鬣六連、変幻自在なれども……
"ヘキサ・カバルス"もとい"真・人馬一体ツインズ"戦、決着!
※この話投稿しようとしたらPCフリーズして強制終了せざるを得なくなったんだけど、
これもしかしてペガシスターとかブロニーの祟りか何か?
そりゃMLPパロだけど簡便しよもう……
俺の名前は、北川ナガレ。
『なぁお前らさぁ、もうやめといた方がいいんじゃねぇか?』
「ぐっ、づうう……!」「まだ、やれっぞぉぉ……!」
『いやマジでやめとけって。もう満身創痍だよそれは』
変身どころか立つのもやっとなほどボロボロな"真・人馬一体ツインズ"の身を案じる、ゾンビの化け物だ。
『内臓どころか骨も何本か折られちまってんだろぉ~? 治癒・回復系の魔術さえ使えねぇってのにその有り様とあっちゃどうにもなんねーよ、諦めろって』
「やっ、かましいぜぇっ! 俺の体内にゃ215の骨がある! たかが五つ六つほど折れたところでそれがなんだって話だろうがァ!」
「そうともよ! アタシにしたって馬ながら85も骨があるんだぜ!? 半分もやられてねぇなら退く理由ンなるかボゲェ!」
『アホか、1本折れただけでも大事だっつーの』
フィロミーナは勿論だが、セレスティアの方はより重傷だ。確かに骨の数が平均50個前後のところ85個とは驚異的だが、さりとて馬にとっちゃ骨折ってのは下手すりゃ人間より深刻な事態になりかねねぇと聞く。骨折が原因で安楽死させられた競走馬の存在が何よりの証拠だ。
『ま、お前らは頑張った方だと思うよ? 俺自身"二度目の死"ってヤツを感じなかったワケでもねぇしさ……』
ここまでの描写だとあたかも俺が余裕で圧勝したように見えるだろうが、正直ここまで漕ぎつけるのは簡単なことじゃなかった。何なら"六鬣馬人ヘキサ・カバルス"こと"真・人馬一体ツインズ"……奴らは今まで相手取ってきたどんな奴よりも恐ろしい強敵だったと断言していい。
(ジッキンゲンの時ほどじゃねえが、俺が勝てたのは四半分くらい運もあるんだろうぜ……)
てなワケで読者には、奴らとの戦いをダイジェストの回想形式でご覧頂こう。
∈×^ミ┬┬~
「チキショー、不意打ちからの強制解除とはよぉ……セレスティア、システム面はどんな感じだ?」
「ああ、中々ヤベーぜ。機甲馬モードが解除されてねーからヘキサ・カバルスへの変身そのものは可能だが、中枢回路が幾つか壊れやがった。メーン・メイジへの変身は暫く無理だろうぜ」
なんだかんだで変身の強制解除に追い込まれ、"ヘキサ・カバルス"から"真・人馬一体ツインズ"に逆戻りしたセレスティアとフィロミーナ。倒れて尚戦意を捨てず立ち上がった奴らは、次なる形態への変身を実行しにかかる。
「なるほどそいつは好都合! どうせメイジはヤツに通用しねぇし、一丁他の形態試してみるかぁ!」
「おういいぜ、その意気だ相棒! そんならさっさとやっちまうかぁ!」
「「行くぜ、ポニーチェンジ!」」
≪PONY CHANGE!! MANE LAUGHTER!!≫
「「暗雲打ち破るは、歓喜の蹄! 絶えず騒がしく笑む鬣、メーン・ラフター!」」
そんなこんなで続いて変身したのは、どこもかしこもピンク色だらけの甘味を組み合わせたようなポップな形態"メーン・ラフター"。確かにちびっ子や若い女にはウケが良さそうだ。そりゃ笑顔って名前も納得の形態だが……
「うおおおおおお! ハマれば強いがメチャクチャ事故率たけーから短期決戦で行くぜぇぇぇぇ!」
「粉々に吹き飛びやがれ、リビングデッドォォォォォォ!」
「「ラフター・クラッカー・パーティ・キャノンンンンンンッ!」」
『それのどこがクラッカーだよ……』
攻撃方法は武骨な携帯対戦車擲弾発射器での砲撃っつー、甘味要素皆無の武骨かつ物騒なモンだった(確かに短期決戦向けの技だが……)。
ま、とは言え俺の方もそんな見え透いた攻撃をわざわざ食らってやるほどお人よしなわけもなく……
『ほっ』
「へっ、自分で弾を掴むとはバカな奴だぜ!」
「そうだそうだ! そのまま吹っ飛んじま」
『ロっケラ~ン撃っつほ~ど安藤さんがテイッ!』
「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇえええええ!? な、投げ返したああああああ!?」」
飛んできた擲弾を掴み、森暮らしのペンギンよろしく奴らに投げ返した。
人間やめたゾンビの化け物、死越者ならでは(?)の芸当だろう。
『てめえらが吹き飛んどけ』
「「ぐわああああああああ!?」」
結果、投げ返された擲弾は当然のごとく奴らを巻き込んで爆発……強欲警官の倍はありそうな破壊力は、当然奴らの変身を強制解除させるが……
「まだまだぁぁぁ!」「鬣はまだ四連残ってっからなぁ!」
『ああ、そういや鬣って連って数えるんだっけなあ』
奴らは諦めずに向かってくるのだった。
そっからはまあ、似たような動作の繰り返しで……
「「ポニーチェンジ!」」
≪PONY CHANGE!! MANE HONESTY!!≫
「「豊饒なる大地を耕し命育む蹄! 誠実なる収穫者の鬣、メーン・オネスティ!」」
次に変身したのはオレンジ色のいかついウェスタン・ロボじみた姿をした"メーン・オネスティ"。見た目通りの重量級なパワーと防御特価の形態で、両肩のリボルバーからはリンゴ型の擲弾を連射、各部位の装甲に内蔵された索発射銃から射出したロープをしかも意のままに操るなど距離を選ばず戦える、かなりめんどくせー相手だった。
(泥翁竜を嫌ってた連中もこんな気持ちだったのかねぇ~)
そのめんどくささは、当時『群れで御託並べて自分の腕のなさを正当化してなきゃやってけねぇような雑魚ども』と見下してた連中の気持ちが分かった気がした程だった(ま、とは言え俺は好きだがね泥翁竜)。
(あれ公式には泥田坊モチーフとしか言われてねーけど、見た目からして大百足入ってるよなぁ)
なんて雑念を脳内で捏ね繰り回しながらも策を練り続け……
(堅牢な防御と抜群の馬力、そんで隙のねぇ遠距離攻撃……まるで盾蟹だな)
思考がモンハンに染まってたせいか、そんな風に考えた俺は、図らずもその雑念にヒントを見出すこととなる。
(盾蟹つったら……属性だったら雷か火、武器なら打撃系がよく通る。固いガードを崩すなら、でかい音で脅かしゃいい)
明確な根拠のねえ仮説だったが、幸いにも武器は揃ってるんでコートの背中に手を突っ込む。
(まずは音波で奴らの動きを止める……!)
「づっ!? ぐうううあああっっ!?」「がああっ!? なんだ、こりゃああああっ!?」
最初に使うのは"笛吹亜米利加豹"。エレキギターならぬエレキリコーダーとでも呼ぶべき機械仕掛けの縦笛で、調整次第で様々な音量・周波数の音を出すことができる。音波でモノを破壊したりなんて派手な真似は無理だが"特定の相手にしか聞こえない音"やら"特定の種を苦しめる音"なんかもボタン操作と吐息で出せる優れモノだ。
そいつで"馬を酔わせる音"と"女人を頭痛にする音"を出してみたところこれが効果覿面。忽ち奴らは動けなくなったので、一気に畳みかける。
「っ゛ぐ゛う゛う゛う゛う゛! あ゛っ゛が゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「や゛め゛ろ゛お゛お゛お゛! こ゛の゛お゛と゛を゛と゛め゛て゛く゛れ゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
(……続けざまのトドメは、打撃と電撃!)
笛を吹いたまま、俺は助走をつけて跳躍……知能指数600の気高きバッタよりは、創造主に抗う記憶喪失の料理人に近い構えでの飛び蹴りを繰り出す。
『蹴雷・八咫烏ッ!』
「だぎば!? づがれ、どっ!」「ぶおっ!? がああああっ!」
装着者のキック力を強化する具足"競馬狂伝説中盤"と、他の(主に打撃系の)武器に組み込むことで放電機能を付与するスタンガン"瑠璃色電竜嬢"による"電撃つきの飛び蹴り"は、苦しみ悶える余り隙だらけな"メーン・オネスティ"の鳩尾へ直撃……絶大な破壊力でもって装甲を粉砕しつつ"奴ら"を吹き飛ばし、そのまま変身を強制解除させた。
「クッソがああああああ! セレスティア! 次だ次!」
「おうよ待ってろフィロミーナ!」
「「ポニーチェンジ!」」
≪PONY CHANGE!! MANE LOYALT!!≫
「「蒼穹に輝くは、稲妻の如き虹の翼! 忠誠たる音速の鬣、メーン・ロイヤルト!」」
四番目の変身で披露された"メーン・ロイヤルト"は、空色の装甲と両肩と両腕から伸びる主翼状のパーツが特徴の形態だ。例えるなら"ジェット戦闘機を模した細身のロボットか特撮ヒーローの強化形態"てトコか。しかも背面のジェットエンジンで滞空までしてやがる辺り、どうやら飛行機風な見た目は単なる飾りじゃないらしく……
「うおらあああああ! この超スピードについて来られるかぁぁああああ!?」
「今のアタシらはっ! まさしくつじあやのみてーにっ! 風になってんだぜぇぇぇぇ!?」
『どこがつじあやのだこの馬ァ~。オーバードライブギターかき鳴らしながらシンセぶん回す「風になる」があって堪るかボケェ~』
勢いに呑まれまいとゆるく突っ込み入れつつ、奴らの突進を紙一重で躱す。
(ウッソだろオイ、冗談キツいぜ……)
"メーン・ロイヤルト"の飛行速度は凄まじいの一言に尽きる。
何せ一応は視力が常人越え、猛禽やトンボとは行かずとも野良猫やシチリアの漁師となら裸眼でタメ張れる程度の俺をして捕捉できるかどうかギリギリの有様だ。こりゃあ対処に頭抱えるぜ……。
『てめーらのは西川貴教とかジャムプロとかその辺だよ。百歩譲って推定三十路か四十路ぐれーで顔のいい眼鏡女の歌手だとして民安ともえだろ、いい意味でよぉ~』
「それを言うなら令和版の弦巻マキと言いやがれぇぇぇぇ!」
「若しくはついなちゃんシリーズで同じポジの後鬼でも可ァァァァァ!」
『いや令和版の弦巻マキは担当民安ともえじゃなくて田中真奈美だし主役の相方ポジってんなら後鬼姉貴よか高遠の咲ちゃんだろアホかぁ~乳だけで選んでんじゃねーぞボケぇ~』
四肢から展開される機銃の一斉掃射。まさに"弾雨"、森山良子風に言うなら"鉄の雨"と呼ぶに相応しい猛攻に、俺は為す術もなく逃げ回る。そりゃ蚕豆コンビや早川さん曰く"冴島大河並みに頑丈で回復力はイーサン・ウィンターズと肩並べるレベル"の俺だが、だとしてもあんなもん食らったら一溜りもねぇからな……。
(ドロンボーか佐竹博文ぐれーのタフネスがありゃ乗り切れたんだけどなー俺もなー)
そもそも"ヘキサ・カバルス"自体魔術的な代物なら"メーン・メイジ"程じゃないがあの弾丸にも何かしら魔術的な作用があったとて不思議じゃねぇ。下手な被弾がマジで命取りになる可能性は決して低かない。
(とにかく防御っ、防御だ防御っ)
てワケで俺が取り出したのは黒いモルタルボードハット風の物体。乱雑に放り投げられたそれは宙へ浮いたまま静止……降り注ぐ弾雨を搔い潜りながら瞬く間に変形していき、モルタルボードハットを被り無数の触手を生やした黄色いクラゲかタコみてーなロボットに姿を変える。日本の少年漫画よりは2010年代以後のアメリカ映画に出てくるようなデザインだ。
≪どうしました北川くん。優秀な君が私に頼るなんて珍しいじゃないですか。よほど困った状況とお見受けしますが≫
異形の風貌に反して妙に礼儀正しいそのロボットは、俺に付き添って浮遊しつつ、片手間で降り注ぐ銃弾を一つ残らず弾き飛ばしながら俺に語り掛けてくる。
『ええそうなんですよ"先生"ェ~。未熟もんの俺にゃどうにも手に余る、やけに妙に厄介な手合いでして~。大変お手数なんですけども、少しばかり"壁"やって頂けませんか?』
なもんだから俺の態度もご覧の通りだ。たかが武器乍ら有能で、その癖驕り高ぶらず紳士的ってんならそりゃもう敬わずして何とするってもんだろう。
≪ええ、構いませんよ。お安い御用です。何でしたら私自ら彼女らを撃破させて頂くこともできますがね≫
『ああいえ、それにゃ及びませんで。こいつぁ俺個人の戦いです、先生に無理はさせられませんって』
≪そうですか。わかりました。では約束しましょう。私は君を守り抜きます。ここから先、君を一切傷付けさせはしません≫
『いや~助かります~』
さて、そろそろ解説と行こうか。
この妙に紳士的かつインチキじみて高性能な触手ロボの名は"死神教諭不可殺也"。早川さんが国内外の研究機関や企業の助力を得て開発した武器の一種で、みんなお察しの通り俺が使わせて貰ってる中でもほぼ最強クラスの代物だ。余りに高性能かつ物言いが紳士的なんで、敬意を込めて先生と呼ばせて貰ってる。
(……とは言え製造に至った経緯が特殊だし、未だ開発途上で不確定要素も多くて何が起こるかわからんってことで、よっぽど追い詰められた状況下でもない限り起動しないっつーか、ほぼ原則使わない前提で持ち出す事さえ滅多にない代物なんだがね……)
さて、そんなわけで一旦防御を任せつつ、奴らに対抗しうる武器の準備を進めていると……
「だーっ、クソッ! 弾が! 弾が出ねぇ!? なんだ、故障かコラァ!?」
「落ち着けフィロミーナ! そりゃ弾切れだ! 弾を込め直しゃどうにでもなる!」
幸いと言うべきか、奴らの機銃は弾切れを起こしやがった。
見れば"先生"も丁度エネルギー切れが近いらしい。
≪すみません北川くん、そろそろ限界のようです≫
『ありがとうございます先生。もう大丈夫ですよ。ゆっくりお休み下さい』
≪では、お言葉に甘えさせて頂きますかね。失礼しますよ。後は任せました。どうか頑張って、北川くん。私はいつでも君を応援していますからね≫
『はい。光栄です、先生……』
てなわけでモルタルボードハットに戻った"先生"をジャケット裏に仕舞った俺は、弾丸装填にもたつく奴らの隙を突いて武器の準備を進める。
『よし、できた』
組み立て式かつ携行式のバカでかいレールガン"豊満美麗四眼最強悪魔齢三之三乗倍"に、専用の砲弾である"貧相豆粒光角最弱悪魔齢三之三乗倍"を装填。
大型コンデンサー"田中家在籍惰眠白猫"を発電機"完璧究極偶像母神享年四之二乗倍"に接続。
更に"惰眠白猫"と"最強悪魔"を、全自動変圧器の"邂逅以後約三箇月十日後貝合"を挟む形で接続。
……目が滑りそうになるだろうが勘弁してくれ。これでも結構削った方だ。
「――こっちがこうで……クソッ、パーツが干渉して閉じねーぞ!?」
「それはそうじゃねぇつったろ! いいか、まずそのピンを倒してだな――」
(……間抜けどもが。そんな遮蔽物のない場所に留まりやがって……撃墜してくれと言ってるようなモンじゃねぇか)
未だ弾丸の装填にモタつく"メーン・ロイヤルト"目掛けて、俺は"最強悪魔"の照準を定める。
(チャンスは一回……逃しはしねぇ)
精神を統一……トリガー替わりのスイッチを押せば、爆音を伴って砲弾が発射される。
奴らは慌てて回避を試みるが……初戦は無駄な足掻き。砲弾は奴らに直撃し爆散、内蔵された無数の鉛粒は比較的薄いであろう"メーン・ロイヤルト"の装甲に突き刺さり、忽ち変身解除に追い込んだ。
一方俺の"最強悪魔"も砲撃の負荷に耐え切れず破損しちまったが……元々使い切り前提の武器(てかぶっちゃけ未完成の試作品)だし、十分過ぎる活躍をしてくれたんだから文句はねぇ。
「づぁ、はっっ……! まだ、だぁぁっ!」
「俺らは、負けてねぇーっ!」
「「ポニーチェンジ!」」
≪PONY CHANGE!! MANE GENEROSITY!!≫
「「完璧に洗練されし麗角!寛容にして美麗なる鬣、メーン・ジェネラシティ!」」
セレスティアとフィロミーナの体には、この時点で打撲や骨折が複数個所あった。だが尚も諦めない奴らは五回目の変身で"メーン・ジェネラシティ"に変身する。白をベースに色味やサイズ、形の違う紫水晶風の装飾をあしらったドレスアーマーの女騎士って感じの姿だ。武器は万年筆型の
馬上槍と金剛石の塊から削り出したような盾。
堅実な戦い方をしそうな見た目だが、果たしてどんな能力を持ってるのかは知らねえ。というのも……
「うおおおおおおお!」「こいつでトドメだああああああ!」
『いや馬上槍使ってんなら馬乗れよ』
「「ぐわっが!?」」
なんとなく取り出したオレンジ色のチェーンアレイ風鎖分銅"自称主役出世作"の、至極適当な攻撃に当たっただけでダウン、そのまま変身解除されちまってんだから。
「や、るじゃねー、か……!」
「防御に関しちゃ、トップクラスの、メーン・ジェネラシティを、よもや一撃とはよお……!」
『いや逆だよ逆っ。お前らが弱り過ぎてっからテキトーな攻撃でもダウンしちまってんだよ。もうやめとけって』
「へ、謙遜すんなよ……!」
「俺らはまだ、変身を一回残してんだぜ……?」
所謂地上げ屋構文(?)で余裕ぶって見せるセレスティアだが、フィロミーナ共々もう限界に達してるのは言うまでもなかった。
「「ぽ、ニーっ……チェンジぃぃぃ!」」
≪PONY CHANGE!! MANE KINDNESS!!≫
「「思い遣り……守るっ、愛の翼ぁ! 謙虚かつ、心優しき鬣っっ……メーン・カインドネスぅぅぅっ!」」
最後の変身形態"メーン・カインドネス"は、古代西洋の羊飼いか何かをファンタジックにアレンジしたような、他の五つとは毛色の違うデザインをしていた。他五つが特撮風なら、この"カインドネス"は女児向けアニメ風だったワケだ。ただその割に手にした武器は素朴な杖……とは言え、やけにデカい蝶が装飾よろしく止まってるんで地味なデザインかってーとそうでもねぇ。
さて、そんな"カインドネス"の顛末だが……
「お、わりだ……終わりだぜ、リビングデッドぉぉぉ!」
「そう、だ……この、形態に、なったからに、はっっ!」
『オイオイ無理すんなって。何しようとしてんのか知らんけどもうダメだってお前ら』
「うっっせええええええええ!」
「ダメなのはてめえの方だああああああ!」
「「うおおおおお!」」
「如何なる和をも保たせはすまい!」
「俗世に秩序など容認すまい!」
「只、衝動と我欲の故に全てを乱せり!」
「今こそ石の牢獄を打ち破り!」
「残忍に狂える嗤い聲を響かせん!」
「「顕現せよ! 混沌混濁魔神獣、ディスパテ――ちばっぱああああああ!?」」
……この通り、俺自ら手を下すまでもなく自滅する始末。
杖持ってるし元がなんか使い魔とか嗾ける系の所謂"調教師"とか"召喚士"系の戦い方をする形態だったからか、なんか切り札級のヤツを出そうと詠唱までしたはいいが当然あんなコンディションで上手く行くわけがなく、ものの見事に自滅オチだよ。
「ぁば、ぼばわ……」「が、べえ……っ」
(もう見てらんねぇ救えねぇ……)
結果、負荷がかかり過ぎた奴らは"ヘキサ・カバルス"どころか機甲馬モードさえ維持できなくなり、ものの見事に再起不能……かくして場面は冒頭へ移る、ってワケだ。
∈×^ミ┬┬~
「まだ、だあ……!」「まだ、やれっぞお……!」
『うっせぇわ。もう大人しくしとけこの馬どもが~じゃなかった、バカどもがぁ~』
なおも立ち上がろうとするセレスティアとフィロミーナだが、戦闘続行不能なのは火を見るよりも明らかだ。
(つーかなんでこいつらここまで俺に向かって来ようとすんだよ。この館の主ってそんなスゲー奴なのか?)
なんだかんだでとうとう意識を失った八本足の一角獣と首無し女騎手に内心呆れつつ、俺はそんなことを思うのだった。
さあ、お次はゾウガメの爺さんだ。
次回、巨大ゾウガメのチャールズ老との闘い!
大規模かつ衝撃的なその戦い方とは!?




