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デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者諸共殺されて腹立った俺は、最強ゾンビになって美人悪役令嬢とかイケメン人狼なんか連れて復讐序でに無双しようと思います-  作者: 蠱毒成長中
CASE3 激突、マインデッド邸守衛隊五人衆!

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その狗人、迅速にして無敵につき

アーネストの切り札"狗人刑吏サーラメーヤ"、果たしてその全容とは……

 俺の名前はアーネスト。

 アーネスト・ルプス=”ヘイズィムーン”・コールレイン。


『――……』

『さてさて、先程の投書三通ですが、例によってお悩み相談序でに楽曲のリクエストも頂いております!

 これまた文面がほぼ同じなもんで要約させて頂きますが――』


 原因不明の暴走状態に陥ったお客人を正気に戻すべく、ラジオ番組のリハーサル――つーか実質、ただの発声練習――でノリ良く暴れ回らんとする、テンション高めの番犬だ。



(U ・ω・U)<具体的な曲名は版権に配慮して伏せさせて貰うんで勘弁な



『――……』

『よお、待たせたなあ北川……これでようやっと、お前さんと真正面からどつき合えるぜッ』


 綺麗な朝焼けに照らされた庭園の一角。心情をそのまま反映したような、全身の毛皮が鬼火めいて青白く燃え盛る北極熊大シロクマサイズのイヌ科肉食獣――"狗人刑吏サーラメーヤ"としての姿で語りかけてみるが、当然北川からの反応はねえ。

 察するにやっぱ、今のヤツにてめえの自我なんざ微塵も残っちゃいねえんだろう。果たして何によるもんかはわからんが、ともかく暴走状態で、恐らく目につくもんを手当たり次第攻撃するよう仕向けられてやがるってのは間違いねえ。


『惜しいよなあ。そんな不気味カッコいい姿になれたってのに、自我もなく暴走状態なんてよ……全くもって惜しいったらねえぜ、北川殿ォォォォ!』

『…………――――』


 北川と俺、双方が四つ足で力強く踏み込んだのは全く同時。だが攻撃は北川ヤツのが早く、ハサミで俺の頭を潰し切ろうとする。


(オイオイこいつぁ、避けらんねえなあッ!)


 スキのない一撃。避けようもなくハサミが俺の頭を挟み込む……


『……ワケでもねーんだな、これがっ!』

『――……』


 巨大なカニのハサミは俺の頭に触れることすらできず、あたかも煙や立体映像が如くすり抜ける。

 これぞ"狗人刑吏サーラメーヤ"最大の特徴が一つ、疑似的な幽霊化に伴う攻撃の完全無効化……要するにこの姿でいる限り、俺はいかなる攻撃も受け付けねーってこった。


『――……』

『うらァ!』


 ハサミ攻撃の空振りでできた隙を突き、俺は北川の腹に渾身の体当たりをブチ込む。幽霊化は疑似的なもんだからこっちからの攻撃は相手に通用するし、幽霊になった分身軽なのもあって移動はほぼ瞬間移動並み。


『っシャア!』

『――……』


 加えて”サーラメーヤ”は敵を含む周囲のあらゆるもんから問答無用で吸い上げたエネルギーを俺専用のもん――よくわからんが、どうやら魔力とかとは違う結構特殊な代物らしい――に変換して体内へ取り込み、自己強化や敵の弱体化に繋げられる。しかも幸い、今の庭園には北川が殺してくれた革命派どもの死骸が山程ある。奴らは言わば生きた魔力の塊、死ぬと多少抜けてったり変質したりすると聞くが、抜けてようが膨大は膨大だし変質しようが魔力は魔力……"サーラメーヤ"で吸収しちまえば同じことだ。



(U・ω)<因みに俺がこの能力ワザを使えるようになった経緯ってのはまあ結構長いし結構アレな内容だから、そのうち頃合い見て話すわ。



『……――』

(チッ、結構弱らせたハズなんだがまだ怯みもしねえとは……カニにしても硬すぎンだろッ!)


 さて北川との戦闘開始から暫し……俺は内心焦りに焦っていた。

 どんだけ焦ってたかっつーと、半年か八か月ぶりに高速飛ばして参事官ぐらいかけて実家に帰省する時の残り二十分ぐらい焦ってた。

 ……なんて言うと読者のみんなは『スピードもパワーも上がった上に相手の攻撃一切シャットアウトできる無敵状態なんだから別に焦ることないじゃん』って思うんだろうな。確かに言いたいことはわかるよ。そりゃそうだ。『パワーアップした上に攻撃無効』なんてまんま黄金宝条永夢ハイパームテキなんだから焦る必要なんてありゃしねーよ――"()()()()なら"な。


(そうさ。"()()()()なら"こんな焦ったりしてねぇんだ。

 それだけ()()()()からこんだけ焦ってんだよ)


 あんま勿体付け過ぎても良くねーだろうし言っちまおう。

 実はこの"狗人刑吏サーラメーヤ"、何時までも長々と維持できるもんじゃない。発動中はずっと内側の"俺専用のよくわからん珍しいエネルギー"を消耗し続けちまって、エネルギー切れになると強制解除される上、二日か三日はロクに動けねーぐらいバテちまう……要するに制約付きの代物なワケだ。ウルトラ戦士のカラータイマーとか、なんだっけ魔進戦隊キラメイジャーの強化携帯みてーなもんだと思ってくれりゃいい(ボーボボの融合戦士とかでもいい)。

 維持できる時間は全体の出力――移動や攻撃に割くエネルギーの割合で、高いほど素早く動けるし攻撃力も上がるが、当然その分消耗が激しくなる――や発動前のコンディション次第だが、何も吸収しねーままだと大体一~三分前後が精々だ。

 今回は暴走状態の北川と革命派どもの死骸から幾らか吸収できたんで結構延長されたが、どんだけ出力を抑えても十五分……まともに戦えるレベルの出力で行こうもんなら残り四分半が限界だろう。


(淫魔どもの死骸からこれ以上吸うわけにもいかねーし、庭園全体の生命エネルギーやら土ん中水ん中の養分を頂こうもんなら庭そのものが死んじまって再生させんのに莫大なカネと時間がかかる)


 それ以前に金と時間をかけて庭園を再生させたとて、その過程で殺しちまった連中を蘇生さすのにも専門の業者呼んだり処方に色々届け出て許可取ったりしなきゃいけねーからめんどくせーし、そこをクリアしても戻って来るかどうかは結構分の悪ぃ賭けだ。よって庭から頂くって選択肢は有り得ねえ。


(んで、北川から吸うにしても、奴のあの状態がどんな仕様なんだかわからん以上吸い過ぎて殺しちまったら本末転倒……これ以上の弱体化デバフは悪手と考えた方がいい)


 いつぞやアナコンダの姿揚げをチュロスか海老天の感覚で食いそうな馬鹿でけぇ竜種ドラゴンのババア――年間平均気温が五十度を超える火山周辺の荒野一帯を仕切ってるマフィアのボスで、肉弾戦が完璧な上に魔術もプロ級に使いこなすヤベー奴だった――と色々モメてサシでやり合った時、魔力と生命エネルギーをそれぞれ七割か八割ほど吸い取ってから拷問してやろうと削岩機を見せてやったら情けなく命乞いしてきたことがあるんだが……実は今回北川から吸ったのも大体同じか、もしかしたら若干多いぐらいかもしれねぇ量だ。


 だのに奴ときたら、確かに動きは目に見えて鈍ったし攻撃も結構通るようになったとはいえ、それでも顔色一つ変えず突っ込んで来やがんだからどうしようもねえ……ニトロの虚淵センセが飼ってるらしい詐欺が生業の畜生じゃなくたって『わけがわからないよ』と言いたくなるってもんだ。


 ……となると更なる弱体化デバフを、と考えたくなるところだが、何分俺自身今回はこれまでやり合った経験のねえ未知の相手で、しかもそいつを"殺さず生け捕りにしなきゃならん"ってんだからいよいよどう対処したらいいんだかわからんのが現実だ。下手にやり過ぎて殺したら元も子もねえ。


(……となりゃ、残された選択肢は一つ。

 残存エネルギーほぼ全部自己強化(バフ)に割いて、一撃で無駄なくいい感じに北川ヤツを再起不能にする、これだけだ)


 上手く行く確証なんてありゃしねえ。攻撃を外したら一巻の終わりだし、当たったとしてそれで奴が"いい感じにダメージ受けて再起不能"になるかどうかがまず不明瞭……再起不能にならず動き続け、ガス欠で動けなくなった俺を殺すか、最悪その攻撃で北川を逆に殺しちまう可能性だってあるだろう。


(正直、他の選択肢とどっこいどっこいな気がせんでもねーが……

 多分、そのぐれぇの犠牲を前提に考えとくぐれぇの覚悟でもなきゃ"好都合な結末(ハッピーエンド)"なんて夢のまた幻想ユメ……

 腹ァ括んねえ半端なヤツには、半端な結果すら訪れねェ!)


 だから俺は、腹を括る。


『――……』

(そうだ……元はと言えばこれも全部俺の失態やらかし……責任を負うべきは俺なんだっ!)


 距離を取り、身構えて、一気に踏み込む。


(ジッキンゲンも、セレスティアも、フィロミーナも、チャールズのジジイも、そして外ならぬ北川も、みんな覚悟決め(ハラくくっ)て戦ったんだ!)


 有りっ丈の自己強化バフで増大した脚力を解き放ち、限界まで加速。


(だのにこの俺がっ、部下を守り客人を持て成すべきだったこの守衛頭オレがっ!)


 地面から四足アシが離れると同時、骨格を四足歩行から二足歩行に切り替えつつ全エネルギーを右腕に集中させる。


(安全圏から大物ぶって戦場見下ろして、そんで全部済んだらただ土下座して許してもらってハイお仕舞いなどとッ!)


 北川も攻撃を察知、カニの手足や毒液で攻撃してくるが当然そんなもんは通用しねえ。よって速度は落ちもせず、弾丸の如く真っ先に奴へ飛んでいく。


(そんなふざけた真似が、許されようハズもねえ! 俺は守衛頭オレとして責任を取る……この件にキッチリ、カタをつけるんだぁぁぁぁぁっ!)


 あっと言う間に眼鼻の先。計算通りの位置……腕の有効射程圏内に入ったその瞬間、俺は全エネルギーを集束あつめ、溜め込んだ右腕を力強く振りぬき――


ェェェェェェェエエエエエエアアアアアアアッ!』


 奴の横っ腹を力一杯"抉り取る"。


『――……』

『――ぅぁ、が……ぁぁ……」


 そうして北川の横を通過しきったと同時、ガス欠で"狗人刑吏サーラメーヤ"は強制解除され、俺は執事服人狼もとの姿で庭に転落。奇跡的に受け身が取れたお陰か芝生や石畳の上を転がり続け、仰向けに倒れ伏す。


「……っ、ぅ……ぁ……」

『…………』


 意識を失う瞬間、俺は確かに見た。


『――――』

(……きえ、た……? きえ、たぁっ……!)


 確かにこの目で見たんだ。

 腹を抉られた北川の身体から、カニのハサミや足、毒蛇の頭なんかが跡形もなく消え失せて……


(……や、っ……た……ぜ……)


 ヤツが意識を失ったように崩れ落ちる、その様を……。

決着ゥゥゥゥゥゥゥ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] アーネスト氏の決意表明(*´꒳`*) [一言] 今回も手に汗握る展開でした〜 アーネスト氏の必殺、かなり体力も気力も持っていかれますな。 お疲れ様です、アーネスト氏お茶をお持ちしましたぞ …
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