見始めた
世の中には決して見てはいけないものがある。怖い人たちの会話やテスト中の賢い人の問題用紙はたまたお化け。そんな中でも特に見てはいけないのが、「神」の存在だろう。それらを見てしまうと今後の生活は彼らのことを忘れられない。これは夜にみられた鉄平の話。
「秘密の10怪談って知ってる?」 帰りの会が終わった後、友達の美帆がきいてきた。
「あぁ知ってるさ。確かこの学区の都市伝説みたいなものだろ。本当にくだらない話だ。あんなものは
くだらない大人たちがくだらないやつを非行に走らないようにする為のはったりだ。」美帆の質問に返答すると不満そうな声が聞こえた。「でも隣のクラスの仲山さん今日も学校に来てないんだよ。噂話じゃ夜に連れていかれたって。」まるで俺を怖がらせようとして言ってるみたいだ。「残念だったな。俺は加藤の説教以外は怖くねえんだ。それでは部活に行くからな。」強引に話を切り上げて俺は武道場へ向かった。
午後6時
「マジで疲れた。いつも思うけど加藤の野郎体力ありすぎだろ。人間の力じゃねえぞ。」剣道の稽古が終わった後、俺はいつものように後輩たちと愚痴を言い合ってた。「先輩は部活でも授業でも加藤がいますね。」「マジで終わってる。授業では一番最初に当ててくるし、日直の仕事もやらせてくるから楽しくないわ。」「噂なんですけど、あいつって夜に見られたらしいですよ。」後輩までもが10怪談を信じていやがった。「おいおい。お前そんなこと信じてんのか?少し考えればわかるだろ。」ため息をつきながら話すと後輩はすみませんと謝った。「まぁいいや。それよりもゲームしようぜ。今開催中のイベント回ろうぜ。」こうして俺たちは熱中してゲームをやっていた。
午後6時45分
「下校の時間です。校舎に残っている生徒は帰る準備をして家に帰りましょう。外は暗くなってきているので、くれぐれも事故や夜に気を付けて下校してください。加藤先生。至急職員室までお戻りください。」チャイムと一緒に放送が聞こえてきた。「そろそろ帰りましょうか。教員に見られたら反省文書かされますよ。」「それじゃ、さっさと帰るか。」駐輪場に行って鍵がつっきぱなしの自転車に乗って正門まで行ったとき、美帆から電話がかかってきた。「彼女さんからですか?お熱いですね。」後輩が笑いながら質問してきた。笑いながら「そんなんじゃねえよ。悪いけど電話に出てから帰るからここでな。また明日。」「お疲れさまでした。」後輩たちはそう言って行ってしまった。
ピッ
「美帆?どうしたこんな時間に。俺はま『お願い助けて!!今変なのに追われてるの。」は?」
午後7時
「おいおいどういうことだよ。変なのってどんなんだよ。」美帆からのSOSに驚きながら詳細を聞こうとした。「うまく言葉にできないんだけど、あれは人じゃないの。とにかく山付近のコンビニの近くに逃げてる。お願い鉄平!!私を助けて!!」ツーツーツー
「おい!美帆!!どうなってんだよ。くそが!」ガシャーン 美帆からのSOSにどうすればわからなくなって自分の自転車を蹴っ飛ばした。「鉄平!ものに当たってどうしたんだ。」担任の下田がやってきた。「下田!緊急事態なんだよ!さっき美帆からSOSの電話が来たんだ!」ついつい呼び捨てで読んでしまった。「何!どんなことを言っていたんだ!」俺は下田にSOSの内容を伝えた。下田はうーんと悩みながら「それは夜だ。お前も聞いたことあるだろ。この街には夜がいるという話だ。あれは妖怪やお化けといわれているが正確にはこの街を守っている神だったものだ。」下田の発言に驚いた。
「その話は大人たちが作った話だろ?子供たちを非行に走らせないようにするものじゃないのかよ。」「それは結果的にそういう話にしたんだ。もともとこの街は人と神の交流していたんだ。人は神の言うことを聞き信仰する。それに応えるように神は人に利益をもたらす。こうして互いの関係が形成されていったんだ。しかしある時から神の様子がおかしくなった。急に生贄や供物の量を増やすように命じたんだ。最初は素直に従っていた人々も次第に神に疑問を抱き離れてしまった。今その神を信仰するのは本当にやばい奴だけだ。」言いづらそうに平野はしゃべった。「神?なんなんだよそれ。そんな話は聞いていねえよ。」普段はビビらないはずなのに恐怖を覚えてしまった。カーブミラーで自分の顔を見てみると青くなっていた。足も震えていた。「これから加藤先生の家に行く。今日は会議がある日なのに放送をかけても来なかったんだ。この学校に来たばかりだからわからなかった可能性があるからね。僕も用事が終わり次第美帆を探しに行くよ。これが僕の連絡先。携帯に登録しておいてくれ。あと美帆の家には僕から連絡を入れておく。」下田はこう言って車で去ってしまった。
「・・・美帆。無事でいてくれよ。」そう言って自転車を起こし家に帰らず美帆を探しに行くのだった。
自転車の風は生暖かく、植物は風になびいて陰口を言われているようだった。星は偽物の宝石のようにくすんでいて、月はまるで馬鹿にするかのように笑っていた。