灼熱の脅威、漆黒の絶望、即ち最終決戦の相手
平成期の女学生が主役やってる日常系アニメぐらいゆるい雰囲気から始まる最終戦。
本音としては決着までやりたかったけどこれで決着まで行くと間違いなく一万時超えるので泣く泣く妥協……
あと、文字タグで字を太くしたりデカくしたりする機能が使えればもっと迫力あるシーンになったかなあと思ってる。
その辺の利便性だけはクロビネガCGI(っていうかまろやか投稿ぐれーと)が唯一なろうに勝る点じゃねえかな、と。
今までのゴーレムはウルトラシリーズと古生物詳しくないと概ね殆どわかんない、どころかウルトラシリーズ屋古生物詳しくても今一よくわかんないレベルの奴らばっかりだったけど今回はストレートもストレート、めっちゃわかりやすいっていうか「そりゃ最終決戦ならそいつ出すよね」ってヤツだぞ。
俺の名前は、北川ナガレ……
『は……はは……やっ、たぜ……』
「ぐお、ぉぉおお……」
高性能すぎるロボット兵器"竜紋大英雄"の尊い犠牲によりほぼ奇跡も同然の逆転勝利(?)を掴み取った、諸方の世話になりまくりなリビングデッドの化け物だ。
「よもや、ここまで……これほどとは……全く驚かせてくれるではないか、リビングデッドよ……」
『ああ、そりゃどうもよぉ。こっちとしちゃあんたがあれだけ食らってまだ喋れるぐれー余裕あるって方がよっぽど驚きだけどなァ~』
「うむ、危うい所であったな……あの術式は我の存在そのものを魔力に変換し配下らと一体化させ意のままに操る術式故……寸前で中枢との接続を切っておらねば或いは無事では済まなんだやもしれぬ」
存在を魔力に変換とはまたとんでもねえ真似に及びやがる……。
「然し実際、我はこのように無事であるからして……リビングデッドよ、良ければ我の誘いに乗ってはくれぬか」
『内容によるなあ』
「では言い方を変えようか。最後に我と、一戦交えてはくれぬか」
『ほう』
「種目はなんでもよい、貴様が好きに決めてくれ。別に今までのような殺し合いでなくとも、勝敗の決まるものならなんでも構わぬ。
我も無駄に長く生きておる故、幾らか勝負事にも詳しいでな」
驚いたよなあ。『戦ってくれ』までは予想できたが『種目はなんでもいい』ってのは予想外だった。
『いいのかよ。お前さんまだゴーレム出せるんだし、何ならゴーレム抜きでも魔術やら踏み潰しやらで俺を殺れんじゃねえのかい』
「確かにその程度の余力は残っておるし、内心欲を言えば最後に控えし"切り札"たる配下を以て貴様と真剣勝負をしてみたいのが本音ではあるが……」
『あるが、なんだい』
「貴様の起動兵器は既に木端微塵であろう。機動兵器を持たず、ほぼ丸腰に等しい貴様を一方的に蹂躙するのでは、あまりに味気ない幕引きと思うてなあ」
『ほう、そうかい。なら心配はいらねえ。実はもう一機ロボが来ることになってるんだ。ただ仕様が特殊なもんで準備に時間がかかっちまってなァ』
「そうかそうか。それは好都合よ。我が最後の配下も強大な力を持つ反動から召喚に手間がかかるクチでな。この通り我も消耗しておるからして余計に時間がかかってしまうのよ。然し成る程、そちらも幾らか時間を要すのであれば丁度よいやもしれぬ……好かろう。では我が最後の配下を以て、貴様との決着を付けるとしよう……」
『宜しく頼むぜ。ウチのももう少ししたら来るハズだからよ』
〈◎皿◎〉<なんか緊張感ねーな……
「星海の深淵より母なる大地に降り立つは、"終焉"を連れし闇の悪鬼……
それらは侵略者であり、用意周到にして狡猾。音もなく忍び寄り防人らの矛をへし折らん……」
ジジイが召喚向上を唱え始めると同時、早川さんからショートメッセージが届く。
内容はこうだ……『代替機の準備が完了。一分後に到着予定』……願ってもねえ。
「なれど防人らは執念深く、母なる大地を守らんとする忠義の前に悪鬼は打ち倒されん。
されどそれこそ幕開けの合図。悪鬼劇団が千秋楽、演目"地獄"の開幕告知に外ならぬ」
詠唱に合わせてジジイの身体から陽炎のようなオーラが立ち上り地面へ流れ込むのが見えた。
板垣恵介の格闘漫画なんかで、強者同士が対峙してっと局所的に周りの空間が揺らいだりするような、あんな感じだ。
『半端ねえヤツが来そうだな……』
一方俺の方はというと、件の代替機どもが些か早めの到着となりそうで、実際こちらへ向かう何機かの姿が遠目に見え始めていた。
「演目"地獄"は黙劇也。台詞も歌もないその劇の、主演務めるはその名も"終焉"。
闇の悪鬼に鍛え上げられし、黙劇界の超新星。
その舞台衣装は宛ら甲冑、或いは甲虫の外皮が如く武骨にして頑強也。
また甲冑であるが故"終焉"の面は常に隠され、観客はおろか劇場関係者の多くもその素顔を知り得ず。
更にまた"終焉"は只管に寡黙也。黙して的確に、かつ淡々と芝居に励まん」
ジジイがそこまで詠唱し終えるのと同時、浮遊大陸へ遂に件の代替機が"揃う"。
軍用の大型貨物輸送機にヘリコプター、またそれらに空輸されてきたであろう乗用車や建設機械から、果ては軍用車両や列車に至るまで、その数実に十二台。
見た目も大きさもチグハグ、乗り物好きの男児が玩具箱から好きなのを選んで並べましたって感じのラインナップだが、総じて車体・機体には大掛かりな補強や修復……っつーか明らかな"改造"の痕跡が見受けられていて、何なら"古くなった乗り物を引き取って修理しつつ改造しました"ってのを隠す気もねえって有様だ。
(なんか好きだなあ、こういうデザイン。歪なのは確かにそうなんだが、その上で芸術性があるっつーかね)
製造工程を見学させて貰ったりで予てよりこの十二機に期待してた俺の率直な感想がそれだった。
(多分、その手の"乗り物マニア"が聞いたらキレるだろうがね……)
特にあの赤、青、黒、上半分鼠色・下半分空色の動力車四両……確かそれぞれ、2100系リゾート21地域プロモーション列車"金目鯛"(7両1編成全て普通車、1988年3月新造、定員321名)、同じく2100系リゾート21東京駅乗り入れ対応車"黒船"(八両一編成内二両グリーン車、1992年2月新造、定員380名)、観光列車"THE ROYAL EXPRESS"(8両1編成団体客専用、2017年8月デビュー、定員約1000名)のリニューアル元"アルファ・リゾート21"、あと8000系アロハ(4両2編成全て普通車全42両、1970年11月新造、2022年3月入線、定員161~204名)だったか。
改造されまくってて辛うじて原型は留めてるが構造の都合で左右非対称な見た目になっちまってるし、所謂"撮り鉄"とかいう奴らが見りゃ蒸気機関車よろしく脳天や耳鼻、果てはケツ穴からさえ湯気吹き出すほどにもキレ散らかすだろう。
何せ奴らときたら、きっかり時刻表通り線路に沿って動く左右対称な鉄道車両をキッチリ完璧に撮影する行為に心血注いでやがるそうで、位置や角度は寸分たりともズレてはならねえだとか、障害物は枝一本虫一匹たりとも許さねえだとか、鉄道写真への拘りはいっそ病的と聞く。
特に平成後期以後撮り鉄は狂暴化の一途を辿ってるって事例や調査報告もあり――然し一方、さる私大の出した疫学的観点からの統計分析によると撮り鉄の八割以上はルールやマナーを守る真っ当な穏健派らしいが――末期の過激派ともなると"いい鉄道写真の為なら家を何軒焼こうが人命を幾つ奪おうが無罪放免"と考えそうなのが少なくねえらしい……。
(まあともかく、これで十二機揃って準備完了ってワケだ)
勘違いしちゃいけねえが件の代替機、厳密にはまだ完成しちゃいねえ。寧ろこっからが本番だ。
「恐れ戦き刮目せよ。口を慎み席に就け。これより舞台の幕上がる。花形役者"終焉"主演、黙劇"地獄"の開演である。
大地を踏みしめ進むは"終焉"。阻むものみな薙ぎ倒し、撃ち出したるは火炎の砲弾。燃える大火はまさしく灼熱、太陽も凌ぐ超高温。
焦熱地獄は一兆度。亡者の骸は瞬時に燃え尽き、灰も残らず消え行くのみ。
さて大暴れの"終焉"なれど、"聖者"に行く手を阻まれん。紅と銀に輝く"聖者"の掲げる思いはただ一つ。
かの脅威たる"終焉"退け、或いは仕留めて滅ぼし尽くし、世に平穏を取り戻すのみ。
"聖者"は只管抗うものの、余りに相手が悪すぎる。まるで隙なき"終焉"に、苦戦を強いられ圧倒されん」
ジジイの詠唱が続く一方、俺の側に集まったマシン十二機もまた各々寄り集まっては変形し、身を寄せ合うように合体していく。
ある車両は真っ二つに分離し、またある機体は翼を折り畳み、更にまたある車両は内部に組み込まれた機関を剝き出しにして複雑に稼働しながら……導線が伸びて電極に喰らい付き、配管は絡み合い、部品同士が繋がり、マシン同士が接合され、それまで全く別のものだった、本来そうそう相容れず深く交わりもしないであろう巨大な機械どもが互いに互いを受け入れながら一つになっていく……
その絵面は地味かついっそ不気味、勇者シリーズだか天元突破だかの日本製ロボアニメなんかでお決まりの"わかりやすいカッコよさ"やら"ストレートな熱さ"なんてもんは微塵もありゃしねえ。
だがそれでいい。こちとら元々正義の味方なんてタチじゃねぇし、こういう合体シークエンスだってよく見りゃ味があってカッコイイんだ。
「苦闘激闘死闘の末に、“聖者“は”終焉”の手で討ち取られん。
最早大地はこれまでか。誰もが絶望せし時に、尚も諦めぬ防人ら。
携えられし弩の、その火矢即ち切り札にして、まさに必殺の隠し玉。
今まさに創り出されしそれが、遂に”終焉”へ放たれん。
防人の願い負い翔ぶ火矢は、遂に“終焉“へ突き刺さり、その身は爆ぜ散り滅ぼされん。
かくして”地獄”は終幕するも、人気が高じて再演されん。
再演に次ぐ再演は、主演"終焉"の名を知らしめん。
今や誰もが知る名優を、此度我が許へ招待せん」
ジジイの詠唱が佳境に入るのと同じく、十二機の合体も大詰めを迎えつつあった。
主だった変形と合体は概ね完了。その姿は聊か有機的な印象のある細身かつ異形の機械巨人って感じで、アニメや特撮番組のヒーローが乗り込むロボットってよりはSF映画に出てくる邪悪な機械生命体の化け物……具体例としちゃ実写映画版『トランスフォーマー』の敵キャラなんかを思い浮かべてくれりゃいいか。
……なに、『複雑な言い回しは受け付けねえ』『トランスフォーマーの実写なんざ評判悪いから見たことねえ』だあ? しょうがねえな。
そいつは所謂“スーパーかリアルか“で言えば“リアル“路線の生物めいたデザインをした巨大ロボで、体形はヒョロガリよりは細マッチョ……アングラ漫画に出てくるイカレた殺し屋か、格ゲーや格闘漫画にたまにいそうな"辺境生まれの薄気味悪いマイナー武術の使い手"みてーな印象だ。
表面の装甲はさながら金属製の外骨格、昆虫よりは甲殻類に近いだろうか。その割に頭は肉食獣……それもタヌキやハイエナみてーな、王道から外れ気味なイヌ科の頭蓋骨をメカ風味にアレンジしつつ中の空洞を埋めたような、そんなのをイメージしてくれりゃいい。
……これでまだ分かり辛いとか頼むから言うなよ? これでも極力わかりやすく纏めたんだから。
「名声赫赫好評嘖嘖、拍手喝采の出迎えを。
いざお出でませい、終焉爆炎熱演卿 トリリオン・デトネーション・バオロン」
≪――バォロォォーン……≫
一足早く詠唱を終えたジジイ。既にそこそこ疲れの見えるヤツの傍らに形成されたのは、白黒の外骨格とオレンジの発光器を持つ"ティラノサウルスとカミキリムシを8:2で混ぜたような化け物"こと、ジジイの"切り札"……その名も終焉爆炎熱演卿 トリリオン・デトネーション・バオロンだった。
(なんてヤツだ……隅々まで異質そのものじゃねえか……)
バオロンの見た目はまさに"異質にして異形"の一言に尽きた。
大まかにはさっき述べた通り"ティラノサウルスとカミキリムシを8:2で混ぜたような化け物"なんだが、まずその時点で意味不明だし、といってそれ以外の比喩が思い浮かばねえ。
もっと言うと全体的なフォルムはティラノサウルスに間違いねえが、それにしたって前足がやけにデカいし指の本数も多い。しかもヤツの頭は厳密に言うと上半分しかなく、下顎があるべき位置にはどういうわけか曲がりくねった銀色の角が、しかもご丁寧に内側へ牙替わりのトゲを揃えた状態で『さあ、これが下顎の代わりだ文句あっか』とでも言わんばかりに二本並んで生えている。
要するに蛇の下顎の骨みてぇになってるワケだ(蛇の下顎の骨は先端部が靭帯って筋肉繊維で繋がってるんだ)。その上鱗や羽毛は勿論、目鼻らしいものも見当たらねえ。
……とまあ、風貌だけでもかなり異質なんだが、加えて奴は挙動もおかしかった。
というのも、それまでの奴らが咆哮や唸り声を上げて怪物・怪獣らしく振舞ってたのに対し、ヤツときたらアマガエルの合唱ともアブラゼミの求愛ともつかねえ音を立てながら、くぐもった声乍らこともあろうに名乗りやがったんだ。しかも凡そ生物が出すとは思い難い電子音のオマケつきと来てる。
(……なんとも信じらんねえが、然しヤツの発言や今までのゴーレムの傾向を考えると納得できちまうんだから不思議なもんだ)
さてさて、ヤツの側の説明ばっかりになっちまったが……丁度こっちのも準備完了、マシンどもの変形合体も終わったってコトで、乗り込ませて頂くとしよう。
『さあ、行くかい?』
俺の問いかけに応えるが如く、背後のロボ――両腕で少し体を浮かせた、プランク風の姿勢をしている――の胸元のハッチが開き、そこから伸びたケーブル風のアームが俺の身体に絡み付きそのまま機体の内部へ引き込み……ハッチは閉じる。
『いい乗り心地だ。まさに機体と一体化したみてえだぜ……』
率直な感想を述べた俺はそのままロボットを操縦し、足より若干長めの両腕でもって――不自然に早い時刻に目が覚めちまった休日の朝みてーな感覚で――その身を起こし、立ち上がる。
【《ヴルゥガアア……バボァッ! ガッブラァ……ヴァォォン!》】
中腰の姿勢になった異形のロボ……そこに搭載されたAIは、俺っつー操縦者に順応すべくエンジン音みてえな唸り声を上げ……
【《ヴァガォォォンン! ヴァァァン! ブバガヴォォォン!
ヴァァーンッ! ヴァゥォーン!
ヴウウウウウウン!
ギイイイイイグ! ヴアアアアアアア! グアアアアアアアアッ!》】
名乗った。そう、名乗ったんだ。
大半の読者は『吼えたの間違いじゃないか』と思うだろうし、実際それは咆哮と言って差し支えねえが……ともかくこれがこいつなりの"名乗り"なんだ。
【『よぉぉぉ~し。ちゃんと自己紹介できたなぁ、偉いぞぉ~』】
「……!?」
名乗りの威力は思いのほか絶大で、さっきまで落ち着き払っていたハズのジジイも明らかに気圧されてくれていた。
【『よぉ~、チャールズお爺ちゃん! 有り難うよ、こっちの準備が済むまで律儀に待っててくれてよぉ! ホント、そこに関しちゃ感謝しかねえぜ!』】
「……き、気にするでない。元より我の要望を聞き入れてくれたのだ、その程度配慮するのが礼儀であろう。
し、然しその……それはなんだ? 貴様が乗り込み操縦している"それ"というか"そやつ"めは、一体……」
【『ああん? そんなん見りゃわかるだろ、俺の新しいロボだよロボ。アンタのバオロンと戦う為に用意して貰ったヤツさ』】
「それはそうであろう、そこは概ね理解できる。我が問うておるのは、貴様の乗り回すその機動兵器の名称だ。今までの代物と比べても輪を掛けて独特な見た目をしておるそやつ、名はなんと?」
【『ああ、名前? さっき名乗ってたんだが……
然し確かに音声周りが接触不良気味かなんかで発音が悪かったのは事実だな。
改めて教えてやろう。こいつの名は……――』】
【《ギイイイイイッグ! ヴバアアアアアアアッ! ガアアアアアアアア!》】
【『――"反撃地獄鋸"ってんだ。
名前だけでも憶えてってくれぇ……』】
反撃地獄鋸の登場~名乗りシーンまではだいたい実写映画版「トランスフォーマー:リベンジ」のコンストラクティコン(デバステーター)のイメージ。
……誰だ今「名乗りだけは大トトロがメイに吠えた場面じゃね?」つったヤツ。
おっさん怒んないから正直に申し出な。
……OK、全員思ったんだな。
なに?「正直いけないと理解しながら連想しちゃいました」?
いいさ別に。実際作者自身「これトトロやな……」って思ったし(反撃地獄鋸そのもののモデルはトトロどころかデバステーターですらないけどな)。




