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デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者諸共殺されて腹立った俺は、最強ゾンビになって美人悪役令嬢とかイケメン人狼なんか連れて復讐序でに無双しようと思います-  作者: 蠱毒成長中
CASE2 死して怪物と化した男は、スラムの守り神となる

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33/87

陽炎一族へ辿り着く、その前に……

11日も何やってたって?

書いてたんだよ、今回の話を。


中々完成しない上にちょっとこれどうなんだろうって思いながら、でも書くしかなくてなァ……

次からはもっと面白くしてく予定。


 俺の名前は、北川ナガレ。



『さて、話は変わりますがね店長……』

「はい、なんでしょう?」

『……"陽炎一族"なるもんについてご存じですか?

 もしご存じなら、どんなに些細でちっぽけな情報でも構わないんで教えて頂きたく……』



 自分の親どころか"母校"よりも年上っぽい別嬪相手に、意を決して質問を投げかけるゾンビの化け物だ。



(鬼が出るか蛇が出るか……)


 俺は内心不安で仕方なかった。単に『知らない』と帰ってくるだけならまだいいが、よしんば店長が陽炎一族に関する情報を握っていたとして、それを見ず知らずの怪しい化け物に易々提供してくれるとは限らねえ。何なら名前を出すだけでもリスキーな行為だろう。

 然し果たして、巨美人淫魔の返答はというと……


「陽炎……懐かしい響きですわねぇ。

 ええ、勿論知っていますけれど……北川様、その名をどこで?」

『恩人に言われたんですよ。"陽炎一族そいつらを頼れ"ってね』


 そこから俺は、店長に今までの出来事や俺の真の目的などを洗いざらい話して聞かせた。

 出会って間もない相手に何でもかんでも喋るなんざ危機感のねえ真似とは思うが……なんだろうな、"店長なら別に大丈夫だろう"って、そんな気がしたんだ。


「そう、婚約者の方をあのリビングデッドたちに……」

『ええ。今でも忘れちゃいません。

 奴らを根絶やしにし、黒幕を始末するまで俺は止まれねえ。

 "復讐"を果たすまではね……。

 そしてその為には、屍人やつらをもっと知る必要があるんです、陽炎一族プロの手助けを借りて……』


 俺の訴えが通じたか、店長は陽炎一族について知りうる限りの情報を教えてくれた。

 曰く、陽炎一族とは平安時代から日本を陰で守り続けてきた戦士の一族だそうで、滅多に表に姿を見せないもんだから、長く生きている彼女でさえも片手で数える程しか接触したことがないという。


「ただ、古い知り合いに一人だけ"陽炎一族"との接点を持つ者が居りますの。

 その者にコンタクトを取ってみることにしましょう。

 もっとも、最後に会ったのがもう何十年も前ですので、連絡がつくかどうかも不確かですけれど……

 進展があり次第連連絡させて頂きますわね」

『……ありがとうございますっっ』


 感動の余り内臓が締め付けられそうになりながら、俺は首を垂れ感謝の言葉を絞り出す。


(店長っっ……本当に、有り難え話でっっ……!

 まさしく感謝しかねえ……!)


 "有り難え"。"感謝しかねえ"。

 『それしか言葉が見つからねえ』とは、まさにこのことなのだろう。



(あァ~脳裏に響くゥ……語彙ボキャブラリーの融ける音ォォォォ~ッホホーゥ!)


 

 かくして陽炎一族への足掛かりを得た俺は、未だお楽しみ中の蚕豆コンビより先にサイトウ地区へ戻ることにした。



――〔次は"泥得"。次は"泥得"。お出口左側です。忘れ物にご注意下さい〕――



(……着いたか)


 夜更け。乗客の殆どいない電車が最寄り駅に到着……蒸気機関みてえな音を立てながら開いたドアから、俺はそそくさと下車。

 改札を抜け、そのままサイトウ地区を目指す。

 時間帯が時間帯だから当然だが、明かりらしい明かりは街灯ぐらいしかない。


(夜道を徒歩で歩くのも平気んなっちまったよなァ)


 生前は夜道を歩くとどうにも不安や恐怖心に苛まれちまって、雑念だのなんだので気を紛らわせなきゃやってられなかったが、一度死んでみると不思議なくらい"そういう感情"が無くなってるんだと実感させられた。

 『満妄児』の店員やフィオーナ店長を、風景写真や工芸品と同じようにしか思わなかった件同様、部分的に"心が死んでる"ってヤツだろう。

 勿論そのお陰で便利になったのも確かだが、要所要所で人間らしく振舞えず、それでもどうにか人間らしく振舞おうと芝居に興じる虚しさには、まだ慣れそうもない。


(……さっさと帰るかァ~)


 歩くのも面倒だし"近道"をしよう。

 そう思った俺は、傍らにそびえる明かりの消えたビルの壁面をヤモリよろしくよじ登り、屋根から屋根へ飛び移りながら最短ルートですず屋を目指した。


(ま、やることは変わらねえや。店長からの連絡を待ちつつ、いつも通り仕事しながら屍人どもを刈るだけだ)


 徒歩の約半分程度の時間ですず屋に到着した俺は、そのまま自室で寝転がったまま朝を待つ……生前に比べりゃ"身体が求める睡眠時間"も減りはしたが、心の方を落ち着かせようと思うとそこそこ横になっとけって結論に至る。今からだと、目覚めは翌朝の八時ってトコだろう。


(いいさ、明日はどこの仕事も休みだ。屍人どもが現れでもしなきゃどれだけ休んでても問題はねぇなら……)


◇◇◇◇


「といったワケで御座いまして……」

「頃合い見て『満妄児みせ』に来て欲しいそうです」

『おう、報告感謝すんぜ。なら今夜にでも顔出すかァ~』


 店長から『件の知り合いとのアポが取れたので面会場所に案内したい』との連絡が来たのはそれから十日後、蚕豆コンビを通じてのことだった。

 死ぬほど時間がかかる、どころか『収穫なし』っつー最悪の展開も想定してた俺にとっちゃまさに僥倖……

 幸いにもその日は時間に余裕があったので、用事が済み次第『満妄児』へ向かう運びとなったのだが……


『留守、ですか……』

「はぁい♥ 申し訳ございませぇん♥」

「店長もギリギリまで粘られたようなのですがぁ~♥」

「どうにもならず、泣く泣くお店を後にされてしまいましてぇ~♥」


 なんと店長は店を留守にしていた。

 どうやらつい先程急用が入っちまったようで、然し『北川の為に今日は開けておくんだ』と鋼の意思で抗って下さったらしいが、事態が自体なんで退くに退けず……ってコトらしい。

 まあそこはしょうがねぇ。責任ある立場ってのはそんなもんだ。

 むしろ俺みてーな客でもねえ部外者の為に頑張ってくれたんだから、感謝して然るべきだろう。


『……てぇコトは、例のお方との面会も延期ですかねェ』


 内心残念ではあったが、店長が動けねえとあっちゃ仕方ねえ。

 ならまあ又の機会かな、なんて諦めて帰ろうとする俺だったが……


「あら、お待ちになって下さいませ北川様っ♥」

「実は店長から伝言を頂いているのですわ♥」

「『もし彼が店を訪れたら伝えてほしい』と頼まれておりましてっ♥」

『……伝言、ですか?』


 店長からの伝言、その内容は『諸々の準備はやっておくから自分抜きで知り合いとの面会に行ってくれ』とまあ至ってシンプル。

 件の知り合いへの事前連絡やアポ取りは勿論のこと、目的地の住所とアクセス方法やら先方での注意事項まで丁寧に纏めてくれたファイル(店長同様かなりのボリュームで内容が一々面い)まで準備してくれていた。ほんとしつこいようだが店長には感謝してもしきれねぇ。


(こりゃ陽炎一族、思いの外簡単に辿り着けるかもしれねぇな……)


 なんて軽く考えつつ、俺は目的地を目指して出発する。


◆◆◆◆


「……ここでいいんだよな?」


 電車を乗り継ぎ約二時間、人が住んでるかどうかも怪しい住宅街や暗い山道を歩き続けること一時間半……俺はどうにか目的地である、店長の知り合いの自宅らしき建造物の前に辿り着くことができた。

 ……"らしき建造物"なんて言い方をしたのは、目の前の"それ"が余りにも怪しげで、この世のものとは思えねえ――それこそ"空想や幻想の世界からそのまま実体化したような"――異様かつ現実離れした見た目だったからだ。


「人里離れた僻地に佇む、デカい門とだだっ広い庭つきの豪邸つーか洋館……『バイオハザード』っつーよりは『弟切草』、じゃなきゃ『青鬼』か『黒先輩』てトコかぁ~」


 確かに群れで人間に化けるヒルやら刀を振り回す魚の化け物、真っ青な全裸のマッチョに追い回されてもおかしくはねぇような雰囲気だ。

 全身真っ黒な乳でけえ仏頂面の不気味な別嬪女学生……は、屋敷に入る前から同行してなきゃいけねーから期待できそうもねぇが(そもそも俺は性欲死んでるから同行してくれたところで……だしな)。


「もしくはこの規模だし『ホームスケイプ』……いや、庭が派手なら『ガーデンスケイプ』の方か?

 フレンドリーなハゲ執事のオッサンが出迎えてくれて、茶や菓子でも馳走になれるんなら確かに嬉しいが……まあいいや。ともかく中へ入ろう」


 こんな時間帯に邪魔すんのも何か気が引けるっちゃ気が引けるが、事はそこそこ急を要する。

 それに店長のファイルにだって『"家主"は夜型だから接触するなら日没後がいい』と書いてあった。

 だったらもう、出直すなんて選択肢はないも同然……『それはそうとして、施錠されているかもしれないし、何より何も言わずに入るのは非礼だろう』と、レンガ造りで蔦の巻き付く門柱のどこかに呼び鈴がないか探そうとした、その時。


[鍵なら開いてますよ。どうぞお入んなさい]


 頭上から声をかけられる。

 あたかも俺の脳内を見透かしたような一言に、俺は思わず身構える。


[何をそんなに驚いてるんです。

 『建物の前に立っていたら警備担当者に話しかけられる』なんて、ごくあり触れた日常の一コマ……何も驚いたりするようなことなんてありゃしませんでしょうに]

『……ええ、確かに仰る通りです。実際此方としても、話しかけてきたのが普通の警備担当の方だったらこんな驚いちゃいないんですがね……』

[なんです、まるで私が"普通でない警備担当者"かのような言い方ですね]

『失礼。うちの地元じゃ、おたくのような方にはあまりお目にかかれないもので……』


 俺は"警備担当者"のいる方を()()()つつ、さらりと言い返す。


『というよりは、聞いたこともないぐらいですよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()なんてねェ』



 その一言で大体は理解できるだろう。

 俺に話しかけてきた"屋敷の警備担当者"……その正体は、門柱の天辺に堂々鎮座する"動いて喋る石像ガーゴイル"だった。

 モチーフはよくわからねえが、頭が鳥で四つ足動物っぽい辺りからしてグリフィンかなんかだろうか。


[ほう、それはそれは……どうやらお互い、文字通り"住む世界が違う"ようで。

 それと訂正させて頂きますが、私は"グロテスク"です。"樋嘴ガーゴイル"ではありませんので悪しからず]

『そいつは失敬。建築に疎いとは言え非礼をお許し頂きたい』


 グロテスク。

 現代日本じゃ『残虐的』やら『生理的嫌悪感を発生させるもの』を指す単語として定着してるのは言わずと知れた事実だが、元々は古代ローマの『人や動植物に曲線模様をあしらった美術様式』の名称であり、

 転じて建築界隈では中世ヨーロッパの教会建築の装飾なんかによく見られる『奇怪な生物の彫刻』の内、建物側面から雨水なんかを排出する雨樋の末端部分として彫られたガーゴイル以外のものを指したりするんだったか。


[いえいえ、わからなくても無理はありませんよ。何より私がグロテスクであるというのも、私自身が勝手に名乗っているだけと言ってしまえばそれまでですから……。

 ところで貴方、お屋敷に用があるんでしょう? 敷地内に入らなくていいんですか?]

『おっと、そうでしたねぇ。然しいいんですか、そんなホイホイ部外者を内部に入れちまって』

[ええ、構いませんとも。何方が入ろうと()()()()()()()……招き入れられるか否かを決めるのは、私ではありませんのでね]


 どうにも意味深な言い回しで敷地内に足を踏み入れるよう急かされる。

 まるで罠に嵌め陥れようとしてるんじゃねえかとすら感じたが……固より何が起ころうと覚悟の上だ。


(そもそもあんなのが警備担当の時点でこの屋敷とて異界で確定なら、たかが人間風情の常識など通用しねえ可能性すら否定はできねえワケで)


 俺は意を決して鉄製の門を自らの手で開き、屋敷の敷地内――本館へ続く石畳の道を有する庭園――へ足を踏み入れる。


(ええい、ままよ……来るなら来いっっ!)

次回、門を潜り屋敷の敷地内へ足を踏み入れたナガレを待ち受けるのは……

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[気になる点] 何時になったら戦うの? 戦闘シーンが観たいです。
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