リビングデッドの、後始末
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カクヨム版も書いてるのでよろしくね。各話ごとに本編を補足する情報が入ってるので多分こっちで読んでるキミも楽しめるぞ。
俺の名前はアーネスト。
アーネスト・ルプス="ヘイズィムーン"・コールレイン。
『――』
「よぉ北川殿、落ち着こう? な? ケンカは終わったんだ!」
『――』
「聞けって北川殿ォ! もう革命派の阿婆擦れどもは根絶やしになってんだってばよォ!」
暴挙に及ぶお客人を必死に止めようと頑張ってる、豪邸仕えの番犬だ。
(UTωTU)<折角落ち着けると思ったのにあんまりじゃねえか……
事の起こりは北川が赤スライムを粉砕した直後。あともう少ししたらいい感じで朝日が昇って……
『――……』
「いやぁ〜北川殿っ! さっきなァなんともはや、見事な虐殺っぷりだったなァ!
マスク割れからの大逆転なんてまるで特撮ヒーローかよってぐれぇ、えげつねーレベルのカッコ良さじゃねぇか。
ま、アンタはヒーローってより怪人な感じだし、仮にヒーローとしても秋月信彦とか大道寺克己、でなきゃウェイド・ウィルソンか|クリストファー・スミス《ピースメイカー》辺りのダーク路線だろうが――」
『――……』
「――どわっだああああああああああ!?」
あくまで親しげに語りかけていったハズが、北川からの返事はまさかの蛇頭からの毒液ブレス……当然避ける俺。何せありゃ革命派の魔力膜さえ難なく貫通して奴らを細胞の一片まで余さず殺す猛毒だ、食らわねーに越したことはねえ。
「な、な、なんだよ北川殿ぉ!? 俺の物言いがそんな癪に障ったかよ!? いいじゃねえか! エターナル克己は人気過ぎてスピンオフで強化貰ったり客演したりしてるし、デップーは続編の話出たし便器頭もドラマの主役になったし秋月だって役者は盗みも痴漢も不貞も作品の私物化・不正利用もしてねーしいいヤツじゃねーか! 比喩が気に食わなかったにしてもそんないきなり毒液ぶっかけて来るのはいくら何でもやり過ぎじゃねぇか!? 笑って許せるレベルの悪戯したマンチカンをミネストローネに放り込むより非人道的だろうがよォ!」
いやまあ、あいつ敵対してた猫を池に放り込んでたけども(尚ジッキンゲンは他三名共々現在屋敷で療養中だ。ま、あいつに関しては精々風邪引いて腹壊したぐれーのもんで、セレスティア、フィロミーナ、チャールズ老に比べりゃ明らかに軽傷なんだが)。
『……――』
「なんだよ、一度は許したけどなんだかんだまた許せなくなったってだわぁぁぁあああ!?」
『……――』
「あ、っぶねーなその蛇の頭引っ込めろよってか躾しっかりしろお前から生えてるヤツだろ!?
――まあお前の気持ちもわからなくはねぇよ!? 俺がお前の立場だったらあんな謝罪程度ですんなり許してあっさり友達の感覚で、あたかも五年十年来の仲良しこよし同級生が如く話し込めるかってったらそんなことねーだろうし――『……』――ざわあああああああ!?
あっ、がは……ハサミこえぇぇー……――なぁ! そりゃ普通は何かしら思うところがあるだろうよ!
だとしても普通なんか言葉ぐらいかけてくれたっていいじゃねえぎゃわっひぃぃいいいい!?
あっ、足っ、そんな先尖らした丸太みてーなん振り回すの止めろって危ねぇだろ!?
――と、にかくっ! いきなり無言で殴り掛かってくるこたーねぇだろっつってんだ――」
『……――』
「づおおおおおおっ!? と、あ、危ねぇ―ッッ!?」
俺は必至で説得を試みるが、対する北川はそんなもん意に介しちゃいねえとばかりに蛇の頭を嗾けたり、カニのハサミや脚を振り下ろしてくる。
なんだ、もう俺の言葉なんて聞いちゃいねえか、或いはそもそも、俺が誰なのかさえ失念したみてーな有様で、いっそ完璧に殺す気満々……幾らこっちに非があるとは言えこんなん流石におかしいじゃねーか。
「よぉ~北川殿ぉ~お前さんどうしちまったんだよったくよォ~」
『……――』
それでも信じたかった。大した理由なんてありゃしねえ、感覚的なもんだがとは言え、話しててどうにも『こいつには何かある。こいつは雑に扱っちゃいけねー相手かもしれねえ』って思い始めてたんだ。だから対話を試みたが……結果は無反応。どころかあくまで敵意剥き出しとばかりに蛇の頭は鎌首をもたげ、カニのハサミもガチガチと音を立ててやがる。
とすると最早、残された選択肢は一つ……覚悟決めて腹括るっきゃねーってこった。
「ああわかったよ、戦るしかねェってんなら要求通りに戦ってやらァ……」
『――……――……』
向こうは何だかわけわかんねー強化状態のようだが、幸いパワーアップならこっちもいい感じに準備が整っている。
あともう少しばかり暴れりゃこっちも恐らく"お相子"だ。
(U ・ω・U)<なろう版はアカウント無くても感想書ける&感想で要望とか書くと作者が聞き入れるかもしれねーからみんな感想は可能な限り書こうな。
『……――』
「延長戦、開幕だぜ……!」
相変わらず無言・無表情の北川は正直不気味だが、気持ちで負けちゃいけねーと思った俺は可能は心を奮い立たせ状況を楽しもうと試みる。病は気から……反偽薬効果ってんだったか? そんなもんに飲まれてちゃ勝てるもんも勝てなくなる。逆に偽薬効果で勝ちに行くぐれーじゃなきゃいけねえ。
『――……――……』
「オオオオオアアアアアアッ! ブッ壊れろオオオオオオッ!」
となると何より勢いが大事だ。ってコトで俺は北川目掛けて殴り掛かる。
振り下ろす左腕、如何にも安っぽくわかりやすい軌道の、防御してくれと言わんばかりのハンマーパンチ。
「――オオオオオオッ!」
『……――』
「ぬうぐっ!」
ともすりゃ当然、北川はカニ足で俺の左腕を弾き飛ばす。
巧いこと向きを調整し、強固なカニ足の一撃を左腕に残った防具のパーツで受ける。
必然、カニ足に押し負けて拉げ、潰れた鎧は壊れて外れ、同時に俺は体内へ力が満ちるような感覚を覚える。
全身の毛が逆立つような、ゾクっとした興奮感……いいぞいいぞ、計画通りだ。
(あと四か所……スグんでもぶっ壊して一発逆転だ!)
次回、アーネストVSナガレ決着! 果たしてアーネストはしくじりの埋め合わせをしつつ守衛の務めを果たせるのか!?




