壮絶雙畜、闘争暴走
なに害獣? 「かんなすきーがエラーで動かないから閲覧数が落ちないか心配」だって?
逆に考えるんだ。「蟒蛇ロクショウの方に任せてXだけでどれだけ閲覧数が伸びるか実験できる」と考えるんだ。
俺の名前は、北川ナガレ。
「大人しくしてなさぁぁぁ――
「悪いようには、しないか――
『 吹 っ 飛 べ ェ 』
「「ぎょぼわああああ!」」
迫り来る下品な身なりの痴女どもをグレネードランチャー"強欲警官"の砲撃で蹴散らすゾンビの化け物"死越者"だ。
「ゴミに過ぎねえてめえらはっ……ゴミのようにくたばりやがれぇ!」
「ぶぼぎょあ!?」「ぐべっ!?」「ぎゃばらあっ!?」
少し離れた位置では、拘束具風の鎧(?)を身に纏った人狼アーネストが容赦のない質量攻撃で淫魔どもをシバき回してやがる。
「んふふふふ! いいわよぉ~!」「そうでなくちゃ面白くないわぁ!」
『生臭ぇんだよ近寄んなブスどもが! とりまアニサキス駆除されて、カルパッチョんでもなっとけぇ!』
「「ぎょぼばべばびゃびびびびぎぎゃぎぎょげええええっ!?」」
ともすりゃ俺も負けてらんねーってことで、スタンガン"瑠璃色電竜嬢"を組み込んだ金砕棒"暴虐小僧"で半魚人の二人組を殴り飛ばす。
目下マインデッド邸の広大な庭園で勃発した革命派淫魔軍団との戦闘は激化の一途を辿っていた。或いは何なら俺個人は"苦戦を強いられていた"と言っていいかもしれねえ。
というのも俺自身、当初は相手が淫魔の群れと聞いたんで『魅了からの交合勝負が主戦法なら単純な戦闘能力は低めか、身体能力が高くても戦闘技能そのものは素人に毛が生えた程度だろう。そもそも魅了が通じなきゃ強引に殴り倒しときゃどうにかなるだろう』と油断していた。
実際蓋を開けてみれば、鬼や竜種、獣人なんかがベースになってそうな一部武闘派連中とかの例外を除けば殆ど大体俺の予想通りの雑魚ばかり。
「っへへへぇ~♪ おにぃ~さぁ~ん、そんなダサいカッコしてキュークツじゃなぁい? ウチときもちイイコトしよ――
『初対面で他人の服装をダセェとか抜かしてんじゃねェこのクソガキィ!』
「ごぎょばああっ!?」
一先ず『これならまあそれなりに余裕じゃね?』ってな軽いノリで、手始めにすり寄ってきたチャラいの――容姿は所謂黒ギャル系、歳の頃は十五か六ほど――を一発ぶん殴ってみりゃ面白いように吹っ飛んでいきやがる。
「んもほぉ~❤ ボクちゃぁ~ん、ママがきまちたよぉ~❤」
続いてやってきたのは角と尻尾の生えた裸エプロン姿の大女。
やたらめったら乳ばかりデカく(推定胸囲は一メートル半ほど)、角や耳の形、手足を覆う毛皮の色と柄からして乳牛系の獣人か何かだろうか。
手元のラトル(振ると音が鳴る乳児用玩具のアレ)と性玩具、また口ぶりから察するに中々尖った性癖を持ってるようで、その手のマニアにはたまらんのだろうが……生前で、かつマナミと付き合ってねえ頃ならいざ知らず、死して道徳のねえ屍と化したこの俺にしてみりゃ単なる気の狂った変態でしかねえ。
「んもぉ~❤ ボクちゃんてばダメじゃなぁ~い、女の子には優しくしてあげなきゃ――」
『誰がボクちゃんだ母親ヅラしたつもりかラリった家畜風情がァ~!』
「ぁぁぁあああぁぁああああばべらっ!?」
よって角を掴んで投げ飛ばし、頭から地面に叩き落としてやる。運悪く柔らかい土の上だったが、それでもかなりの力で投げたし頭蓋骨が無事でも頸椎損傷で半身不随は確定だろう。
その後も、やれ肌の青いヤツやらなんか犬猫っぽい奴ら、果ては下半身がクモやサソリっぽくなってる奴らに頭へ花咲かせた植物っぽい緑色のヤツ、土くれやスライムが女人化したようなヤツ等、多種多様な構成員どもが押し寄せてくる。
「「「「「あなたも仲間になりましょぉぉぉ❤」」」」」
『チッ、腕がねえから数で押し切ろうってか』
『中身のないヤツが数を誇る』とはよくぞ言ったもんだ。と言ってこの格言を残したかの"静かなる虎"の意図とは聊か違うだろうが、まさに革命派の奴らを体現する言葉と言っていいだろう。
(だが数しか誇るもんのねえヤツは……数の故に敗北を喫する!)
てなワケで俺は上手いこと奴らを誘導しつつ武器を準備する。
『一先ずこいつだ……食らえィ!』
愚かにも一塊で動く奴らに向けられた"強欲警官"の銃口から放たれたるは、通常の榴弾より若干細身の黄色い弾頭……
「えっ、なにこれ――ぎゃあああああっ!?」
「ま、眩しいっっ!」
「目が、目があああああ!?」
群れをなす淫魔どもの眼前で炸裂したそれは、強烈な閃光で奴らの視界を奪いつつ、同時に放った巨大なワイヤー網でもって淫魔どもを残らず捕獲する。
「ちょっ!? 何よこれぇ!」
「痛っ! 押さないでってば!」
「何よあんたこそ!」
「ぐぎぎぎぎ! ああもうダメだわ、ビクともしない!」
「どうなってんのよこれ!?」
これぞ新たに開発された"強欲警官"専用特殊弾、名付けて"美男巡査"。強烈な閃光で敵を無力化しつつワイヤー網で拘束する代物だ……ってだけなら幾らか平和的に思えるかもだが、奴ら如きにそんな人道的な武器を使ってやる道理はねえワケで……
「痛ったぁっ!?」
「ちょっと五月蠅いわねビックリするじゃないの!」
「一体どうしたのよいきなり大声出して!?」
「いやその、なんかこの網めちゃくちゃチクチクしてて凄く痛いのよ!」
「づっっっ! ほ、ホントだわ……しかもなんだかどんどん引き絞られてるような……!」
「いやああああ! 早く早く破ってよぉ!」
「このままじゃ幾らあたしらでも流石にヤバいかもじゃない!」
「うっさいわね! そんなのわかってんのよ! 待ってなさい、こんな網なんて私のハサミで……切れなぁぁぁいっ!?」
"美男巡査"は通常の榴弾とは別ベクトルの破壊性能を突き詰めた武装だ。閃光にこそ直接の殺傷能力は皆無だが、網を構成するワイヤー一本一本の表面には細かくも鋭い刃が無数に生えていて触れたもんを切り裂く凶器になる。加えて端々に備わる壁面固定用のアンカー部分には網を引き込み中の標的を圧迫する為の巻取機構が備わってるから時間が経つにつれて以下省略ってワケだ。
(奴らはほっときゃ細切れになって死ぬだろう。他の連中を始末するかー)
といった感じで、特に苦戦するでもなく順風満帆に上手く行ってる……そう信じて疑わなかった。
ましてそんなんだから、それが単なる思い込みに過ぎねえって事実を、俺はまだこの時知る由もなかったんだ。
「エロいことしか考えらんなくしてやるぜぇ! なぁに怖がるこたあねえ、天井のシミ数えてる間にゃ終わらせてやっからよぉ!」
『屋外に天井があるかボケぇ……二刀流の虫ならてめーはタガヌラー、串刺しにして内臓から焼いたらァッ』
「ぐっぶぉぇ!?」
相対するは鈍い黄金色の外骨格を持つ甲虫型の構成員……ゴツい体格で二刀流、これで熱燗が好物なら実質ほぼタガヌラーってコトで、スパイラルバレードに見立てたプラズマ・ノダチで奴の柔らかそうな腹を突いてやる。
宛ら牙突か紅鶴拳……ってのは烏滸がましいにしても、これまで幾度となく屍人どもを貫いてはそのまま葬ってきた一撃だ。当然この武闘派気取りの虫けら淫魔とて貫けねえハズあるめえと踏んでいた……だが、
「ぐあがあああああっ!?」
(なんだっ……!? 刃が、刺さってねぇっっ!?)
刹那、俺の目に飛び込んできたのは余りに信じ難い……目を疑わずにはいられねえ光景だった。
ノダチの刃が、虫けら淫魔に刺さってねえんだ。例えるならクッションやトランポリンに棒切れを突き立てたような……肥満でもなんでもねえ奴の腹肉に、鉄をも熱で溶かして切り裂くプラズマ・ノダチが阻まれる……当然困惑した俺だが、ともあれ構わず刃に力を込める。
『っづるおらああああああっ! ブチ貫かれろーっ!』
「ぐごあがっ!? ぎ、がああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁxっ!」
だが結局ヤツを貫くどころか出血させることすら叶わず、ただ無意味に遠くへ投げ飛ばしたに過ぎなかったんだ。
(クソッ、どういうことだよ……!?)
正直信じ難い展開だったが……こんなのはまだ序の口に過ぎなかった。
「やっほ~おにーさぁ~ん? どーしたのさぁ、そんな浮かない顔してぇ~」
「あらあら、うふふふ……ボクちゃんってば、目の前の現実が受け入れられないのねぇ~❤」
(なに……? こいつら、生きてっっ……!?)
最序盤でブチのめした二匹の他、今まで殺したハズの……殺したもんと思い込んでた阿婆擦れどもが、どういうワケだかピンピンしてやがったんだ。
(一体何が、どうなってんだよっっ……!)
次回、北川ナガレまさかの大苦戦!
果たして重傷を負った筈が何事もなかったかのように動き回る革命派構成員の謎とは!?




