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デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者諸共殺されて腹立った俺は、最強ゾンビになって美人悪役令嬢とかイケメン人狼なんか連れて復讐序でに無双しようと思います-  作者: 蠱毒成長中
CASE3 激突、マインデッド邸守衛隊五人衆!

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謝罪する勇気と、赦す強さ

『自分の非を認め、謝罪する』

其れは極めて初歩的且つ容易な行為であり乍ら、

同時に極めて高度且つ困難な行為でもある事実を、

私は先日学ばされた。

特に、確固たる信念の故に己の正義を絶対と信じて疑わず、

悪を打倒しての勝利へ執着する傾向にある者達にとって、

其れは正しくこの世の何をも上回る難関其の物であろう。

或いは、己の非を認め謝罪する行為とは、

凄まじい勇気を要するのかもしれない。

その勇気を持てぬ者は、

己の非と向き合えぬ弱さを持ち、

然し其れを恥じてひた隠しにすべく、

敵たる悪を見出し襲い掛かり、

群れで強者を装うのだろう。


そしてまた、謝罪に匹敵する難関があるとすれば、それは何かを赦すことである。

何らかの非を認め乍らも、それを糾弾せず許す……

怒りも憎しみも全てを押し流し、すべてを赦す……

或いは怒りや憎しみといった負の感情さえも許す……

其れはヒトにとってあまりにも困難極まりない行為であり、

故に何かを許せる者はそれだけで強者と為り得るであろう。

 俺の名前は、北川ナガレ。


「――はい。ええ。本当にもうなんて謝罪すりゃいいんだか――」


 浮遊大陸での激闘を制し地上に戻ってきて通話中なゾンビの化け物"死越者エクシーデッド"だ。


《気にするなって言ってるだろ? 反撃地獄鋸キックバッカーを駆っての戦いも見事なものだったじゃないか。有用なデータも得られたし、出資者の楠木さんも大変満足しておられたからね。曰く『機体に選ばれたみたいに完璧な操縦だった』『私の思い描く反撃地獄鋸そのものだった』そうだ》

「そうですか? そりゃ光栄ですが、とは言えあんな派手にぶっ壊しちまったらやっぱ罪悪感がどうにも……」

《それは此方の不手際だよ。元々設計通りに行けば自己修復機能が作動していただろうから、そもそも武装が使用不能に陥るなんて事態まず起こり得ないハズだったんだ。そこも今後の課題として改良に取り組んでいくさ》


 電話の相手はお馴染み(?)エンジニアの早川さん。話題は反撃地獄鋸の事後処理関係やら今後の装備手配について等、わりかしいつも通りの内容だ。


《ともあれ一先ず反撃地獄鋸の回収はこちらで済ませておくよ。当初は回収作業の序でに君を地上まで連れて行く予定だったが……》

『そんな感じで想定してたんですけどね〜俺もね〜。電話しようとしたらジジイにいきなり呼び止められたんですよ』

《ジジイというと、あのチャールズって怪物亀だね? まさか生きてたなんてな。最後に見た中継映像では激しく吐血しながら倒れていたし、流石に死んでしまったものと踏んでいたが……》

『ええ、俺も同意見です。幾らある程度軽減されてようが体内をドリルで貫かれたってんなら流石に助かるめぇと思ってたんですが、曰く「爬虫類の化けモンなだけに結構しぶとい」そうで』

《確かに爬虫類の免疫や治癒・回復能力は鳥類や哺乳類に比べずば抜けて高いとはよく聞くが……それで、彼はなんて?》

『いの一番にまず負けを認めながら謝罪して来まして、まあでもなんか色々事情とかありそうなんで軽く赦したんですよ。そしたらまあ詫びだつって、あいつ自身限界だろうにわざわざ転移魔術で地上に帰してくれて』

《やけに丁寧な対応だな……リビングデッドだからってだけでろくに話も聞かず殺そうとして来た奴らとは思えない律儀さじゃないか》

『全くで。ともあれこれで厄介事は粗方片付いたハズなんで、サッと用事済ませて早いとこそっち戻りますわ』

《あぁ、うん。何にせよ無理しないようにね、自警団も最近は幾らか強くなってるし、多少の問題なら対処できるから……ゆっくりしてきたらいいんじゃないかな》

『ありがとうございます。ま、言うてそんな長居もしないとは思いますがね〜』


 なんて具合に通話を終えて、時刻は午前三時間半頃。さあ屋敷に入るかと一歩踏み出す俺だったが……


「よぉ、お客人」


 ふと聞き覚えのある声に呼び止められる。無礼なんだが丁寧なんだがよくわからんその声の主は……


「屋敷へ御用がおありなようなら、案内させて頂くぜ……」


 実に十数話ぶりの登場となる執事姿の狼男、守衛頭アーネストに他ならねえ。


『なんだぁ、エレぇ態度の変わりようじゃねーか番犬くん? 一度はガチで殺しにかかった相手だろうによ……どういう風の吹き回しだぁ?』


 嘲笑気味に言ってやる。これでヤツの態度が上辺だけならキレて襲い掛かって来るだろうが、さて実際は……


「その節は誠、申し訳ねぇっっ……!」

(なんだと……)


 狼男が見せたるは予想外も予想外、全身全霊渾身の……五体投地ドケザっっ!

 まさか過ぎる展開に俺は当然面食らい絶句するも、ヤツは構わず謝罪し続ける。


「謝って済む話じゃねえのは億も承知だが、

 それでも謝らずにはいらんねぇ……!

 本当に、心から謝罪申し上げさせて頂く……

 此の度は真っ事、

 大変っ、

 本っっ当に……申し訳ねぇっ――

 いえ……申し訳、御座いませんでしたっっ……!

 当方にできる償いであれば、何なりとお申し付け下せぇ……!」


 態度から察するに形式的なその場凌ぎの謝罪じゃねーのは明らかだ。こういう時、昭和や平成のまともな主役ならこの狼男をイビったり無茶振りしたりと正しく躾けてやれるんだろうが……


『取り敢えず顔上げろ、敬語も要らねぇ』


 生憎と俺はまともじゃねーから、甘やかすような対応しかできねンだワ。


『やり合ってる最中薄々感付いてたんだ、お前らなんか事情があって仕方なく俺と喧嘩してたんじゃねーか、俺に対する偏見丸出しの態度はお前らの素じゃねーんじゃねぇかってな。その時は単なる憶測だったが、お前の態度見て事実マジなんだなって確信したよ』

「……!」

『果たして俺にそんな権利なんざなさそうだが……今回お前らに襲われた件は水に流すよ。その代わり教えてくれ、お前ら一体何があった? そもそもお前ら何者だ? 俺が行き掛けに貰った資料には「守衛隊」なんて単語さえ無かったンだがな……』

「……畏まりま、じゃねぇ……わかった。寛容な対応感謝する。要求通り、質問に答えさせて貰おう……」


 ゆっくりと立ち上がったアーネストは、薄暗がりの庭園を進みながら訥々と語り始める。


「まず俺達について、あとこの屋敷について説明した方が早えか」

『ああ頼む。俺の資料は情報が古いかもしれんからな』

「その資料ってのの出処も気になる所だが……まあいい。

 改めて自己紹介させて頂こう。

 俺の名はアーネスト……アーネスト・ルプス="ヘイズィムーン"・コールレイン。

 ここマインデッド邸の警護や荒事対応を担う守衛隊のリーダー"守衛頭"の三代目だ」

『ご丁寧にどうもMr.コールレイン。俺は北川ナガレ、泥得サイトウ地区の自警団でゾンビを刈りながら生計を立ててるモンだ』

「サイトウ地区の自警団でキタガワ……まさかお前さん、噂に名高い"ゾンビ狩りベイダー"の北川か?」

『……なんだそりゃあ?』


 アーネストの口から語られた素っ頓狂な名称に、俺は思わず絶句しかけた。

 顔面を覆う狸の面はニヤけ面だが、その内側じゃ困惑の余り形容しがたい表情を浮かべてたことだろう。アスキーアートで例えるなら多分 (゜々。)? ←こんな感じ。


「知らねえのか。今ネットでわりかし話題になってんだぜ、『ライトセーバーでゾンビをぶった切る仮面にコートの怪人がいる。そいつはドヤ街の泥得サイトウ地区に住み着いてて、仲間からはキタガワって呼ばれてるらしい』ってよ。それ以外にも都市伝説界隈じゃ色々憶測が飛び交っててよ。

 武器のお陰でやれジェダイだガンダムだファイズだなんだと色々あだ名がついたようなんだが、仮面でコート着てて悪役っぽいから「ゾンビ狩りベイダー」が定着したんだとよ」

『マジかよ。そんなことになってたのか……』


 ネット界隈は生前から結構入り浸ってたし詳しいつもりだったが、まさか俺の活動がそんな風に解釈されてたとは何とも驚きだ。つかベイダーって……まあいいや、ザクだかゾムだかPOKAだかなんかそのへんのよくわからんモビルスーツに例えられるよりゃずっといい。


「まあその辺り知りたきゃ検索してみりゃ案外出ると思うぞ。俺もつい昨日か一昨日知ったんだが早くも結構なバズりようで、ニコ百とピクペにはもう個別項目ができてるって話もある」

『ウッソだろ。よりにもよって民度ゴミのニコ百と誤情報羅列がデフォのピクペかよ。なんか来月ぐらいにはなんか適当なデマ書かれてんじゃねーか? 「ルーカス・フィルムがディズニーとの全面戦争に向けて生み出したクローン兵士だ」とかってよ』

「いや確かにピクペって誤情報多いけどそんな酷くもねーだろ」

『ニコ百の掲示板でもボロクソ叩かれそうだよな。「幾ら有害で話が通じないとはいえゾンビもヒト型ブヒッ! それをあんなに容赦なく斬り捨てて正義のヒーロー気取りとかイタいでブヒッ! あんなのただの偽善者ブヒッ! ヤツを肯定する連中も同類ブヒィィ〜ッ!」とか』

「今どきそんな分かりやすいクソヲタ豚いねーって」

『そうかな。まあいいや。……それでMr.コールレイン』

「アーネストでいい」

『そうか。ならアーネストくん、君ら守衛隊とやらが普段から死ぬ気で守ってるこちらのお屋敷についてご説明願えるかな?』

「勿論だ。ええと……」

『北川でいいぞ』

「どうも、北川殿。

 さてそれでこのマインデッド邸だが……まあ名前通り偉大なるマインデッド家のお歴々が古くから守り続けて来られた豪邸だよ。

 代々家督を継承された当主様が敷地内の全財産をも丸ごと引き継ぐ形になってんだ」

『つまり俺が今からお会いさせて頂こうとしてる、君らのマスターとやらも?』

「ああそうだ。マスターことルージュ様もまた当代のマインデッド家当主であらせられるお方さ」


 聞けばそのルージュ様――もといフルネームをルージュ・クリステル・ブリュンスタッド・クロムウェル・ストリクス・アヴェーン・マインデッド――、紀元前よりこの界隈を裏から統治し、異能者や魔物といった社会の暗部に潜む人外どもを取り纏めておられる由緒正しき吸血鬼一族”マインデッド家”の末裔にして現当主だそうだ。

 それだけでも既にとんでもねぇ肩書だが、加えてなんと彼女は裏社会でも特に力を持つ人外組織連合“魔界二十三閥族“に名を連ねる大御所『月夜議事会』の最高幹部をも兼任し、更には表社会でも人間に化け実業家”百園ももぞのカーラ”として数多の事業を手掛けておられるってんだから驚きだ(他にも『月夜議事会』はフィオーナ店長が所属する淫魔三大派閥が一つ"適応派"とも仲良しで、何なら当主様と店長は同じ釜の飯を食った親友同士なんだそうだ)。


『そりゃこんなやけにデカい庭つきの大豪邸をお持ちなワケだぜ』

「歴史そのものは景教よりも長えからな。庭ほどじゃねーが屋敷もかなりデケェぜ。空き部屋が多いんで個人や企業に貸し出したりもしてる」

『規格外のデカさだな……そんだけデケーと使用人も多くて大変じゃねぇのか』

「まあな。最盛期は五十万人前後の使用人が雇われてたって記録があるし、文明発達に伴って設備の機械化が進んでからも千人を切るようなことはそうそうなかった筈だ。増改築も繰り返されてるしな。

 今となっちゃ技術面のインフレも進んだが、それでも六百人ぐれぇいるしな」

『五十万人からすっとだいぶ減った感あるけどそれでも多いなぁ』

「当主様の意向で月一回か二回ぐらいの頻度で新人が来たり辞めたりしてっから断言はできねーがな」

『とんだ入れ替わりの激しさだな。よっぽど狭き門なのか?』

「いやあ、門は広い方だろ。待遇だって破格だし、まともな労働者ならなんだかんだ馴染んで上手くやってくよ。ただ、わりかし社会からあぶれちまったヤツへの救済措置って側面が強いからかちょくちょく妙なのも入って来るがね……ま、そこは中途でも新卒でも変わらねーが」


 アーネストが語った所によると、妙なヤツってのにもピンキリいるようで、単に態度が悪いとか仕事ができねーとかそんな有り触れたヤツばかりじゃねえそうだ。


「YouTubeに動画上がってたりするじゃん、PCリフレッシュしろっつー指示をてめー自身リフレッシュして来いって曲解して二週間休んで沖縄行ったとか、コネ入社のバカが仕事横取りして自滅したとか。あんなんよく作り話だ空想だって言われっけど、マインデッド邸じゃそう珍しくねえ"現実リアル"だからな。なんだったら北川殿、俺らが当初お前さんに無礼な態度を取っちまったのもそういうヤベェ新人の仕業っちゃそうなんだぜ? 責任転嫁するようだがよ」


 なんとこりゃ驚きだ。百戦錬磨の守衛隊にそこまでやらすとは……一体何もんだその新人とやら。


『別に責任転嫁だなんて思っちゃいねえさ。五歳児や十歳児でもお前の発言が責任転嫁じゃねえって理解するだろうよ。……それより聞かせてくれねぇか、屋敷のために骨折って働く君らをそんな"やらかし"に駆り立てたひっでえ新人とやらの話をよ』

「おう、勿論そのつもりだが……悪ぃな、ちっとその辺り延期とさせて頂けるかい?」


 突如アーネストが見せた剣呑で気だるげな態度と意味深な台詞……その意味を、直後に俺は嫌って程悟らされることになった。


『……ああ、構わねえよ。そりゃこんな状況じゃ、延期も已む無しだろうさ……』


 未だ暗がりの庭園全域から発せられる無数の殺気……立ち止まり向き直れば、程なく"奴ら"が現れた。


「「「――――」」」

「「「「「…………」」」」」

「「…………――――」」

「「「「――……――……」」」」


 俺らを取り囲むように現れたのは、無数の人影……揃いも揃って角や翼なんかの幻獣っぽい特徴を持ったうら若く美しい女人みてーな……俗な言い方をすりゃ所謂"モンスター娘"ってヤツだろう。


(どいつもこいつも妙な恰好ナリしやがって……余程自己愛が強えナルシストか、でなきゃ男に媚びてっかだな)


 奴らの顔立ちや全体的な雰囲気は結構似通ってて、安直かつ下品極まりねえ恰好ナリをしてやがる。

 例えるなら労せず絵師の肩書と金が欲しいだけの"AI絵師"とやらが適当に量産した――奴ら曰く『心で描いた』――二束三文で売り捌くポルノ画像って感じだ。まともに性欲が残ってる男でもこいつらでヌけるかっつーと若干怪しいだろう。


『……アーネストくん、今質問いいかい』

「奴らのについてか? 言っとくが奴らは屋敷ウチの従業員じゃねーぞ」

『そりゃ良かった。あれが仕事着の部署とかあったらヤだなあって思ってたもん……で、奴らの正体は?』

「……お察しの通りさ。答えるまでもねーだろ」

『察した結果答えの候補が複数あって絞り込めねーから聞いてんだぜ』

「じゃあ当てずっぽうでもいいから言ってみろよ」

『あの容姿ガラ恰好ナリから察するに淫魔三大派閥系なのは間違いねえ。

 んでマインデッド邸の当主ルージュ様は適応派の重鎮フィオーナ店長と仲良しってんだから適応派は有り得ねえ』


 そもそも適応派の淫魔は往来であんな下品な恰好しねーしそれぞれみんな顔つきとか雰囲気違うしな。


『とすると掌握派か革命派かってトコなんだが……』

「どっちだと思うね?」

『革命派の奴らは三度の飯よりセックス好きでセックスは命より重いってスタンスだから態々攻めて来るとは考えらんねえ……つまり攻撃的な自己中が多い掌握派だ。違うか?』

「……残念乍らハズレだ。ありゃ革命派のバカどもだよ」

『おっとぉ、マジか。然し意外なもんだな、奴らセックス中毒でとにかく彼氏や旦那とヤんのに夢中と聞いてたんだが……』

「その評は間違ってねえが、奴らの特徴はそれだけかっつーとそうでもねえぞ」

『ほう、そいつぁ初耳だ……フィオーナ店長は革命派のことを、セックス中毒で女性上位主義者、世界を自分たちの思想イロで塗り潰そうとするクズどもとしか言ってなかったが……』


 まあいい。奴らの仔細に関してはまた改めて調べるか聞くかすりゃいい話だ。

 今優先して取り掛かるべきは……


『アーネストくん、また質問いいかね――』

「……奴らは敵だぞ」

『――ありがとよ。まるで心を読むかのように察しがいいじゃねえか。

 さてはお前、祖母が宮崎のどかだったりすんのかい?』

「宮崎のどか、って……また微妙に古いキャラ出して来やがって……別に心を読んじゃいねえよ。ただ何となく察しただけだ」

『そうか。まあ君の祖母があのクラス出身だとすりゃ、どっちかつーと朝倉和美か龍宮真名っぽいもんなあ。もしくは釘宮円か春日美空て可能性もあるが……。

 で、奴らの目的はなんだ? 何故こんな真似を?』

「……勧誘だよ。厳密には拉致ってのかもしれねーがな……」

『ほう』

「さっき言ったろ? 革命派やつらにはセックス中毒の色狂いって以外にも特徴があるってよ。

 その特徴ってのがまあ要するに極度の"独善主義"……てめえの考えに沿ったもんしか認めねえって腐りきった考えよ。

 んで奴らは自分らを優性新生物と呼び、この世の何物も自分らと同じ優性新生物になんねー限り不幸なままで、だから自分たちは外野連中をも優性新生物にして"救ってやる"のが正しいと信じ込んでる」

『ただのバカだな。五歳児や十歳児でもクソだとわかる』

「だろう? まあ優性新生物といっても全員が女淫魔サキュバスになるわけじゃねえ。奴らのお眼鏡に叶った男は容姿や年齢そのままに男淫魔インキュバスっつー、まあ名前通りのもんに改造されるんだ。まあこういう能力自体は派閥や性別問わず淫魔って種族そのものが生来持ち合わせてる特性らしいんだがよ」

『ファンタジーもんによくありそうな設定だな……ま、本作これファンタジーだからそういうのは当たり前っちゃ当たり前か。つまり奴らは屋敷の女をサキュバスに、男をインキュバスに改造しててめえの身内に引き込んじまおうってワケか』

「概ねそうだが……実のところそうシンプルとも言い切れなくてよ。ってのも奴ら、柘榴石目クソババア勝呂兼幸パラサイトバイブの影響で完全女性上位主義思想を拗らせてやがってよ、何かしら有能だったり個性的だったり、あと人間以外の種族のオスってのを全否定してやがるんだ」

『全部サキュバス系のモンスター娘にしちまおうってか?』

「まあそんなとこだな。奴らの主張内容としちゃ『有能・個性的、或いは人間以外の種族のオスは不幸な存在で、優性新生物のメスになんなきゃ救われない』とかってんだが」

『所詮は詭弁じゃねーの? 本音はてめーよりキャラ濃くて有能なオスが気に食わねえ、オスはメスより劣ってなきゃ嫌だってんで無理矢理メスにしちまおうってトコだろ』

「ああ、適応派や魔界二十三閥族の間でもほぼそういう認識で通ってるし、何なら革命派のそういうやり口に嫌気がさして組織を抜けてきた連中がまさにそう証言したって記録もあるからな」

『くっだらねえなあ。世界救済を目標に掲げる愛の使者とは名ばかり……てめえの思想で世界を支配したがってるクソの集まりってワケだ』

「そうなるな。……さて、そろそろ奴らが動き出すぞ。奴ら襲撃ん時は決まってまず取り囲んで動かず、辺り一面にてめーらの魔力をバラ撒きながらてめーの身体を見せびらかすんだ」

『めんどくせー奴らだな。なぜそんな回りくどい真似を? 一気に襲い掛かった方が楽だろうに』

「色仕掛けで堕とそうとしてんのさ。淫魔の魔力は即ち催淫物質フェロモン……更にそこへ品のねえナリをした美貌でも見せつけりゃ、並みの男や百合女レズビアンは骨抜きにされちまうからな。

 革命派の奴らは偽善者なだけに刃傷沙汰を嫌うし、無駄に風情や情緒に拘る気質もある……どつき合いよりゃ標的を無力化させ手籠めにすんのが趣味なのさ。ま、俺ぁ諸事情ワケあって奴らの魔力とかそういう魅了・催眠系のもんがまるで効かねー特異体質なんで特に問題ねーんだが……北川殿は大丈夫かよ?」

『ああ、心配いらねえ。言ったろ、淫魔の総大将と向かい合っても何ともなかったってよ。ありゃ適応派のフィオーナ女史のことでよ、リビングデッドなもんで性欲が死んじまってんだワ』

「ホッホホーゥ、そりゃ好都合だ。ならよ北川殿、こっからちっと俺の誘いに乗ってはくれねえかい」

『そいつは内容による……と言いてえトコだが、概ね察しがついてるぜ。「革命派のクズどもを一緒にボコんねえか」ってんだろ?』

「ご名答。んでどうよ、俺の誘いに乗ってくれるかい? 無理に強いるつもりはねえが、付き合ってくれるってんならそれなりに礼はさせて貰うぜ?」

『そうかいそうかい。なら断る理由もねえわなあ……丁度俺も連中は一度出血か骨折するレベルまでボコしときたかったしよ、自業自得乍ら作者の野郎がどこぞの大学教授か政府高官と思しき御方に「お前は文章が幼稚で語彙も皆無。察するに年齢は五歳か十歳か。被害妄想癖治してちゃんとした大人になりなさいね」とかボロクソにディスられたって聞いたんで正味わりかし機嫌悪ィんだワ……』

「そりゃヒデーな。確かにあの害獣野郎、動画サイトのコメント欄やSNSでしかイキれねー生産性皆無のイカレたバターパピー・ニチアサキッズ辺りに逆恨みで殺されても何ら文句の言えねえ、致死麻薬クロコダイルキメて死にそうなヤク中ばりに頭も日本語もおかしい年中被害妄想拗らせたド外道のアホとは聞いてるが……だからってそんな外道に態々絡んでくなんて、如何に善意と正義の心からとは言え高貴な立場のお方々としちゃ悪手だろうよ。

 加えて相手が誰で自分よりどれほど格下で、どんな正当っぽい理由があろうと正義面して悪口言っていい理由にはなんねーし、悪口の程度も高貴な立場にしちゃやけに低ィ……そりゃ主人公格のお前さんが腹立てるのも無理ねーし、何ならそれが当然ですらあるわなァ」

『そうだろ? 作者の野郎は「お前が気にするこっちゃねぇ、まず何よりてめえ自身の自業自得、非が十割こちらにあるとは億も承知。加えて向こうは高貴な上級国民様だ、何をしても許される以上報復していい筈がねえ」とは言ってたが、一応俺も奴の作品で主人公として順風満帆にやらせて貰ってるし、近頃は雀の涙ほどだがファンも増えてきた。丁寧で熱の籠った感想も貰ってる。先日のチャールズ老とやり合った回なんて投稿日のPV数が千件超えたの正直俺も嬉しかったしよ……』


 その件に関してまず感謝すべきは当然読者の皆様方であり俺はその方々……つーか要するに今このページを開いてくれてる画面前の君には足向けて寝らんねえし感謝してもしきれねー程だが、そもそも作品を書いたのは作者なんだから全体の三パーセントくらいは奴のお陰でもあるだろう。


『作者の野郎はどうしようもねーバカで救えねえゴミクズみてえな、それこそ毛ジラミやウジにも劣る最低最悪のゲボカス野郎だ。正直到底好きになんてなれやしねーが、とは言えこうして活躍させて貰ってる恩はあるし、最低限の敬意を払う余地も一応、無くはねえ。

 奴の作品で主人公やらせて貰ってる俺としちゃ、たとえ相手が王侯貴族や皇族だろうとヤツをディスられて黙ってられる程温厚でもねーワケでよ。勿論そいつと俺じゃ住む世界が違えから直に報復なんてできねーしするつもりもねーが……八つ当たりがてら、奴らン中の一人か二人でも捕まえて顔面で太鼓の達人ごっこでもしてやんねーと気が収まらねンだワ……』


 気付くと俺の手にはプラズマ・ノダチが握られていた。どうやら無意識に抜いて電源まで入れてたらしい……さほど使ってもねぇから電力はわりと残ってたハズだ。仮に切れたら別のに持ち替えるまで……思えば今回はロボ頼みだったし、持参しただけで使ってねえ武器や早川さんお手製の試作品だってある。装備の備蓄は十分だ。


「そうかよ。なら派手に暴れてやんな……もし困ったことがありゃ言ってくれよ、できる限り助けに行くから」

『オウ。ゾンビ以外でヒト型相手なんざあんま経験ねーから、ちょくちょく頼らせて貰うとするぜ……』


 痺れを切らし動き出す淫魔ども。その気配を察した俺たちは、背中合わせで奴らと向かい合う。

 俺の手にはプラズマ・ノダチと、強欲警官グリードポリス他幾つかの予備武装。

 一方のアーネストはというと、何時の間に出したんだか一見拘束具にも見える鎧っぽい装備を身体の各部に身に着けていた。武器の類は見えねえ辺り、どうやら無手ステゴロで戦うタイプのようだ。


『行くぜ、北川殿ォ! 気ィ抜くなよっ!?』

「おうよ、アーネストくんッ! 頼りにしてるぜぇ!?」


 かくして俺たちは、革命派のクソ忌々しい阿婆擦れ偽善者どもをシバき回すべく戦闘を開始する。

次回、革命派淫魔軍団VS人狼守衛アーネスト狸面死越者ナガレ


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― 新着の感想 ―
[良い点] アーネスト氏再登場! [一言] チャールズ老は紳士な方でござる。 そしてアーネスト氏再登場&詳しく書いてくださりありがとうございます(*´꒳`*) なるほど、3代目。 なかなか五体投地を…
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