七災一亀、大合体
竜紋大英雄、絶体絶命!? 合体ゴーレムの脅威へ如何にして立ち向かうのか
……ところでなろう以外のプラットフォームでなんか新作書いてみてもいいなって思うんですけどどっかお勧めあります?
(こんなとこで聞くなよ……)
俺の名前は、北川ナガレ……
≪一つとなった災厄は、その武力と邪気が故世の頂に立ち、民草虐げ敵を滅ぼさん。
即ち暴君、独裁者也。恐ろしきものを象りしその名は、災厄を取り纏め平伏させる極悪王……
今こそ君臨せん、混成暴虐邪畜帝 デスポティズム・ディノサウリア!≫
『合体してんじゃねーか……』
乗ってるロボが壊れかけっつー絶体絶命の状況下で敵にとんでもねー切り札を出される……まさに"泣きっ面にハチ"な状況に立たされてるゾンビのバケモンだ。
(月が出てやがる……まだ夜明けには遠いか)
別に今が何時だろうと関係ねえが、何か一つ、どんなにちっぽけな事柄でもいいから情報を頭に入れて脳を動かしておくってのは地味に重要だ。
『驚いたなあ、合体かよ。しかも術者自身まで合体に加わっちまって、そんなの実質変身じゃねえか』
≪貴様が機動兵器の操縦席へ乗り込んだのと似たようなものであろう。何もおかしな事はしておらぬ≫
『……ま、そらそうだわなァ』
≪……≫
『……』
多分お互い、それ以上話題が無かったからだろう……暫く沈黙が続いた。
そして、
≪――では、征くぞ≫
『――ああ、来いよ』
特段声を荒げるでもなく淡々と、けれど激しく壮絶な戦いの火蓋が切って落とされる。
〈◎皿◎〉<なんか作者のバカ曰く『ネットの記事参考に5W1H意識して薄っぺらくなくて貧相でもない戦闘描写書こうとしたけど無理だったので暫く従来通りのスタイルでいく』らしい……。
『っラァ! 食らっとけェ!』
戦闘突入後、俺は間髪入れずジジイ目掛けて光線を放つ。"収束闘気砲"……消耗のデカさから最大二発までしか打てない切り札級の大技だ。
正直、本来なら到底安易に使うような技じゃねえが……今は状況が状況だ。形振り構ってなんていられねえ。ボロボロの機体で逃げ回って負荷をかけるぐれーなら、自爆前提でもダメージを稼いでやろうとした。だが……
≪光線か……丁度よい、吸い尽くしてくれるわァ!≫
『なっっっ!?』
俺の予想は見事に外れた。直撃するか、さもなきゃ回避されるだろうと踏んでいた収束闘気砲は、こともあろうにジジイ即ちディノサウリアの一見脆そうな腹で受け止められたばかりか、腹の中央にぽっかりと開いたヒトデの口みてぇな"臍"に跡形もなく吸収されちまったんだ。
≪……これぞ森羅万象吸引禽の奥義にして異名"無差別的な食害"の所以、名づけるならば"アブソープション・ストマック"……腹部より展開した消化器官で火炎、電撃、光線、魔術等あらゆるエネルギーを吸収し無力化する……≫
『態々説明感謝するぜ……』
≪気にするでない。所謂"冥途の土産"であるが故になァ!≫
続いて放たれたのはプリシオソーのそれに匹敵しかねねえ規模の電撃だった。どうやら鼻先の角を発生源とするらしいそれを、俺は最大出力の絶縁障壁で防ぎつつ、片手間で本部の早川さんに電話をかける。
≪ぬぅ! またその障壁か! であればこやつでどうだァ!?≫
角からの電撃が止まったかと思うと、次はデカい耳から針状の光弾を機関銃よろしく繰り出してくる。しかもこの光弾、数が多いからなのか見た目の割に火力も高く、障壁を貫通せんばかりの勢いを誇った。
《もしもし、北川くん? どうしたの?》
『早川さん! お忙しい所すみません、代替機の件に関して確認しておきたいことがありまして』
《ああ、その件か……ごめん、もう少し待ってくれるかな。そっちの状況は空撮ドローンで把握してるから急がなきゃいけないのは承知の上なんだけど、なにぶん数が多くてね……》
『ああいえ、くれぐれもご無理はなさいませんよう。つーかその……こっちの状況把握してるってマジっですか?』
早川さんの思いがけない発言に俺は戸惑いを隠せなかったが……
《気を悪くしないでくれ。こちらにも事情があるからね……。まずロボット兵器の開発は僕個人のみならず多くの企業や研究機関の方々が合同で行ってる事業だし、出資者からの要望もあって結構無茶しなきゃいけないから慎重にならざるを得ないんだ。
今回君にロボを貸与させて貰ったのも試験運用としての側面が強いし、実戦でどう動くのか、設計通り上手く機能するのか、不具合はないかとか色々確認しなきゃいけなくてね。
そうなるとやっぱり中継映像で確認した方が手っ取り早いし、出資者もロボットの晴れ舞台を見せろって五月蠅かったからまあ丁度いいかなあ、と》
『いえいえ、お気になさらず。つかこっちこそすみません、そんな貴重で高価なもん二機もぶっ壊しちまって。大英雄がボロボロってだけでもヤベェのに、総理大臣なんて木端微塵ですしなんて謝罪したらいいか……』
《なに、構わないさ。極論だが機械は傷付き壊れるものだからね。壊れることを前提に、壊れない作り方や壊さない扱い方を模索していく……そのための試験運用だ。今回、君のおかげで既に数多くの実戦データが手に入った。どれも機体の改良や今後の技術開発に欠かせない貴重なものばかりだ。戦う様子を中継で見せた分、出資者も納得するだろう。それもこれも全部君のおかげだよ、北川くん》
『……恐縮です』
《謎数多武闘派総理大臣は元より、竜紋大英雄も既に十分な実戦データが取れた……機体は捨ててくれて構わない。危ないと思ったら早く安全な場所へ逃げてくれ》
『……わかりました』
それは技術者っつー裏方なりの、信念と覚悟の籠もった一言だった。今まで浮遊大陸の様子をずっと中継で見てたってんなら、きっと早川さん達も辛い思いをしてただろうことは想像に難くねえ。何せ莫大な資源と時間を費やして作り上げたハズの最高傑作が、こうもあっさり一方的にやられちまってる現実を叩き付けられたんだ……ショック受けねぇ方がおかしいってもんだろう。
正直俺自身『下手な操縦しやがって』と怒鳴られるか『貸してやった恩を仇で返すなんて』と軽蔑されるだろうと思ってた。だが実際、彼から帰ってきたのはあまりにも寛容過ぎる言葉で……だからこそ俺は改めて決意する。
(勝てなくてもいい……相打ちに持ち込むか、最低でも深手負わせてやらァッ!)
どうせこの機体も長くは持たねえ。ならド派手に散って締め括りとしようじゃねえか!
≪――……ぬぅ、いかんな。打ち止めか≫
丁度よく、耳から打ち出されていた連射式の針状光弾は一旦打ち止めとなったらしい。
(となりゃその好機、逃す理由があるわけねェ!)
≪甘いわァ!≫
意を決した俺は障壁を解除し榴弾を放つも、右腕の大鎌で器用に弾かれた挙句間髪入れずに実は鎖付きで伸縮自在だった左腕のモーニングスターが襲い来る。
『チィッ!』
これで弾かれた榴弾がヤツの手元で炸裂してくれてりゃ良かったんだが、手元で起爆しないよう器用に弾いてんだからタチが悪い。
ともかくあんなモーニングスターなんぞ食らったら一溜りもないんで跳躍にジェットの推進力も併せて背中を飛び越え背後に回り込む。ヤツの背中は旧復元図のステゴサウルスよろしくトゲだらけ……合体前のゴーレムが両生類っぽくもある見た目だったからか妙な粘液も滴っていた。察するに十中八九有毒、迂闊に触れれば生身はもちろん金属製の機体だってどうなるかわかったもんじゃねえ。
『――っと!』
≪背後を取った程度で調子付くか!≫
『づおわっ!?』
振り向かなきゃいかん以上僅かでも隙ができるだろうと踏んでたが、見通しが甘かった。
ジジイはこちらに向き直るでもなく、細長い尾を鞭の如く振り回したり、或いは先端に生えたこれまた長い毒針でレイピアかエストックみてーな刺突攻撃を繰り出して来やがった。
≪ソイや! せイヤ! そウら、っとぉ!≫
『ぬお!? ぐんぬ!? ぎぉあっ、とわぁー!?』
しかもその狙いが正確無比ったらねーんだからタチが悪い。機体損傷が皆無、もしくは軽微なら多少食らってやっても良かったが、限界ギリギリなんで回避に専念しなきゃならねぇ。
(だがこの回避時間をも俺は活かすっ!)
俺は回避に専念する傍ら、僅かな隙間の時間を使い大英雄の隠し玉を準備しにかかる。
例えるなら高速道路を走る車の運転席でスマホの地図アプリを確認しながら飯を食うドライバーみてーなもんだ。一瞬の油断が命取りになる危険極まりねえ行為だが、そうでもしなきゃこの化け物ジジイを相手取るなんて夢のまた夢だろう。
(よく言うだろぉ~? 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」「枝先に行かねば熟柿は食えぬ」ってなァー!)
その後も俺は必至でチャールズ老の攻撃を避け続ける。
≪いい加減しつこいぞ、往生せいッ!≫
『ほざけ! リビングデッドなんだからしつけーのは当たり前ェだろッッ!』
≪なれども、限度が、あるであろうがァー!≫
『やっかましいわ! 文句言うぐれーなら手ェ抜かずちゃんと相手と向かい合って戦え!』
程なくして……運よく状況が進んだからだろう、隠し玉の準備は想定より早く完了した。
あとはいい感じにジジイへ接近しつつこいつを作動させりゃそれでいい、ってワケで……
『――っっダァァーッ!』
≪――ぬ、うぅん!? 何ぃ!? いきなり接近だとぉ!?≫
『あばよ、ジジイーッ!』
決死の覚悟で"隠し玉"を発動。
その名も"竜族英雄最終献身"……大層な名前乍らその効果は"搭乗者を逃がしつつ敵を巻き込み自爆する"とまあ至ってシンプル。
≪ぐお、貴様っ!? 何をッッ――ぐおわがああああああああ!?≫
まさに"最初で最後の大技"を至近距離で食らったディノサウリアは"見た感じ恐らく"爆発四散……術の仕様かどうやらチャールズ老は死なずに済んだようだったが、それでも深手を負ったのは間違いなさそうだった。
ラストでちょっとしたミラクルが起きましたとさ。
次回、チャールズ老が繰り出す正真正銘最後の切り札は……
誰もが予想しうる"あの組み合わせ"のゴーレムだった!?




