当主との対面→何故か誕生星座を確認されたが……?
実に十一日もの長きに渡る更新停止期間を経て、遂に更新!
俺の名前は、北川ナガレ……
『初めまして、北川ナガレ君……
私の名はルージュ。
ルージュ・クリステル・ブリュンスタッド・クロムウェル・ストリクス・アヴェーン・マインデッド……
魔界二十三閥族が第十八位「月夜議事会」の欧亜総合議長他幾つかの肩書を持つ、マインデッド家の現当主だ。
以後、宜しく頼むよ』
『ご丁寧に有り難うございます、当主樣。
泥得サイトウ地区自警団の北川ナガレと申します。
以後お見知り置きを……』
予定より早めに療養を終え、遂にマインデッド邸を統治しておられる吸血鬼のルージュ様と対面する“アンデッド寄りのリビングデッド“だ。
〈◎皿◎〉<因みに演劇で蛭川を演じて居られたのはやっぱり当主樣だったようで……
『さて、堅苦しいのもここまでにしよう。
どうぞ楽にしてくれ給えよ北川くん』
『お心遣い感謝します、天に仰ぎ見るべき偉大なる当主樣』
『……堅苦しいのは止そうと言っただろ? まあ、君が緊張する気持ちもわからんではないし、そこはこれから追々慣れていけばいい話ではあるがね……。
何にせよ敬ってくれるのは結構だが、変に仰々しい呼び名はよしてくれないかな』
『と言いますと』
『そのままの意味さ。もっと気安く呼んでくれないか、ルージュちゃんとかおば様とか婆さんとかそんな感じで』
『そいつぁいくら何でも気安過ぎでしょう。せめてルージュ様かお姉様ぐらいが妥当ですって』
『ならその妥当な辺りで頼むよ。どうにも他者、特にお気に入りだったり大切にすべき相手から距離を置かれるような扱いをされるのはシンプルに寂しくて辛いのでね』
『申し訳御座いません。以後このようなことがないよう尽力させて頂きます。何卒お許しを……』
『ま、そこまで真剣に考えるようなことでもないがね。
……さて、世間話もそこそこに本題へ入ろうじゃないか』
一気に真剣な面持ちになられたルージュ様は、使用人たちの手を借りながらスクリーンやプロジェクターを準備していく。
『まず北川くん、君の正体についてだが……』
『はい。やっぱなんか特殊なリビングデッドなんですか?』
『ああ、概ねそうだ。
北川くん……単刀直入に言うと君の正体は"死越者"。
この世に十二体しか存在しない、極めて強大な力を秘めた希少種のアンデッドだ』
『……!?』
ルージュ様の口から発せられた思いがけない言葉に、俺は思わず困惑するが……対する当主様はそんな俺の心情を知ってか知らずか、尚も話を続ける。
『驚いたかね? まあ、驚くだろうな。
だがこれこそ紛れもない事実……君が自ら通り名として名乗っている"死越者"とは本来、魔界二十三閥族第零位「ボーダーフールズ」によって生み出された史上最強の"死せる生体兵器"、その正式名称だ』
『なんてこった……』
開いた口がふさがらねえってのはこういうのを言うんだろう。俺はそのぐれぇ驚いていた。
だってそうだろう、今まで何となく、ガキのカッコつけ程度に『ゾンビ怪人』なんて名乗ってたら、その実てめえがガチのゾンビ怪人……それも魔界二十三閥族に名を連ねる組織が産み出した、世界に十二体しか存在しねえ希少個体だった、なんて。
余りにも信じ難い、いっそ馬鹿げたウソみてーな話で……
『信じられんかね』
『俄かには、とても。ジャンプの漫画じゃねえんだからって感じですわ』
『ジャンプ、か。確かにジャンプめいた点もなくはないし、的確な指摘と言えるかもしれないな。
……ところで北川くん、藪から棒に変な質問をさせて貰いたいのだが構わんかね』
『ええ、構いませんや。ルージュ様のことです、変な質問とは言えここまでの話題とまるで無関係てコトはないんでしょう?』
『ご明察、これは死越者にとって重要な要素なんだがね……北川くん、生前の君は蟹座生まれで間違いないね?』
『ええ、その通りです。何故それを? 話題に上がらないもんだから話してなくて、こちらのお屋敷は勿論泥得サイトウ地区の方々も基本的に知らない筈なんですがね……』
何故俺の誕生日を的確に言い当てられたんだかよくわからんかったが、恐らく住民票か何か漁りでもしたんだろうと軽く察して流すことにした。
(聞けば魔界二十三閥族は裏社会に名を轟かせるっつーし、実質反社ならそういう真似もしかねねーだろうしな。それにしてもなんで誕生日なのかよくわからんが)
だが次の瞬間、高貴な吸血鬼の発言に俺は思わず耳を疑った。
『やはりそうか。元は消去法に過ぎなかった所へ、庭園で君と交戦したアーネストの証言からほぼ確信していたが……
そうか、やはり蟹座か。戸籍情報を探るまでもなく一目瞭然だったわけだ』
『!? ……どういうことですルージュ様、何故アーネストくんの証言から俺の誕生正座を? 彼には別段、そういったプロフィールの話なんざしちゃいませんがねぇ?』
アーネストだけじゃない。屋敷ん中の誰にも俺が蟹座生まれだなんて話したことはなかったハズだ。
これが読心術使いの使用人に脳内を覗かれてたとか、救助された時に魔術かなんか使った精密検査で記憶まで探られてたとかならまだ納得できるが、よりにもよってアーネストの証言からってのが意味不明過ぎる。
そんな俺の困惑を察知されたのだろう。ルージュ様はあくまで穏やかに語り掛ける。
『混乱するのも無理からぬことだが、一先ず落ち着きなさい。言っただろう、死越者にとって重要な事柄だと……』
『失礼、然し一体どういうことなんです? あの毒蛇生やした蟹の化け物になった俺と、誕生正座に何の関係が? 確かに俺ぁ蟹座生まれですが、だからって――……いや待て。蟹で毒蛇……って、まさか!?』
俺はその時、色々と察知したんだ。
何故暴走した俺があの姿になったのか、そして死越者と誕生正座の関連性についての諸々を……だがそれはあくまで俺の個人的な推測に過ぎねぇ。
なればこそ、まずはルージュ様から話を聞くのが先決だ。
『ルージュ様……改めてお教え下さいませんか。死越者と誕生正座の関係とは? 何故俺はあの姿になったんです? この身に一体、何が起こったと……?』
『その様子だと、概ね察しはついているのではないかね? まあ、憶測を過信せずあくまで信用に足る情報源を頼ろうとするその姿勢は悪くない。
順を追って説明しよう。そもそも死越者とは、黄道十二宮に名を連ねる各星座に対応する一人ずつしか存在し得ない。
或いは逆に言えば、死越者とは生前の誕生星座を司るよう設計された存在なのだよ』
(……なんてこった)
驚いて言葉も出なかったよな。何せ俺の憶測、九割がた的中してたんだもんよ。
更新停止期間何やってたって?
ごめん、カクヨムで新作書いてたわ……
お前ら好みの作品になっていくと思うから、こっちでも応援宜しくな!
https://kakuyomu.jp/works/16817330664692554388




