未熟な死越者が革命派淫魔に立ち向かう方法→戦闘中の一服
未だ死越者として未熟なナガレ。
通常兵器の攻撃を殆ど無効化する革命派淫魔の万能生体防護魔力膜に対抗する術は果たしてあるのか……?
俺の名前は、北川ナガレ。
『喰らえ特殊弾、美男巡査"!』
「ぎょわあああああ!?」
「網がっ! 網があああああ!?」
「何これっ!? なんかどんどん迫って来るっっ!?」
「てか痛っ! トゲが、棘があああああ!」
「ぎやあああああああ! 指千切れたああああああ!?」
『続けて喰らえや、"美麗婦警"!』
「なっっっ!?」
「弾が、消えッ――ぐびゃあああ!?」
「のぎゃらばっ!?」
「ぐぎひーっ!?」
"強欲警官"の強化装置、"双頭蛇竜騎兵"を駆り事件現場へ急行、駅前の大通りを疾走しながら掌握派のクズどもへ特殊弾をぶち込む、まだまだ未熟な蟹座の死越者だ。
……って説明だけじゃ"|お前は何を言っているんだ《ミルコ・クロコップ》状態"だろうが、その辺態々説明してっと長引くし、解説役は眼前のクソ淫魔どもに譲ってやるとしよう。
「ぎゃあああああ! なんか変なヤツ来たあああああ!?」
「あんなのいるとか聞いてないんだけどぉぉぉぉ!?」
「なによなによなによぉぉぉ!」
「美鋤なんて別にあの市長ぐらいしか変なの居ないしヨユーとか言ってたの誰よぉぉ!?」
「知らないってぇぇぇ!」
『オラァァ! そこの淫魔ども! 逃げんじゃねェ!
てかなんだその説明は!? それじゃ読者に伝わらねえだろ!
もっと具体的に説明してみせろ! じゃねーと殺す!』
俺としちゃその台詞、あくまで相手の恐怖心を煽ろうと適当にその場のノリで言ってみただけだったんだが……
「えぇー!? 何あいつ!?」
「何なのあいつ!?」
「なんか唐突にわけわかんないこと言いだしたんだけど!?」
「でも説明しないと殺されるなら、説明するしかないわ!」
「こんな所で死んでたまるもんですか、行くわよみんな!」
「じゃあまずはあたしが行くわ!」
どうやら奴ら、筋金入りのバカだったらしい。
壁際に追い詰められた状態なのに"上へ飛んで逃げる"なり"攻撃魔術で反撃する"とかの発想にさえ至らずバカ正直に動かず固まってんだから相当だろう。
「なんか、バイク乗っててコート着てて変なマスクで小型ミサイル撃って来ててそれから――」
『雑かァ~』
「ナンデエエエエエエエエッ!?」
隙だらけだったので、早川さんと豆柴が共同開発した"刃を発射できるクロスボウ"こと"霊界救済漆黒英雄"で喉を射抜いて殺しておく。
「「「「ええええええええっ!? 殺したあああああ!?」」」」
「なんで!? なんで殺すのよ!?」
「そうよこの子しっかり説明してたじゃない!」
「男のくせに自分の誓い建ても守れないとかサイテ――
『アホかァ~』
「エッベエエエエエエエ!?」
「「「ぎゃあああああ! また殺したああああ!?」」」
めんどくせぇのでもう一匹"漆黒英雄"で始末しておく。地味に連射式だからこういう時助かるんだ。
「なんでっ!? なんでぇぇ!?」
「あたしらあんたの言うとおりにしたのになんで殺すの!?」
「こうゆう時ってなんか、もっとこう、あるでしょ!?」
『ボケどもがぁ……釣り針の甘言信じ込むカワハギがどこにいる……』
「は!? 何イミフなこと言ってんのあんた!?」
「そうよそうよ! 釣り針とかカワハギとか何の話!?」
「てか釣り針が喋るわけないで――」
『ッラぁ!』
「ぐぎいいいいあああああっ!? うっ、腕ええええええ!?」
「「ひいいいいいっ!」」
アホ過ぎて腹立ったので生き残った内の一人の左腕を切り飛ばす。
使った武器は細長い釣り竿風のダブルセイバー、"毛魂毛涙"……
シンプルな見た目乍ら、槍にして刀、かつ鞭としての機能も併せ持つ多機能な代物だ。
「腕ッ! うっでえぇっ! ウデがっ! うでがあああっ!?」
「ひっいいい! なっ、ああっ、なん、でっ! なんでえええ!?」
「なんなのよっ!? 一体あんた、なんなのよおおおおっ!?」
『うっせぇ~。そらこっちの台詞だゴミがぁ~』
「ぶぐぎぇえっ!?」「はぎゃが!?」「むまぐっぐぇ!?」
面倒になったので、固まってた淫魔三匹の胴を横一文字に両断……当然奴らは血や臓物を撒き散らしながら息絶えた。
『この程度の比喩表現も理解できねえのか。優性種族気取りが聞いて呆れらあ』
その場を後にした俺は、その後も暫く掌握派の連中を刈り続け……大体一時間もしない内に奴らは全滅した。
〈=皿=〉<因みにだが"双頭蛇竜騎兵"ってのは言っちまえば"強欲警官"をはめ込んで起動する擲弾発器置付きの大型バイクで、同武器の対応擲弾を前後二門ずつある毒蛇の頭を象った砲門から発射できる代物だ。
早川さん曰く『「こち亀」の本田速人巡査をイメージした"強欲警官"用の強化装置』らしいが……なんか納得できるようなできないような……。
「こっ、こここっ、こんなっ、ハズわがぼっ!?」
『……さて、これで全部だな』
最後の最後までしぶとく生き延びてた淫魔の頭へバットのフルスイングを決め引導を渡した俺は、そのままスマートフォンで各方へ電話をかけようとして……異様な気配を察知し、咄嗟に手を止める。
そして――
『――……!』
「ヌッッッ!?」
金属同士の衝突音と、続けて微かに聞こえる女の声。
(やっぱりな)
咄嗟に毛魂毛涙で防いだんで何とも無かったが、あと一秒でも遅かったらどうなってたかわかりゃしねぇ。
『ケッ!』
「むううっ!」
追い払おうと薙ぎ払うが、殺気を読まれたせいか黒い刃は空を切る。
『いい加減出て来りゃいいじゃねーか、しっかりお互いの面見せ合って話そーぜぇ?』
「……成る程腕は立つらしい。シコタマ派の雑兵どもが為す術なく全滅するのも必然であろうな……」
大物ぶって口走りつつ物陰から姿を現したのは、鎧に身を包んだ雌淫魔型天馬人の大女……身形はマトモな戦士風だが、漂う気配と風貌、特に安っぽいバカが画像生成AIで量産したような顔立ちからして所属は明白だ。
『さては革命派だろオメー』
「ほう、よくぞ察したものだ。如何にも我こそはペルセデューサ・カーフィールド!
革命派大幹部候補見習いにして、革命派が世界に誇る最強の戦闘部隊『アイスヴァイン・スクワッド』副隊長であるぞ!」
『はあ〜……で、その塩漬け豚肉隊の副隊長サマが俺に何の御用だよ?
さてはこの作品のファンかぁ? 悪いが今は仕事終わりのプライベートでなあ、サインや写真撮影なんかには対応できねンだワ。
手数乍らその辺は自警団か雲居のジイさん、でなきゃ作者のヤロウ辺りを通して貰わねーといけなくてな……』
「ほう、丁寧な対応であるな。
然し生憎、我は貴様のファンではないのだ」
『おっとぉ~、そりゃ残念だな。で、だとしたら何の用だい?』
「……その身なりと腕前、そして腐った性根に減らず口……貴様、噂に聞く"ゾンビ狩りベイダーの北川"で間違いないな?」
『はぁあぁぁあ~~仮にも他人を使う立場の癖に質問を質問で返してんじゃねぇぇ~よこのスカポンタヌキ合戦ポンポコがぁ~。
てか、仮にそれで俺が「人違いだ」つったらどないしまんの? 素直に認めて見逃してくれんのけ?』
「認めも見逃しもせぬ……我は天馬人の戦士。
最強にして至高の存在であり、故に何も間違いはせぬ。
よって貴様が何と言おうと関係なく、我の判断こそ唯一絶対の真実に他ならぬ」
オーゥマァイ、なんてこったぁ。どうにも俺はとんでもねーヤツに遭遇しちまったらしい。
『成る程そういうことか。ならそれでいいや。
お前がそこまで言うんならそうなんだろうよ、お前ん中に限ってはなァ~
……と、普通は煽り倒してやるところだが……運が良かったなぁ、まさに俺こそ"ゾンビ狩りベイダー"って呼び名で通ってる北川だよ』
「そうかそうか……ならば話は早い。
ベイダー北川よ、最強にして至高なるの権限を以て貴様に命ずる……」
背負った大剣の切っ先を俺に向けた焼鳥馬刺が言い放つのは、ヤツの頭ん中を体現するような"とんでもねー"一言。つまりは……
「貴様自身の罪を償うべく、我が手に掛かり滅ぼされるがよい」
『嫌だと言ったら?』
「決まっておろう……力尽くでも、裁きを下す迄……
革命派に弓引く愚物よ、滅び去れィ!
アルティメット・ペガサス・スライサァァァァァ!」
『おぉっとぉ!?』
力任せに振り下ろされた焼鳥馬刺の大剣は、石畳を粉砕し地面を抉る。
幸い振りがデカく隙だらけだったんで避けるのは苦じゃなかったが、真正面から喰らってりゃ人堪りりも無かったのは想像に難くねえ。
『血の気が多いなァ~。てかよ副隊長サン、革命派って確か殺生NGの不殺主義じゃなかったっけ? 明らかに俺の事殺しに来てんのおかしくない?』
「戯けが、我ら革命派に弓引く者……それも穢らわしいリビングデッド風情が一丁前に生者を気取るでない!
貴様らリビングデッドなど所詮は世の底辺、我らの矯正による救済無くしては存在すら許されぬ廃物……
にも拘らず差し伸べてやった手を払い除け恩を仇で返した貴様など、矯正して救済う価値もないわァ!」
『交渉の余地はねえ、ってか……!』
予想通りの展開だ。寧ろ期待すらしてた程には都合がいい。
『その言葉、ウソじゃねぇな?
抜けた羽毛は植わらねえぞ、独身ウマゴリラぁ……』
「……! 貴様ぁ、よりにもよって我が一番言われたくない事を言ってくれたなぁ!?
許さんぞぉぉぉ!
アイスヴァイン・ジャッジメント・デス・ブレードォォォッ!」
『ヒェイッ! ――隙だらけじゃねーか、喪女ウマゴリラァ!』
「吐かせえええええっ!」
安い挑発に激昂し暴れ回るアホの猛攻を躱しつつ、俺は狸面の顎を開き懐から取り出した物体を牙だらけの裂けた大口へ含む。
些か平たく細長い箱型の"ニコチンとタールのない電子煙草"――実在の銘柄で言えば『ドクターベイプ』や『RELX』辺りが近いか――めいたそれは、未だ未熟な死越者が革命派に立ち向かう為必須な切り札……ある日すず屋に届いた、差出人不明で俺宛の配達物。
(拝啓、"境界上の愚者団"の皆様方ァ!
死を超える技術力、お借りしまァ~ッす!)
どっかの合体怪獣に変身しそうな不審者っぽい独白を経て、筒の奥から湧き上がる水蒸気を肺一杯に吸い込めば、忽ち頭は冴え渡り、身体に力が漲り滾る。
(俺があんな感じで合体怪獣になるとしたらなんだろーなァ、
ガルベロス+ガヴァドンA……いや、モチロン+ノスフェル辺りか?)
なんてボケてる間に、内なる力は俺の全身に作用し……ものの三十秒足らずで変異は完了する。
その姿は嘗て屋敷の庭園で暴走した時の姿に似ていたが、カニの手足や毒蛇の頭は不自然に透き通ったアストラル体じゃなく血や神経の通った生身のそれだ。
生え方としちゃ衣類を『突き破る』ってより『部分的に衣類ごと変異』してるような感じで、加えて蟹の腕と脚は俺自身の手足が変異する形で各一対ずつ増え、毒蛇も太さは半分以下になったが四匹に増えている。
つまるところ俺の姿は、まだまだ不完全なのは言うまでもねーが、然し確かな進歩も感じられるような変化を遂げていたんだ。
そして何より喜ばしかったのは……
『サァ殺ローゼ、奇蹄喪女ゴリラァ!』
「何を貴様っ……わけのわからぬ姿でわけのわからぬ事を吐かしおってぇ!」
変異しても尚、声が若干変わりこそすれ自我を維持できてるってトコだ。
暫くの記憶が吹き飛んでて気付いたら辺りが目茶苦茶だった、ってのも精神的にクるシチュエーションなだけに、そこはマジで有り難え。
「全身切り刻んで石狩鍋とイラブー汁にしてくれるわァ!」
『ヘッ! 殺レルモンナラ殺ッテミロィ!
尤モテメーノソノ性格ジャ、材料ドコロカ俎板ヤ台所マデブッタ斬リソーダケドナァ!』
「ぬうううぐうああああああっ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェェェッ!」
さぁ、始めようか……偉大なる漫画屋先生に捧ぐ、蟹座産まれの逆襲劇を!
~次回予告~
やめて!
革命派淫魔の万能生体防護魔力膜やそれっぽい防御術、あと所謂"ギャグ補正"での不死性対策を前提として設計された死越者の攻撃を受けたら、
革命派の豚の塩漬け隊では最強クラスだとしても、魔界二十三閥族とかその辺だとそれほど強くもなくて、
万能生体防護魔力膜抜きなら武装した泥得自警団が必死で袋叩きにすればわりと勝てなくもない程度のペルセデューサ・カーフィールドなんてすぐ死んじゃう!
お願い! 負けないでペルセデューサ・カーフィールド!
あなたが今ここで倒れたら、死んでいった革命派のみんなが浮かばれないし、もっと多くの革命派のみんなが死ぬことになるのよ!?
今ここを耐え抜いて、次の更新までにこの作品にユーザー15人以上からの感想がついて、10件のレビューが書かれて、ブックマーク件数が200件に到達して、評価ポイントが5000点くらい入るか、
蠱毒成長中のカクヨム(https://kakuyomu.jp/users/KDK5109)にギフトが総額50万円くらい入って、
ヤツの気が変われば、
あなたでもあの死越者に勝てるんだから!
次回、『ペルセデューサ、死す!→待ち受けるのは、思いがけない副作用……?』
読者スタンバイ(命令形)!




