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デッドリヴェンジ!-最愛の婚約者諸共殺されて腹立った俺は、最強ゾンビになって美人悪役令嬢とかイケメン人狼なんか連れて復讐序でに無双しようと思います-  作者: 蠱毒成長中
CASE2 死して怪物と化した男は、スラムの守り神となる

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27/87

老人の恩返し、そしてドヤ街での生活

第九話。ナガレ、衣食住を手にするの巻。

ドヤ街とはどういうものかについて調べながら書いたので若干投稿が遅れた。

もしドヤ街に関して誤った記述や認識があったらごめん。他意はないねん……。

ところで昨日ロクショウがアンケート取ってくれてたみたいで、

今後本作に期待する展開と題して「復習が果たせずともナガレが幸せであればそれでいい」みたいな選択肢に票が入ってたみたいね。

ただ先に言わせて頂くと、申し訳ないがその要望にはお応えできないであろう。

確かに投票者のその気持ちはすごくわかるし、私自身ナガレをただ不幸なままの男で終わらせるつもりはないけど、

一応これ青年誌連載のダークファンタジーか、深夜放送・サブスク配信のダーク路線特撮のエッセンスを加えた少年誌連載の王道なアクションものを意識してる所があるので、

その関係上主人公の周囲では常に何かしらの事件を起こさなきゃいけないし、主人公やその周辺人物が悲惨な目に遭う確率も高くなっちゃうのよね……。

そんなわけでオールハッピーというわけにもいかない本作だけど、今後ともご愛読頂ければそれ以上に幸いなことはないわけであって……。


 俺の名前は、北川ナガレ。


「おーぅキタちゃんよーぅ、そこ終わらせたら一旦休憩にしようやぁ」

『はい、畏まりましたァ』


 助けた爺さんの紹介で労せず(?)住居と仕事を手にすることのできた、元サラリーマンのゾンビ超人"死越者エクシーデッド"だ。


◇◇◇◇


 あの後、俺は爺さんに案内されるまま彼の暮らす街を訪れた。

 その街は……なんだろうな、"先進国らしくない"つーか"日本の街とは思えない"つーか……


 言っちゃ悪いが"貧民窟スラム呼ばわりが妥当なレベル"には荒れ果てた街だった。



「ようこそ"泥得どろえサイトウ地区"へ……ってなァ。

 ヒッヘヘ、ひっでぇトコだろう? 所謂"寄せ場"とか"ドヤ街"って奴だなァ」

『ドヤ街つーと……"大阪西成あいりん地区"とかスか?』

「おっ、よく知ってるじゃねーか。大体似たようなもんだよ。

 ま、西成みてーに観光客が来たりってのは滅多にねーがな」


 聞けば爺さん――名前は雲井さんといって、テレビ業界に身を置いた経験もあるらしい――はこの泥得区にもうかれこれ三十年以上住み続けている古株で、ドヤ街の一角を取り仕切る"顔役"でもあるという。


『街の顔役って、凄いですね……』

「いやァ、そんな大した事ァねーよ。顔役と言やあ聞こえはいいが、実態は雑用係みてーなもんさ。

 何せこの辺りは血の気の多いバカの掃き溜め、それこそ昭和の西成みてーな治安だからなァ。

 『俺ァ顔役だ文句あっか』と踏ん反り返った日にゃ死んだ方がマシってぐれーの目に遭わされちまう」

『……そういうトコで頑張れてるってだけでも結構スゴくないスか?

 俺なんて部下らしい部下を持った経験すらないもんで……』

「へへ、そう思うかい? あんがとよォ。

 だが大した事ねぇってのは本当さ……ここの連中は確かにバカで血の気の多いのばっかだが、

 元正しゃそいつらだって結局は"人間"……道間違えたり何だりで図らずも泥得(ここ)に来ちまっただけなんだ。

 だから大抵、奥底には思いやりの心や正義感ってもんが眠ってるし、接し方や扱いさえ間違えなけりゃ結構働ける……

 世間がどーとか関係なく、俺にとっちゃみんな"話せばわかる、信じられる奴ら"なんだよ。

 だから俺は奴らを信じてる。話せばわかってくれるし、どんだけダメに見えてもどっかしらいいトコがあるんだろうって、常々それを忘れねえように奴らと接してるんだ。

 んで、俺が奴らを信じるからこそ、奴らも俺を信じてくれる……寧ろ、奴らが俺を信じてくれるからこそ、俺も奴らを信じられる、つった方がいいかもなァ」

『互いに信じ合うからこそ支え合えるし、支え合うからこそ上手くやっていける、と?』

「そーいうこった。上手くやってけるっつーか、生きてけるってのかもしれねェなァ」


 なんて語らう内に、俺たちは一軒の建物へ辿り着く。

 『すず屋』と名付けられたそこは雲井さんが亡き先代から引き継ぐ形で経営している老舗の簡易宿泊所で、彼の自宅と泥得サイトウ地区の"区役所"をも兼ねる施設だという。


「幾らか部屋が空いてっから、好きに使ってくれていいぜェ」

『ありがとうございます。けど俺、持ち合わせとかなくて……』

「気にすんじゃねェ。確かにすず屋ウチは宿賃を取るが、元々日雇いの連中やホームレスなんかが相手の商売だ。儲けなんざ端から期待しちゃいねェよ」

『然し……』

「然しも案山子カカシもタカシもあるかィ、経営者オレがいいっつってんだから気にすんねェ。

 未来ある若者ガキが先の短ェ年寄りジジイの心配なんぞするもんじゃねーってんだ。

 宿賃は金が入ってからでいい、けといてやっからよ。

 なんだったらウチの客には先代の頃、俺がここに来る前からツケで泊まり続けてる奴もいるんだ、

 肩の力抜いて気楽にやりゃあいいんでェ~」


 冗談めかして豪快に笑い飛ばす雲井さんを見ていると、俺もなんだか元気が湧いてきた。


「さて、宿は決まったとして……次は仕事だな。

 兄ちゃんよ、おめェさんここに来る前は何の仕事をしてた?」

『普通にサラリーマンですね。といって、他の事業所が人手不足だってんで皿洗いとか厨房の手伝いとか建設現場とか、色々やってましたが……』

「ほうほう。て事ァ力仕事は結構得意ってか。ま、あのガキどもにあんだけやっといて力仕事が苦手だなんて馬鹿な話はねーだろうと踏んでたがよ。

 さて、とすりゃあ……今ならあそこがお誂え向きだろうなァ」


 そうして雲井さんに紹介して貰ったのは、建設現場での力仕事だった。

 現場を取り仕切るのは"クロさん"こと九鹿くろくさん。雲井さん程じゃないが泥得暮らしの長い古株で、身寄りのない雲井さんにとっては弟のような存在だという。



「君が雲井の兄さんの言ってた新人くんかね」

『はい。北川と申します。宜しくお願いします』

「ふむ、北川くんか……うむ、宜しく頼むよ」


 早速現場に案内された俺は、現場の先輩たちから仕事を教わることになった。

 正直言うと、事前に雲井さんから聞いていた話もあり現場に馴染めるかどうか不安だったが、幸いにもその懸念は杞憂に過ぎなかった。

 というのも、九鹿さんの現場で働く先輩たちは幾らか荒っぽく若干野蛮でこそあったものの皆義理人情に厚く心優しい人たちで、仕事に関する事柄以外にも様々な"ドヤ街での生活に必要な知識や知恵"を教えてくれた。

 そのお陰もあって俺が泥得サイトウ地区へ馴染むのにそう時間はかからず、二週間もする頃には近隣に仲のいい顔見知りが何人もできていた程だ。


 また、俺がこなした仕事は何も建設現場の仕事ばかりじゃない。

 時には道路の舗装やトンネル掘り、池や水路の掃除から広大な私有地の草取り、果てはスズメバチやイノシシの駆除など、主に雲井さんや九鹿さんを始めとするサイトウ地区の大物たちが仲介してくれる仕事は多種多様の一言に尽きた。

 時には学校・博物館等の警備に他の日雇い労働者や観光客の護衛、果ては暴力団に頼まれて麻薬の売人や、暴走族・愚連隊といった不良連中を相手に大立ち回りを演じたり……なんてこともあった。

 正直今思えば法に触れるような真似もしたかもしれないが……まあ、まず今の俺は死人の上化け物だから法律を適用できるかもわからないし、何より雲井さんたちサイトウ地区の大物が『信用に値する』と太鼓判を押すほどのクライアントなら然して問題はないだろうと、そう思うことにした。


 勿論、仕事に励みドヤ街での生活を満喫する一方、エックスに託された"復讐"も忘れたわけじゃなかった。


(生活基盤も安定してきたし、そろそろ動くか。

 まずは手始めに、情報収集からだな……)


 ドヤ街に集う人々……日雇い労働者や浮浪者、また裏社会に身を置くような面々の中には、得てして一般人カタギじゃ知り得ないような分野・界隈に明るい事情通が多い。

 最初は冗談半分というか、あくまで神話や都市伝説の話を振る程度で屍人について飯の席で話題に出した所、予想外の収穫が得られたのを今も覚えている。


 そう。あれは確か俺が泥得に来てから十日目の夜。

 川釣り好きの沢野さんが近くの水路で外来種の大ナマズを捕まえてきたので、キムチチゲにして近所の皆で食べることになった日のことだった。



「ぉーう、キタちゃんよぉ~オメーさんも遠慮しねーで飲めってんだコノヤローゥ」

『ハハハ、これはどうも……』

「ちょいとあんた、アルハラしてんじゃないよ全く」

「そうですよ旦那ァ、キタちゃんお酒飲まないんですから」

「キタちゃんも無理しなくていいからね? それよりほら、もっと食べな?

 ほら、ナマズの背中んとこあげる。アブラ乗ってて美味しいわよ~」

「そうだよ。君はデカいしよく働くんだから、たくさん食べて体力つけないとさっ」

『ありがとうございます、カノコさん。ではお言葉に甘えまして……

 ン、本当に美味しいなコレ。今まで食べたことないくらいかもしれない』


 和気藹々と食事が進む中、大鍋の残りが三分の一になった辺りで俺は話題を切り出す。


『……ところで皆さんにお聞きしたいんですが、

 近頃あちこちでゾンビに襲われたなんて噂を知りませんか?』


 精々『知らない』とか『突拍子もないことを言うな』、それか『飯時だぞ空気を読め』なんて言われて適当に流されるだろうと、そう踏んでいた俺だったが……


「知ってるも何も、ここ最近はどこもその話題で持ち切りだよ!」

「オウヨ、この前里帰りしてきた俺の同級生のヤツも見たっつっててなァ!」

「蕎麦屋のハルちゃんってご存じ? 彼女、この前ゾンビに追い回されたって言ってましてねぇ~」


 返ってきたのは予想だにしない反応の数々だった。

 どうやら泥得に住む人々も屍人の存在をよく知っているようで、襲われかけたとか、何なら返り討ちにしたなんて事例も聞くらしい。

 "願ってもない好機(チャンス)"ってのはこういうのを言うんだろう。

 俺は早速その場の人々に事情を――『ワケあってゾンビ騒ぎを追ってる』ぐらいに端折った形で――軽く説明し、もし何かあれば伝えて欲しいと頼み込んだ。


「なるほどキタちゃんは奴らを追ってンのか……」

『はい。詳しくは話せないんですが、奴らとは浅からぬ因縁がありまして……』

「そーかそーか。ンなら話は早ぇ。この界隈でゾンビ絡みの話が入ったら真っ先にキタちゃんへ伝えるよう俺が手配しといてやらァ」

『ありがとうございます!』

「いいってコトよ。俺らとしても断じて他人事じゃねェからなァ~」


 更には雲井さんの協力も得られることになった。

 海千山千なドヤ街の顔役が力を貸してくれるとなれば、誇張抜きに百人力だろう。



(待ってろ、黒幕のヤロウ……ご自慢の配下共々纏めて刈り尽くしてやるからよォ!)

なんか、バトルに突入させる予定だったけどまだ暫く無理そうだなぁ……。

ブクマされず感想もつかないのって総じて地味な展開ばっかり続いてるからだと思うし、

ともすればそろそろ何とかしなきゃいかんのだがどうにも上手く行かんのであって……。


次回は泥得サイトウ地区で暮らしつつ屍人狩りをこなすナガレの日常風景をお届け予定。

屍人以外にも色んな人外が続々登場……かもよ?


感想・ブックマークがあると励みになるから宜しくね。

ブックマーク一件につき飯屋で悪さする奴らが一人改心するよ(多分)。

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― 新着の感想 ―
 地味っていうよりも丁寧さという印象です。まあこういうところはせっかちな展開を求めるラノベには向かないのかも知れませんけど、でもこれはこれで味だと思いますよ。  ……といっても、あまりダラダラっていう…
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