大英雄、満身創痍で連戦連勝!
操縦に不慣れ乍らも高性能なロボット"竜紋大英雄"を駆り見事水中ゴーレムらを打ち破ったナガレ。
時を同じくして浮遊大陸から水が引き元の姿を取り戻す。
果たしてチャールズ老は一体どんなゴーレムを繰り出してくるというのか?
そして彼が口にした発言の真意とは!?
俺の名前は、北川ナガレ。
「オウロクス! サウロポッド! 我らの剛力を以て奴めを鉄屑と死肉片に変えてやろうぞ!」
≪ブバォロラァァン!≫
≪ぺギャッフガォォォォォン!≫
『見た目通り威勢がいいなあ。実に結構なことだ……』
水が引き、元の姿に戻った浮遊大陸でロボを駆り、重厚感溢れるデカブツ共と睨み合うゾンビの化け物だ。
『いいぜぇ~、かかってこいよ。純粋に真正面から殴り合おうじゃねぇか!』
≪ブバォロラァァン!≫
≪ぺギャッフガォォォォォン!≫
さて、前回歴代最多の769PVを突破する大盛況の中決着した三大水中ゴーレム戦から暫し、チャールズ老は新たな手駒として二匹のゴーレムを繰り出してきた。
「幸福の数を名に冠す紅の聖者率いる三匹の精鋭。
それらが内の一匹は、槍の如き四本角を持つ剛力の闘士。
凝縮された筋肉が生み出す加速は凄まじく、山一つをも打ち砕く程。
無能な愚物に愚弄され、扱き下ろされども尚諦めず、数多の死線を潜り抜けん。
聖者の手で勇士に託されし闘士は、激闘の中で確かな成長を遂げるであろう。
いざ、成り上がらん。聖者陣営重撃眷属、プロモーション・オウロクス」
≪ブバォボラッガヒィ〜ン!≫
まず召喚されたのは真正面に向かって真っすぐ伸びる大小四本の角を持つ巨大な牛、プロモーション・オウロクス。
如何にもパワータイプ然とした見た目や召喚口上は嘗て相手取ったヴァイブレイト・ケラトプスっぽく、口から吐く熱線で遠距離までカバーできる隙の無さもヤツによく似ていた。
しかもこの熱線ってのが火力・射程距離共にカルカロレクスと同等かそれ以上なもんで、余計油断を許さねえ相手だと言えるだろう。
「剛健。剛力。剛毅。重厚。重量。重圧。暴走。暴圧。暴虐。
恐れ戦くべき怪物。平伏し従属すべき魔物。崇め称えるべき傑物。
血飛沫に朱く染まる戦場に在りて、数多の敵兵骸に変えし、他の追随一切許さぬ孤高の王者。
搦め手策謀知略戦略、小手先小細工一切棄てて、ただ己が身一つで勝利を掴む。
まさに覇道の体現者。その名は朱き髑髏の王。
かの王を敵に回すとは即ち、徹頭徹尾暴力による苦痛に満ちた最期を迎える伏線であると理解せよ。
圧倒的力量を知らしめ給え。血戦無頼漢、スカル・サウロポッド」
≪ぺギャッフガォォォォォン!≫
続いて召喚されたのは、全身を白骨とも石灰岩ともつかない外骨格に覆われたブラキオサウルス風の超巨大ゴーレム、スカル・サウロポッド。
まず何より目を引く特徴は、なんといっても規格外すぎるそのサイズだ。とにかくデカい。余りにもデカ過ぎて主のチャールズ老が一瞬さほどデカくないんじゃないかと錯覚する程にデカい。
或いは実際、そのサイズは俺が思うほどでもなく、迫力に圧倒されてるだけなのかもしれないが、何せヤツはブラキオサウルス……只でさえデカブツ揃いの竜脚類にあって、その上前足が長めに発達し、大木の幹みてぇな首を立てる姿勢を取りがちなのもあって"長い"っつーより"高い"ような印象を否が応でも抱かざるを得ねえ。
(お陰で今までの奴らより雰囲気とか勢いで圧倒される感が強いったらねえや……)
さてそんなサウロポッドの戦い方だが、もうなんつーかシンプルに"力押し"の一言に尽きた。各々が特殊能力を使いこなす他の連中と違い、ヤツは発達した四肢、意外に長く伸びた尾、長い首とその先端に据えた頭に至るまで全身を鈍器に襲い掛かって来るんだ(首や頭での攻撃は雄キリンの喧嘩を思い浮かべてくれたらわかりやすいだろう)。
しかも当然、戦略や打算なんてもんは一切なく、何なら敵味方の区別すらないんじゃねーかってぐらいに手当たり次第暴れまくってやがる。
ってぇと仲間を巻き込みそうなもんだが、方やジジイはそれを魔術やなんかで巧みに躱し、方やオウロクスは実際ちょくちょく巻き添えを食らいこそすれ大したダメージにもなってないようで、岩の塊が直撃しようが尻尾でぶん殴られようが構わず突進して来やがる。
≪ぺギャッフガォォォォォン!≫
『うおおおおっ!? 意外と足早ええええっ!? しかも刃がっ! 刃が通らねーっ!』
「リビングデッドよ、無駄な足掻きは止しておけ。サウロポッドの外殻は我が配下の内でも一二を争う頑強ぶり……こと刃物相手ではほぼ無敵も同然であるぞ!」
ジジイの言葉は誇張でも何でもなく紛れもない真実だった。正直“大英雄”の剣じゃ歯が立たず、何なら刃物で挑むのがそもそも間違いとさえ思わずにいられないレベルに頑丈かつ堅牢だったんだ。
(っべぇな、マジで通らねぇ。並みの代物なら間違いなく圧し折れてただろーぜ……つーか、刃が無事なのがわりと奇跡なんだが)
≪ペギッファグォォォォォン!≫
『うをッッ!? どわぁぁぁぁぁっ!?』
立て続けに繰り出される首のフルスイングを咄嗟に耐衝撃障壁で防ぐ。耐衝撃障壁は最大出力ならオウロクスの突進にも片腕で競り勝った実績がある。
よってサウロポッドだろうと辛うじて防ぎ切れると踏んでいたが……その見通しは余りにも甘く、現実は防ぐどころか軽く吹き飛ばされ地面に打ち付けられてしまう。
「そのまま地に縫い付けてくれるわァ!」
『ぬっ、ぐおっっ!? なんだ、操作が効かねぇっ!?』
「オウロクス! 串刺しにしてやれィ!」
≪ブバォロラァァン!≫
『しまっ……! 避けら、ぐおわがあああああっ!?』
すかさず起き上がろうとするも、ジジイの魔術で拘束された所へオウロクスの突進をモロに食らってしまう。この時点でさしもの“大英雄”も中々に損傷……すぐさま撤退か、さもなきゃ機体を捨てるのが賢明な判断なんだろうが……今の俺にはどっちの選択肢も有り得ねえ。
(ジジイは俺を殺す気でいる。逃がしてくれるワケがねえ。機体を捨てようにも、次の代替機は仕様が特殊なんで手配にまだ時間がかかる……)
ならどうするか? 簡単なこった。
“逃げずに限界まで尽力する”……これっきゃねーだろう。
(今まで戦ってきた経験則からして、連中が瓦礫に戻るのは中枢が破壊された時!)
逆に言えば、中枢が無事ならどんだけ重傷でも奴らは原型を留め続ける……ならその性質を逆手に取るっきゃねぇだろう。
(中枢の位置も大英雄のセンサーを総動員すりゃ大体分かる……オウロクスは兎も角、重要なのはサウロポッドの中枢がどこにあるか、だ……!)
猛攻をいなし、かいくぐりながら密かに探ってみればヤツの中枢は心臓辺りにあるらしい。
(比較的低い位置……実にイイ、最高に好都合だッッ!)
≪ブバォボラッガヒィ〜ン!≫
脳内で作戦を組み上げていた所、丁度いいタイミングでオウロクスが突進してくる。熱線は障壁で防がれると学習したらしいが……今回に限っては突進してくれた方が有り難い。
『でイやァッ!』
「何ぃ!? 跳躍んだだとっ!?」
≪ブバァン!?≫
≪ペギャッ!?≫
突然の跳躍に困惑するジジイどもを尻目に、俺はオウロクスの背を右腕のグラップル・ガン"物理型瞬間移動装置"で狙い撃つ。
≪ブバッ!?≫
(よし、刺さったっ!)
サウロポッド程じゃないが、オウロクスの防御も侮れない。ヤツの全身は高密度の毛皮や分厚い皮下脂肪に覆われ、体内には強靭な筋肉がこれでもかと詰まってるもんで打撃や爆風なんかには強い反面切断や刺突を防ぐには心許ない。よってグラップル・ガンのアンカーも見事に突き刺さってくれた。
≪ブバッ!? ブボバッ!? ブゴゥガバッ!?≫
『でィィィィヤっ!!』
≪ブボバァァォッッ!?≫
アンカーを抜こうと荒れ狂うオウロクスの背へ、間髪入れずに降下序でのドロップキック。全重量を乗せて踏み抜けば、さしものヤツも姿勢を崩さずにはいられず地に伏せる。
「ぬぅ、オウロクスっ! 待っておれ今助けに――
≪ペギッファグォォォォォン! ぺギャッフg――
『行かせねぇよ!?』
≪ピギァァッッ!? クギャッフガォォ!?≫
「ぬうおおおお!? 何だこれは!? 足元が滑ってろくに動けぬっ!?」
ともすりゃジジイとサウロポッドが向かってくるワケだが、邪魔されちゃたまらんので"粘液罠榴弾"でもって足止めさせて貰おう。この榴弾で散布される液体はヌタウナギの粘液を参考に手間暇かけて合成された代物で、時間経過の他熱や衝撃を受ける度に粘り気を増し硬化していく性質がある。
「ぐんぬぉおおおおおおお! 斯様な鳥黐風情にこのチャールズが負けるものかぁぁぁぁぁ!」
≪ペギャアアアアアア! キグァァァァァァァ!≫
要するに"藻掻けば藻掻くほど抜け出せなくなる"ワケで、奴らみてーな腕力に依存しがちな脳筋どもには特に有効な武器となる。そんなんだから当初は対屍人用武器として検討されたが、製造コストが馬鹿んならねぇわ環境への悪影響も深刻だわ誤射・暴発時の対処法が不明瞭だわと欠点・問題点は山積……この"粘液罠榴弾"とてさっきジジイとサウロポッドを足止めするのに撃った分が最初で最後っつー有様だった。
(とは言え純粋な性能が高いのは間違いねえがな)
「ぬううううぐおおおおおあああああ!」
≪ペギャガォォォォン! ピギャバォォォン!≫
さて、ともあれゆっくりしている時間はねえってコトで……
『よぉ~猛牛公、ちっと首貸せや……』
≪ムッゴ、ブゴ、ブボゴォ!≫
『返却せるかどーかわかんねぇけどよォ~ッ!』
≪ブボガァッ!?≫
俺は急ぎオウロクスの首を刈り取った。
『よっしゃ準備完了~』
≪ブボァァァ……!≫
頭ん中の中枢を破壊せずに首だけ刈ったもんでまだ唸り声を上げてるが、まあ気にしなくていいだろう。
『っしゃ、行くぜっっ!』
≪ブボ!? ゥグボ!?≫
ともかく刈り取ったオウロクスの生首を右手に持った俺は、剣を引っ込めつつ残った胴体部分――機能停止こそしちゃいねぇが、制御部分との繋がりを断たれまともに動けず実質再起不能同然だ――を軽く蹴り飛ばしつつジェットエンジンで突進する。
目指す標的? そんなもん……
≪キグァァァァァァァ! ペギャアアアアアア!≫
……粘液の罠で動けなくなってるサウロポッドに決まってんだろ。
(中枢の位置はほぼ捉えた……万一外したとして、外皮に穴さえ空きゃそれでいい)
ジェット噴射の出力を上げながら、慎重に狙いを定める。酷使された機体の軋みは悲鳴のようで不安感を煽られるが、だからって引き下がるワケにはいかねぇ。
≪ペギャアアアアアア!≫
『いい加減面倒臭ぇし……この一発で、何とかなれェェェェェ!』
振り下ろされた首の一撃を紙一重で躱した俺は、そのままサウロポッドの胸元――つまり"中枢"の位置――目掛けて右拳を力一杯突き出し、オウロクスの角をヤツの外皮へ叩き込む。
『心臓の串焼きになっとけぇぇぇ!』
≪グギゲァァァァァ!?≫
≪ブゴロォォォ!?≫
「ぬあっ!? サウロポッドぉぉぉ!? オウロクスぅぅぅ!?」
オウロクスの角はサウロポッドの硬い外皮をも容易く突き破り、奴の中枢部へ到達していた。後ろの方でジジイがなんか今更になって騒いでるが、知ったことじゃねえ。
俺はそのままオウロクスの生首をがっちり掴み、サウロポッドの体内で手首を回転し、頑丈な角でヤツの内部を徹底的に抉りにかかる。
……ここで『どっかで見た光景だな』って思ったそこのヤツ、冴えてるじゃねえか。
そこまで分かってんならもう、この後俺が言うセリフだって概ね予想はついてんだろ?
(ま、予想できてなくても言わせて貰うがね……)
てなワケで、張り切って参るとしよう。
『デェ~ッドリ~、グリィィン! グリィィィン! 大人しく敗けて瓦礫んなっとけぇぇ!』
≪プギゲギャアアアアアアッ!?≫
「ぬおわああああああああああああああああ!?」
フルパワーで回転する手首と角はサウロポッドの巨体を抉り、その中枢部を完膚なきまでに破壊する。
『てめえも道連れだああああああ!』
≪ブヴォボゴゲエエエエエエ!?≫
直後生首から一旦手を放し、渾身の貫手でもってオウロクスの中枢も破壊する。
中枢を破壊されりゃゴーレムは一瞬でお陀仏、ただ素材の瓦礫に戻るだけ……それはオウロクスとサウロポッドの二匹でも例外じゃねえ。
「な……ま、さか……オウロクスに、サウロポッドまでもが……!」
『よぉ~ジジイっ、教えてくれや……』
崩れ行くゴーレムを前に呆然と立ち尽くすチャールズ老へ、俺は言い放つ。
『今こうしてまた、二匹のゴーレムをぶっ潰されちまったあんたの、心境ってヤツをよォォォ~~~ッ!』
竜紋大英雄は既に大破……もう立っているのがやっとだが、それでも俺は啖呵を切る。
『残りの奴らは何匹だ? 繰り出してみりゃあいいんじゃねーか?
全部さっきの奴らみてぇに、ただの瓦礫にしてやっからさァ!』
次回、チャールズ老の『長引かせない為にも短期決戦を心がけよう』との意味深な発言の真意が明らかに!
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