射抜かれ死ぬか、刈られて死ぬか→どのみち奴らは生き残れない
一般的なオタクらしい感性を学びつつ平和的な作品から刺激を受け取るためにDMMの『スイートホームメイド』を始めました。
パズルがひたすらグダグダなのでやっぱり自分はバカなんだなぁと思い知らされました。
あたしの名前は、フオン・ジュイ。
『変成、"精神刈り砕く死神社員"……』
(へえ、あんな切り札を持ってるとはやるじゃないか……
流石は柳沼の姉さんイチ押しの新入社員てトコかねえ)
色々あって共闘することになった若手の実力を目の当たりにする、射手座の死越者さ。
『悔いる間も無く……刈り尽くす……』
春日部係長の変身した"精神刈り砕く死神社員"は、
まさに死神の会社員ってな感じの見た目でね。
紺色のレディーススーツを着こなして、
白い黒死病マスクで面を隠し、
手を覆うのは黒い革手袋、
足にはこれまた黒いブーツとパンスト、
髪は純白から焦げ茶がかった黒に変色し、
凝ってた髪型もタテガミだかみたいになっちまって、
挙句刃が真っ赤な大鎌っぽい武器まで背負ってんだからね。
(スカート丈は短めだし、スーツ越しにもスタイルの良さは隠せてないってのに、
それでも"美少女"ってより"女人の化け物"に見えちまう……
全く、姉さんもドエラい奴を雇っちまったようだねぇ)
「うッ……く……!」
「ふっ、ぐぅぅっ……!」
「なッ……ぁあっ……!」
感情が変質しちまってる死越者でさえそう思っちまうんだから、
まして革命派の連中なんて言うまでもないだろう。
奴らときたら揃いも揃って縮み上がってビビり散らかし、動くことさえままならず……
幾ら上辺を取り繕っても、誤魔化し切れないもんはあるのさ。
「ひっ、怯むなっ! あんなもの、所詮虚仮威しだっ!」
誰が言ったか、その一言を号令代わりに奴らは係長へ襲い掛かるけど……
『――刈ァッ!』
「ゴェァ!?」「がヒッ!?」「グギぇ!?」
目にも止まらぬ早業で振り抜かれた大鎌のひと薙ぎで最初の三匹が即死したのを皮切りに、
雑兵どもは面白いように細切れにされ、斬り殺されていく。
『達磨ッ!』
「ぐきゃあ!?」
『輪切りッ!』
「ぎょへぇっ!?」
『三枚卸ッ!』
「サカナァ!?」
『桂剥きッ!』
「ムケテネェッ!?」
刃が直線的とは言えそれでも大鎌、刀剣や槍なんかに比べりゃ明らかに扱いづらい筈なのに、
春日部係長は苦も無く余裕綽々って感じで軽々雑兵どもを刈っちまうんだ。
加えてあたしも引き続き自分の異能――射手座の死越者特有の"実態のない矢を射る能力"――でもって雑兵どもを始末してたわけで……
そうなると革命派は二択を迫られる。
つまりは『射抜かれ死ぬか、刈られて死ぬか』って究極の二択をね……。
「ええい、全く情けない! 貴様らそれでもアイスヴァイン・スクワッドの誇り高き勇敢な戦士なのか!?」
「んん~~もぉ~~やられっぱなしとかマヂムカツクぅ~~~!
こ~なったら、ウチが直々にぶっ潰してやるぅ~~~!」
痺れを切らしてとうとう幹部勢のお出ましと来たもんだ。
(ていうか、交戦開始から結構経ってるんだけどあいつら今迄何やってたんだろうね?)
「チェインバインド、貴様には係長を任せるぞ!
我はあの死越者のババアを殺る!」
「りょーかいっ♥ あんなのウチんナカで溺れさせてやるもんね~っ♥」
てな感じで烤鸡肉串はあたしが、粉红色化妆水女は係長がそれぞれ相手取ることになったのさ。
(スライムは特に刃物使いには面倒な相手……図らずも貧乏籤 《びんぼうクジ》引かせちまったかもしれないねぇ)
なんだか申し訳なくなっちまったあたしは、早いとこ眼の前の烤鸡肉串を処分して係長に加勢しようとある判断を下したのさ。
「捻り潰してくれるわ、この薬漬けの死体ババアがぁぁ~っ!」
(しょうがない。こんな烤鸡肉串風情に使うなんて真是太可惜了気もするけど、ちょいと本気でも出してみようかねぇ)
「避けるなぁぁぁぁぁぁ!」
(嫌なこった)
殺気丸出しで力任せに振り下ろされた剣を避けながら、あたしは意識を研ぎ澄ます。
『"我が守護星よ、導いとくれ"
"死を超えた先へ旅立つ為に、射られた火矢は水面を照らす"
"弓は柔軟。矢は自由"
"何処へ目掛けてどれ程飛ばすも、番える射手の匙加減"
"射手のその身は、半人半獣。どっちつかずの半端者"
"けれどそれ故に柔軟で、双方の美点を併せ持つ"
"人間のように賢くて、獣のように力強い"
"けれども奴らはふしだらで、ずる賢くて臆病だ"
"それは結局あたしも同じ"
"あたしもそれほど清かない。要は奴らの同類さ"
"美しいのは見た目だけ。性根は腐った屑だから"
"だからね義人よ、正しき人よ、このあたしには気を付けな"
"あたしは悪への誘惑者。誰をも惑わし邪悪へ誘う"
"義人聖人完璧超人、心を持つなら皆同じ"
"一瞬だって油断をしたら、一気に地獄へ引き摺り込むよ"
"射殺されたくないならば、精々用心することだ"』
「ぬうううぐがああああああ! なぁぁぁにをわけのわからんことを吐かしおるかああああああっ!」
『――おっ、とぉ~
あんたが一生巡り合えないのはッ、夫ォ~』
「余計なお世話だあああああああっ!」
もう何度目かもハッキリしない烤鸡肉串の斬撃を避けながら、あたしは詠唱の仕上げにかかる。
『死越葬態"心奪いし魔弓の射手"……!』
「ぬっぐあああああ!?」
烤鸡肉串を吹き飛ばす紫色の爆炎を伴って、あたしの変身こと正式名称"死越葬態"は完了……。
その姿は言っちまえば"バフォメットと堕天使を混ぜ込んで悪魔チックな鎧を着込んだ女ケンタウロス"ってトコか……ま、少なくともヒーローって見た目じゃないのは確かだねぇ。
武器にしたって、不気味な曲刀二振りとやけに直線的な短刀……玩具展開にゃ到底向いてないデザインさ。
「ぐっ、ぬぅうぅぅ……なんだ、貴様ァっ!
小汚い下品なババアめが、中学生でも恥ずかしがるようなイタくてダサい仮装なんぞしおってからに、
それで格好良くなったつもりか!? 恥を知れ恥をっ!」
『ぁあ〜ん? ぁンだってェェ〜? すまないねぇ、あたしゃババアなもんだから耳が遠くてさ…、。
売れ残りったカラーひよこの囀りなんて小さ過ぎて聞こえやしないんだよ』
「ぐんぬああああああ! 誰が縁日のカラーひよこだぁぁぁぁぁぁぁ!」
軽く煽ってやっただけでキレ散らかす烤鸡肉串……いい燃えっぷりだ、相当脂が乗ってんだろうねぇ。
『来なよ烤鸡肉串、二刀流同士正々堂々決闘と洒落込もうじゃないか』
「フン、我に剣で勝負を挑むとは愚かな……良かろうッ!
ならば全力で相手になってやるッ!
馬刺しにしてくれるわ、この屍肉がぁぁぁーッ!」
『ムンっ……!!!』
鳴り響く金属音。激突する刃の刃……
すんでの所で受け止めたんで鍔迫り合いの形になったが、
果たしてあと少しでも反応が遅かったら負傷は確実だったろう。
「ぐぎぎぎぎぎぎ……!」
『なぁ〜んて膂力だいっ……!
気を抜いてたら押し切られちまうようなッッ……!』
「ぬぅんぐぐぐぐぐっ……がぁーっ!」
『ふッッ!』
力任せに振り抜こうとしてきたもんだから、咄嗟に後ろへ飛び退いて回避したけど……
どうやら奴の腕力は予想外に見た目以上、接近戦を挑むのはやめといた方が良さそうだ。
(悪いね春日部係長、あんたん所への助太刀はちょいと無理かもしれないよ……)
さて、それじゃ果たして実際係長がどうなってるのかと言えば……
「え~い、潰れちゃえ~っ♥」
「「「「ぎょわああああっ!?」」」」」
『ふん……当たりませんわ、そんなもの』
「「「「ぐべぇぇぇぇぇっ!?」」」」
「あ〜ん、また外れたっ! んもぉ〜あんた達しっかりしてよねっ!」
「「「「ず、ずびばぜん……!」」」」
(この変態……部下を何だと思ってますの?)
粉红色化妆水女の見た目に違わぬふざけた戦法に、些か苦戦を強いられていたのさ。
「しょーがないなぁ~! じゃあお次は~これっ♥
ぬるぬるマシンガン、発射ぁ~♥」
『……またそれですの? 面倒なのでやめて下さいませんこと?』
そもそもスライム系の種族ってのは得てして戦う上では厄介な相手なんだ。
不定形で変幻自在だからどんな場所にも入り込めるし、種や個体にもよるけど切断や打撃みたいな物理攻撃なんかも殆ど効かないからね。
オマケに細胞を素早く簡単に増やせるから、それを応用して傷の再生から分身、巨大化までやってのけちまう。
一応熱や冷気、電撃や毒なんかには比較的弱いけど、耐性がついてる奴もわりといるし、最悪死んだ細胞を切り離して捨てちまうって手段もある。
しかもあの粉红色化妆水女はそんなスライム系の中でもそこそこの上位個体で、かつ革命派の淫魔だから"万能生体防護魔力膜"も当然持ってるしで大抵の攻撃は無力化しちまうんだ……たとえ魔術であったとしてもね。
「んん~もおおおお~! 動き回らないでよぉ~! タマが当たらないじゃぁ~ん!」
『戯言を……抜かすなッッ!』
「いやああああぁぁぁぁ~っ! ウチの腕がぁぁぁ~っ!」
そこを理解してるからこそ、係長もあくまで大鎌での斬撃を軸に戦ってるんだろうさ。
"精神刈り砕く死神社員"の持つ赤い刃の大鎌……やけに現代的、って言い方も妙だけど、実際オフィスなんかにありそうな無機質で質素なデザインのそれは、あたしら死越者に似せて作りでもしたのか特別な代物らしくって、
万能生体防護魔力膜をものともしないほどの鋭い斬撃が持ち味なようでね。
おかげで間合いにさえ入っちまえば奴の手足を切り飛ばすぐらい造作もないのさ。しかも……
「んもぉぉぉぉおっ! ほんとそーゆーのやめてよねっ!
それで斬られたらくっつけるのに時間かかっちゃうんだからぁ!」
『あら、治癒の余地があるんですの? それはまことに残念ですわねぇ。
……一生涯消えない傷として残り続けてくれればどれほど良かったことか』
魔力の作用を疎外してんのか細胞そのものを弱らせてんのかわからないけど、係長の大鎌はスライムの高い再生能力をもある程度抑制しうるほどの機能を秘めてるようでね。
お陰で粉红色化妆水女も係長相手には真剣に戦わざるを得ないってワケさ。
といって、じゃあ係長が優勢かってぇとそうでもない。
「しょーがないなぁ~~~! また"おやつタイム"しなきゃいけないじゃんっ!
えーっと、つ~ぎ~は~ど~の~こ~に~し~よ~お~か~なっ♪
が~ね~っと~あ~い~ず~さ~ま~の~ゆ~う~と~お~り~いーっ♪」
「ひいっ!?」
切り飛ばされた腕を拾い上げた粉红色化妆水女は、そのまま雑兵の一人――露骨なまでに嫌悪感と恐怖の表情を浮かべてたよ――を鎖で捕縛、一気に手元へ引き寄せて……
「ひっ、嫌ッッ! お待ち下さいチェインバインド衛生部隊長っ!
"おやつ"でしたら私よりお誂え向きの者がまだ幾らでもっ!」
「ダメ~♥ 待たなぁぁぁ~いっ♪ てか、ゾーヘイの分際で衛生部隊長のウチに盾突くとかナマイキじゃんね?
そーゆージョーカ関係がわかってない子にはぁ~オッシオッキでぇ~っす♪ ハイ、縮小ーっ♥」
「嫌ッ! あっ、ぁぁぁぁっ!」
「いっただっきまぁぁぁぁっす♪ ぁ~むっ♥」
「ぁっ! があっ! ぁ……ぁぁあぁあああああぁっ……♥」
魔術でそれこそ一口サイズにまで小さくした雑兵を、まるで飴玉でも食べるみたいに口に含み……幾らか舐り散らかした後丸呑みにしちまったのさ。
(それ系のシチュエーションが好きな紳士淑女諸氏にゃ悪いけど、吐き気がするねぇ……)
喉元を過ぎた雑兵が腹へ到達した辺りで、係長が切り落とした奴の腕が再生していく……
察するに、スライム特有の柔軟な体組織で雑兵の身体を隅々まで弄って魔力を吸い取ってんだろうさ。
当然雑兵の魔力膜も健在だから消化吸収はされず、腕の再生が終わると同時に股だか尻だかの辺りから快楽付けにされて下品なアヘ顔のまま再起不能になった雑兵がぼとり、と雑に"排泄"されるって寸法さ。
「はぁ~~~おいしかったぁぁぁ~♥ 腕も元通りだしぃ~♪
傷付くのはイヤだけどっ、おやつタイムできるんなら悪くないかも~♥」
『……不愉快ね。部下を何だと思ってますの?』
「はあああ~? なにいってんのかかりちょーさん、部下はじょーしの道具になるつもりで働くのが仕事でしょ?
あと礼儀知らずの部下にはオシオキするのもじょーしの務めだしぃ~?
ウチなんもわるいコトしてなくなくなくなくなくなくなくなぁぁぁ~い?」
『……聞くだけ無駄、と。私も他者を使う身の上……
なればこそお前だけは徹底的に、苦しめて殺す……』
さて、粉红色化妆水女の腐った性根はともかくとして……"排泄"された雑兵は程なく元のサイズに戻るんだけどね……
「ぅぅ……ぁぁぁ……しご、と……にん、む……」
「ひいいいっ! こっち来たぁぁぁぁ!」
「にっ、逃げるわよっ!」
「そ、そうだ! 時間切れまで逃げ切りさえすればっ!」
「あいつだって本心でやってるわけじゃないんだし、逃げ切っちまえばこっちのもんだぁ!」
そのままぬっと立ち上がると、うわ言みたいに仕事だの任務だの務めだのと呟きながら他の雑兵たちを追い回すのさ。
やがて排泄された雑兵が他の同僚たちをある程度捕縛すると……
「んん~♥ じょーできじょーできぃ~♪
それじゃ折角捕まえてくれたことだしぃ~♥
"あれ"、行っちゃおっかなぁぁぁぁ♥」
「「「「「「「「「「ひいいいいいいいいっっ!」」」」」」」」」
粉红色化妆水女は恍惚の表情で捕縛された雑兵たち目掛けて鎖を投げ……奴らを鎖でぐるぐる巻きの球体にしちまったのさ。
そして鎖を握りしめたヤツは、おもむろにそれを引き寄せて……
「いぃぃっくよぉぉぉぉぉ~~~っ♥」
「「「「「「「「「「ウワアアアアアアアアアアアアアアア!」」」」」」」」」」
「そぉぉぉぉ~れいっ!」
「「「「「「「「「「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」」」」」
球状に拘束されて鎖に繋がれた十人前後の雑兵どもを、鎖付き鉄球よろしく係長目掛けて振り下ろしたのさ。
『……愚の骨頂ね。当たるワケないでしょう、そんな攻撃……』
「「「「「「「「「「グベエエエエエエエエエエエ!!!!!!」」」」」」」」」」
大振りで軌道の読める、安直な攻撃……当然係長は余裕で回避するわけで、雑兵どもは地面に激突さ。
「んなぁぁぁ~んもぉぉぉ~! だから避けないでって言ってるでしょぉ~?
てかさぁぁぁ~? 避けられたのこれで何度目だっけぇ~?
ほんとさぁ、みんなしっかりしてよねっ!
ドロメディーアちゃん激おこプンプン★だゾっ♥」
「「「「「「「「「「ひいいいいいっ!
も、申し訳御座いませんんんんんん!!」」」」」」」」」」
その上外したら全部部下の責任だってんだから……もうブラック上司とかそういうレベルじゃないよねぇ。
『一挙手一投足が実に不愉快極まりないわね……
……はあ、仕方無い。お前なんかに使いたくはなかったのだけど、
格好ばかりつけていて結果が残せないんじゃ本末転倒だし、出し惜しみなんてせず一気に勝負をつけてしまいましょう』
懐から取り出した呪符みたいなのを手に、係長は詠唱を開始したんだ。
『"死を執り行う者の権限に於いて要請する"
"水仙の花、糸杉の門よ、開かれよ"
"そこは冥府の敷地なり"
"許可無く立ち入りし者皆、我へ抗う術を亡くさん"
展開、"冥王箱庭・限定的狭小"』
「づうっ!? ぐううつっっっ……!?」
「「「「「「「「ぐわあああああああ!?」」」」」」」」
詠唱の終わったその瞬間、係長の周囲を取り囲むように赤紫に光る円陣が現れる。
瞬く間に肥大化していくそれは粉红色化妆水女や雑兵たちをも囲い込むとこれまた毒々しい色合いの透き通った半球形の障壁みたいなもんを形成……範囲内にいる係長以外の動きを封じちまったのさ。
「ぅっく、ぐぅぅっ……!」
『……ふんっ』
『ぎゃああっ!?』
『はっ』
「ぎえええっ!?」
『せい』
「ぐぎょわーっ!?」
係長は粉红色化妆水女を淡々と切り刻み……凡そ十数か二十余りの透明な塊にしちまったのさ。
普通なら身体をくっつけて元に戻れただろうが、透き通った障壁のせいでそれもできず………
『……心は汚いのに、内臓核は無駄に美しいなんて全くお笑いね……』
「ぁっ! は、なせぇ! それに、触んなっっ!」
抉り出すように拾い上げたのは粉红色化妆水女の内臓核……
スライム系の、特に知能が高めで複雑な姿になれる種族が持つ内臓器官で、文字通り奴らの魂が宿る中枢部……
つまり、スライムの急所ってワケさ。
『……頼まれなくてもそうするわよ。お前なんかの内臓なんて、手袋越しでも触りたくないもの』
「あっ、おい馬鹿やめ――ぐぶぁっ!?」
係長が内臓核を投げ落とせば、切り刻まれた粉红色化妆水女は苦悶の声を上げる。
何せ内臓核はスライムにとっちゃ最大の弱点……体内にある時は幾らか無敵でも体外、取り分け空気中に出ちまうと表面が硬化して割れやすくなり、
しかも身体から離れても感覚なんかは共有される上受けるダメージも倍増するんだからね。
軽く投げ落とされただけでも殴られたようなダメージとして伝わるって寸法さね。
『……』
「ぐぎゃっ!? が、ぁああっ!!」
『……』
「ちょっと、あんたぁっ!? なにあたしの内臓核踏み付けてんのよっ!?
ぐぎっ――その足、退けなさっ、ぐあがあああっ!?」
地に落ちた粉红色化妆水女の内臓核を踏み付ける係長……簡単に踏み潰しはせずじわじわ苦しめてるのは流石だねぇ。
『誅ッ 強過ぎてごーめーんー 敵惨殺しちゃってごーめーんー』
「ぐがぁぁぁぁ!」
『誅ッ パワーアップしてごーめーんー 無双展開でごーめーんー』
「ぐげっ!」
『私が私のー 敵を殺してー 何が悪いのー 当然でしょーがー』
「ぐぎぃ!?」
『助けてとか 足退けてとか
聞こえないわね その命乞い』
「がぎゃっ!?」
その後、係長はどっかで聞いたような歌を口ずさみながら粉红色化妆水女を甚振り尽くし……
『――お前ー 生きる価値も 無ーしッ』
「ゴッヴェェェェェエエエエエ!?」
歌い終わりと同時に内臓核を踏み潰し、遂に粉红色化妆水女を絶命させたってワケさ。
因みに今回こうして地の文担当してるあたしだけど、実際は助太刀どころか係長よりも苦戦を強いられてる有り様でね。
(何せあの烤鸡肉串、案外素早いし無駄にガードが堅いもんでねっ!)
ただ奴の方は疲労や負傷で明確に消耗してるし、決着は時間の問題だろうけどね。
(然し豚肉塩漬隊、わりかし強いじゃないか。
巨蟹座の新入りを担いで逃げたあのコールレインって人狼の子は大丈夫かねぇ?)
係長が信用するぐらいだからそうヤワじゃなさそうだが……どうにも心配なんだよねぇ。
次回、ナガレを担いでサイトウ地区へ向かったアーネストだったが……?




