馬と騎手、至極どうでもいい議論に文字数を割く
セレスティア&フィロミーナこと"真・人馬一体ツインズ"戦開幕……かと思いきや?
俺の名前は、北川ナガレ。
「オイオイオイオイ」「やりやがったぜあいつ……」
「よもやジッキンゲンを容易く退けるとは、あのリビングデッド中々侮れんぞ……」
(……過大評価っつーか、誤解なんだけどなあ)
運良く労せず難敵(になる筈だった相手)を撃破できた所為で敵側から誤解され、その過大評価じみた言葉に素で困惑してるゾンビの化け物だ。
「でよぉ~ジイさん、次どうするよ?」「もしあんたさえよけりゃ、アタシらが行っても構わねえかい?」
「うむ。そうしてくれるか。我は万一に備えもう少々調整に"潜らせて"貰うでな」
程なくして、次の相手は八本足の一角獣"セレスティア"とビキニアーマーの首なし女騎手"フィロミーナ"のコンビ"真・人馬一体ツインズ"に決まったようだった。
∈・^ミ┬┬~
「よぉ~リビングデッドぉ、てめー何をどうやったんだか知らねーがよぉ~」
「ジッキンゲンの馬鹿をあっさり片付けちまうとは相当やるようだなぁ~?」
『いやぁ~まぁ~~なんだな、その件は誤解っつーか、運よく偶然親切などっかの誰かに助けて貰ったお陰であってだな……』
「へっ、謙遜とは益々リビングデッドらしくねーな」「だがいい傾向だぜ。それでこそアタシら"真・人馬一体ツインズ"の相手に相応しいってモンよ」
『言い分や理屈が今一どうにもよくわからねぇが……まあいい。戦う気があるってんなら相手になるぜ』
臨戦態勢といった様子の二人(一人と一頭?)を前に、俺は武器を抜き構える。
手元にあるのは当然いつものプラズマ・ノダチ。加えて今回は他にも色々準備しているが、まあ手始めはこいつで行くとしよう。
「……なんだそりゃ? パワーアップし過ぎて漂白されちまった誘導棒かあ?」
(それは挑発で言ってんのか? それとも無知故素でボケてるだけか?)
首無し騎手の真意がわからず、俺は思わず反応に困った。すると……
「バカ言ってんじゃねえよフィロミーナ、あんな誘導棒があるわけねえだろ。ありゃライトセーバーだよ」
(せめてビーム・カタナって言ってくんねーかなぁ)
八本足一角獣のナイスフォロー……かと思いきやちっとズレちまってて些かモヤらずにはいられねぇ。
確かにプラズマ・ノダチは一見ライトセーバー風の見た目だが(『スター・ウォーズ』にそれほど詳しくなく、かえって『ノーモア・ヒーローズ』の大ファンでもある)早川さんに曰く同武器の設計コンセプトは"現実版ビーム・カタナ"だ。
ま、『スター・ウォーズ』の方が歴史も知名度も圧倒的に上だからそっちで認識しちまうのも必然だろうがね。
(何なら本家の使い手もスターウォーズ野郎呼ばわりされてたしな)
ともあれ訂正した方がいいか、なんて思ってたが……
「ライトセーバーだと? おいおいセレスティア、お前こそバカ言っちゃいけねぇよ。ライトセーバーつったら赤、青、緑の三色だろ? ジェダイが青とか緑で、シスとかの悪役側は赤じゃねえか」
首無し女騎手に訂正の隙を潰されちまう。
「ば~っかおめぇ、『クローンの攻撃』とか『シスの復讐』辺りからは黄色や紫も出てただろうが」
「……そういやそうだったな。けど紫色になったのって撮影当時にメイスのオッサン役の玄田哲章さんが星占いでラッキーカラー紫って出たのが切っ掛けだろ? 黄色ってのも多分その類だろうし、ありゃ外伝的なもんであって本家シリーズの一部として考えていい描写じゃねーんじゃねえか?」
「徹頭徹尾何から何まで間違いだらけじゃねーか。確かにメイス・ウィンドゥのライトセーバーが紫なのは演じた役者絡みの話だが映画日本語吹き替えの玄田御大は関係ねーよ」
「えっ、そうなの?」
「そうなの。紫になった理由はメイス役のサミュエル・リロイ・ジャクソンがジョージ・ルーカスに直談判したからで、後付けで刀の部品が特殊な仕様だからっつーしっかりした設定もあるだろうが。あとメイス・ウィンドゥの戦術はジェダイとシスの中間みたいなとこあるからそういう意味でも青と赤混ぜた紫は妥当だって意見もある。黄色もだがそもそも映画に出てる時点でしっかり設定はあるんだよ」
(その発言も所々に於いてはガチのSWファンが聞いたらキレそうではあるよなぁ)
「~~~だとしても白とか黒とかそういう2色味のない色"のライトセーバーは出てねぇよな? つまりあのリビングデッドの武器はライトセーバーじゃねぇんじゃねーか?」
(惜しいなあ。ライトセーバーじゃねえのは確かだが……)
「残念だったなぁ、最近になって作られた関連作品には白も黒も出てんだよ。まあ黒の方はあんまライトセーバーらしい形はしてねーけど、白の方はがっつりライトセーバーしてたんだぜ?」
(ほう、詳しいじゃねぇか。あんま知られてねぇと思ったがさてはこいつら結構な『スター・ウォーズ』ファンか?)
「つーかあいつの武器がライトセーバーじゃねえのはそりゃそうだろ。この小説別に『スター・ウォーズ』の二次創作でも『スター・ウォーズ』を含むクロスオーバー系の作品でもねぇんだから」
「おいセレスティア、お前メタ発言なんてすんなよ。読者が混乱するし嫌な気分になっちまうじゃねーか。てか俺だってそりゃあいつの武器を本気でライトセーバーだなんて思ってねーよ。ただ色とか雰囲気からしてライトセーバーって例えるのは不適切じゃね? って話だよ」
「ああ、そっちか。紛らわしい言い方すんじゃねーよ。そんならアタシも同意見だよ」
(どっちもどっちだろ)
「てかよぉセレスティア、お前『最近できた関連作品で白や黒が出てきた』つってっけど巷じゃ最近の『スター・ウォーズ』シリーズは落ち目に差し掛かってるって話じゃねえか。特に『フォースの覚醒』からの続三部作なんざネズミ野郎に金積まれた評論家ども以外は散々っぱら酷評してやがるしよ。ってことはお前の言うその白や黒のライトセーバーが出てきた関連作品とやらもそういう続三部作の同類であって設定として本家に取り込むべきじゃねえってことはねーのかよ?」
「フィロミーナ、おめーなぁ……デュラハンだからって脳味噌落っことしたような発言してんじゃねぇよ。確かに『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』の続三部作はひでぇ作品さ。
『新たなる希望』から『シスの復讐』までの六作をてめえの子供とまで言い張る、文字通り"生みの親"のジョージ・ルーカス監督もクリスマスの報道番組じゃ『覚醒』を『「スター・ウォーズ」の根幹にある"家族問題を扱うメロドラマ"としての部分を全否定して単なるSF映画にしたネズミ野郎は許せない』と評し『我が子を奴隷商人に売り飛ばした自分は親失格だ』的な発言もしてる」
(言うてルーカス監督、その後騒がれたんで大晦日くらいに『試写前にKY発言してすみません。なんか大ヒットしてるみたいですし、『覚醒』とエイブラムス監督とルーカスフィルムのケネディ社長は私の誇りです』って発言撤回してるぞ……とかツッコミ入れたらまたよりめんどくさくなりそうだな)
「だがだからって近頃のスター・ウォーズ関連作品がどれも駄作ばっかりってことはねぇし、他ならぬ白や黒のライトセーバーが出てきた作品ってのもファンの間じゃ珍しく評価高いんだからな?」
「そうなのか? そのタイトルは?」
「聞いて驚くなよ? その一つは『マンダロリアン』シリーズだ」
「……!? 『マンダロリアン』、だとぉ……!? マジかよ、そうなったら話は別だな。白や黒のライトセーバーって設定も紛れもなく信用に値する公式設定ってことになる」
「だろ? ま、とは言うものの実際問題としてあいつの武器をライトセーバーに例えるのが妥当かどうかって問題はまあ、あいつ自身に聞いた方が早いんじゃねーかと思わなくもねーがな」
「まあそりゃそうか。……あたしが思うにゃあいつ、コート着てるし仮面被ってるしなんか如何にもダークサイドっぽい雰囲気だしで、アナキンとかホッカイロレン意識してんのかなって思ってたんだけどな。でも確かに当人に聞いた方が早えか」
オイオイ、今までの長話は一体何だったんだよ……それこそここまでお前らの無駄話に突き合わされた俺と読者の気持ちになれっつーの。
(つかそういう時はアナキンじゃなくてベイダー卿って呼ぶのが普通だろうし、ホッカイロレンじゃなくてカイロ・レンだろうがよ……)
カイロ・レンとホッカイロレンは全くの別モンだ。
例えるなら白上フブキとくられ所長か、不動明とトイフェル・シャオロンぐらいには。
「というわけで質問させて貰うぜ、リビングデッド」
「おめーのその武器、『スター・ウォーズ』のライトセーバーを意識した代物なのかい?」
「……質問を質問で返しちゃいけねえのは百も承知だが、その質問ってのは今どうしても答えなきゃいけねーか?」
「ああ、そうだな。やむを得ず答えらんねえ理由があるなら、俺らとしても強制はしねーよ」
「ただアタシらこう見えて、なんか少しでも疑問に思っちまうと答えを探さずにはいられねぇって残念なタチでよぉ」
「その上最近は『古畑任三郎』とか『刑事コロンボ』、『変装探偵』『双子探偵』『赤かぶ検事奮闘記』とかの古き良き名作推理系ドラマにハマっちまってさぁ」
「揃いも揃って、細かい物事が気になりだすと仕事どころか趣味もままならなくなっちまうんだこれが」
「んで、大抵そのままイラついて」「稀にだが癇癪起こしちまったりで」
「「困ってんだよなァ~」」
『……』
なるほど。つまり件の質問に答えないでおけばこいつらはこの後の戦闘中延々とストレスに苛まれちまうってワケか。
(ストレスによる精神への負荷、特に集中力の低下は戦場じゃ命にも関わるディスアドバンテージだ。
ただでさえ未知の存在であるこいつら相手に上手く立ち回ろうと思えば策略として敢えて返答しねえって選択肢もある……)
だがそうと考えても引っかかる。何故奴らは態々前もってそんな話をしてきたんだと。
(俺がこいつらの立場なら、ただ問い掛けるだけに留めるだろう。もし『今答えなきゃいけねーか』とでも聞き返されりゃ『嫌ならいいさ』とそのまま流すか『質問を質問で返してんじゃねえ』『いいからさっさと答えろ』と圧かけて無理矢理にでも吐かせりゃ済む話)
或いはギリギリまでブチのめしてからとっ捕まえて何かしらの方法で吐かすって選択肢もあるだろう。つーか寧ろこいつらは俺を最低でも再起不能か撃退すんのが主目的なんだからそうすべきであって、わざわざ無駄な自分語りなんてする必要はないハズだ。
とするとこいつらの一連の発言には何かしらの意図があると考えんのが妥当であって……
(……やっぱ、そうだよなあ)
思考を巡らせた俺は……
『期待させちまったなら悪いが、こいつは別にライトセーバーを意識したとかじゃねえよ。そもそもこいつの開発者は「スター・ウォーズ」あんま知らねえんだ』
勿体ぶらず、素直に返答するのだった。
次回、"人馬一体"の真なる意味が明らかに!




