい。
んで団体が着手してる活動の中には、
死越者各位の鍛錬や能力強化なんかの面倒を見てくれるプランもあるそうだ。
(死越者は大抵どっかノ組織の世話になってるとは聞いたが、
それとは別に「ボーダーフールズ」傘下で専用の支援団体があるとはな……。
こりゃ行ってみる価値はあるかもしれねェ)
イマイチ胡散臭くも感じるが、
とは言えXに転がってる『RTした人の小説を読みに行く』系のハッシュタグや、
小説家になろうやカクヨムなんかの読み合い企画に比べりゃ断然信用に値するのは紛れもねぇ事実……
ま、そもそもその手のハッシュタグや企画なんぞは
中韓系鉄道会社の『易くて早くて安心』とか、
求人情報誌の『アットホームでやり甲斐があります』って表記ぐらい信用できねーんだが、
ともあれこの『白金の不死者団』とやらを頼る価値は間違いなくあるだろう。
てなワケで俺は早速手紙に記載されていた『白金の不死者団』総本山の住所へ向かった。
『てか総本山の住所わりかし遠っ!?』
『まあ、他県だからね……。
加えてその辺りなら、今の時期だともう雪が降り積もっている頃だろうさ』
『ですよねー……』
大雪の強さと面倒臭さは知ってるが……
とは言え何のこれしき、
死をも乗り越えといて雪如きに怯むなど、死越者の名が廃るってもんよ。
――〔次はァー"佻尾"。次は"佻尾"ィー。
降り口右側です。
お足下、お忘れ物にご注意下さいッ〕――
『ようやっと着いたか。やっぱ新幹線乗った方が良かったかな』
駅から駅へ電車を乗り継ぐこと十時間余り……
遂に俺は『白金の不死者団』総本山の所在地"佻尾"市へ降り立った。
年中湿度の高い北部にあるが故だろう、辺り一面の銀世界……と、言っちまえば小奇麗に聞こえるが、実際は雪が積もって尚降りしきる最悪の光景、言うなれば白い地獄が広がっていた(吹雪いてねえだけ幾らかマシだが……)。
目に見えた痕跡が確認できる辺り定期的に自治体や駅関係者が定期的に雪掻きをしてるんだろうが、
降雪量と気温の低さ、あと人手不足やらの所為で除雪作業が追い付いてねぇんだろう、歩道は脛辺りまで積雪していて滅茶苦茶歩き辛ぇ。
(体力的には問題ねぇんだが……精神的にキツいもんがあるな)
仕方なく歩道の外を歩くが……路側帯は雪に埋まってる分、必然車道に出なきゃいけなくなる。
恐怖心が鈍ったお陰で車は怖くねぇにせよ、それでもドライバーへの罪悪感が半端じゃねえ。
(なるべくなら急いだ方がいいのは間違いねえが……
先方へ訪問させて頂くタイミングの調節もしなきゃなんねぇのがネックだなァ)
ともすりゃ適当にネカフェでも見つけて泊まろうか。
なんて思考を巡らせていた時……
『グウウウガアアアア……』
『ヴオアアアアアア……』
『ヅヌウウウウウウウウウ……』
『オイオイ、嘘だろ? なんでこんな街中に屍人どもが……』
雪のちらつく闇夜に響く、聞き覚えのある呻き声……屍人どもの群れだった。
(……数はそれほど多くもねぇが、変異体ぽいのが混ざってんのがネックだな)
変異体ってのは、要するに特殊な姿や能力を獲得した厄介な屍人どものことだ。
代表的なのだと個体を指揮するほど賢い『コマンダー』や、刃物や鈍器どころか鉄砲までも使いこなす『ウェポンユーザー』、
バカでかく怪力を誇る『タイタン』、火を吐く『サラマンダー』に、圧縮空気で素早く動く『アクセルジェット』等その種類は枚挙に暇がねえ。
(ざっと見た感じだとファイターとボルテクス、あとはアーマーゴーレムってトコか。
あっちのデカいのはタイタンかウォーキングネスト、でなきゃボマーやマシンフューザーかもしれねぇ。
あと確か佻尾市街は全体的に川や水路が多いしベントス系も警戒しねーと……)
考え得る限り比較的上位に食い込むレベルで最悪な状況だった。
純粋に身体能力の高い『ファイター』や鉄壁の防御を誇る『アーマーゴーレム』、電撃使いの『ボルテクス』や極端にデカくて怪力を誇る『タイタン』なんかはシンプルに強いし、
虫や鳥、鼠なんかの巣と化したまま動き回る『ウォーキングネスト』、動き回る爆弾と呼ぶべき『ボマー』、機械を取り込んだ『マシンフューザー』だって相手取るとなると面倒だ。
水死体型の『ベントス』系は本体の動きこそ鈍いが腐り落ちた肉片さえ動き回るんで始末が悪く、
その極致とも言える『ブロッブ』なんかは実質スライムの如く狭い隙間にも入り込みやがるから見つけ次第迅速に始末しねーと後が怖え。
(ま、変異体だろうがそうじゃなかろうが
屍人なんざ見つけ次第根絶しとくに越したことはねえがな……)
こういう状況に備えて武器の類いは常に一定数持ち歩くようにしてるからそれなりに戦えるつもりだが……
何分こういう積雪した土地での戦闘なんて経験がねぇし、何より単独かつ限られた武装で結構な数の変異体を相手取らなきゃなんねぇってのが地味にキツそうでどうにも不安だ。
(……勿論、だからって尻尾巻いて逃げ出すつもりは毛頭ねえがな)
もしここで俺が億市逃げ出したなら、最悪大勢の市民が犠牲になるだろう。それだけは何としても避けなきゃならねえ。
(イザとなったらゾディアス・ヴェポライザーで変身して蹴散らしゃ何とかなるんだ……
とにかく今はこいつら片付けんのが最優先。
そもそも近頃のバトル回はゴーレムだのモンスター娘だのばっかり、本編で明確に屍人刈んのがめっちゃ久々だし気合入れねーと……)
屍人刈りに飢えてた読者のみんな、待たせたな……
次回は久々にがっつり屍人刈り見せてやっから、とりま期待して待っててくれよ。
Q.なんで劇中どころかタイトルでまで葬送のフリーレン読んでるアピールしてるの?
A.今まで読者にナメられてた一因は話題作に触れて来なかったのもあると思って、
じゃあ話題作を読んでるアピールしておけばミーハーなオタクどもが寄ってきて
『マジかよ! 蠱毒成長中、外道の癖に葬送のフリーレン読んでるとかやるじゃねえか! だったら読者になってやってもいいぜ!』
って感じで読者増えないかなーと思って。




