ショートホラー第12弾「留守電」
「昨日さ、留守電メッセージが入ってたんだけどさ」
大学の講義室で友人が話を始める。
何でも昨日寝る前に携帯を見たら留守電メッセージが入っていて再生してみたらしい。
『○○保育園です。20日の件ですが園児8名、大人2名で行きますのでよろしくお願いします』
こんなメッセージが入っていた。
「間違い電話だよなこれ。何ていうか笑っちまったよ」
大方社会見学の予約か何かだったのだろう。
携帯電話に入っていたのは連絡先が携帯電話だったからだろうな。
最近じゃ固定電話を置くところも減ってきたらしいし時代だよなぁ。
そんな事を考えていたら教授がやってきて授業が始まった。
□
それから数日後、友人はまた同じメッセージが入っていた事を話していた。
余程似た番号だったか先生がそそっかしいのだろうな、と笑う事に。
その日の夜、家に帰って家族にその事を話して笑い合っていたがふと母がある事に気づいた。
「そのメッセージ、○○保育園って言ってたわよね?」
「そうだけど?」
「あのね、確かにそういう名前の保育園ってあったわ。ただ、もう無くなっちゃったのよ」
「え?」
母によると数年前に散歩をしていたところ酔っ払い運転の車が突っ込んで来て引率の先生2名と園児8名が亡くなる大惨事があったそうだ。
そう言えば一時期話題になっていたっけ。
夕食後、胸騒ぎを覚えた俺は友人に電話をした。
事件の事を伝えるが、友人は鼻で笑っていた。
日付は19日。
「それはきっとたちの悪い悪戯だよ。仮に明日幽霊が来たならもてなしてやるぜ」
結局、その後しばらく取り留めも無い話をしてその日は眠りにつくことにした。
□□
翌日、友人は大学に来なかった。
その翌日もやはり、来なかった。
心配になって電話を掛けてみるが出る気配が無い。
ひとりぐらしをしているというアパートに行ってみるも人のいる気配は無かった。
そして結局、そのまま友人は失踪してしまった。
あれから数年、俺は大学を卒業し就職、そして結婚した。
ある日の事、家に帰ると妻が顔をしかめて留守電に変なメッセージが入っていると訴えてきた。
嫌な予感がしつつメッセージを再生すると……
『○○保育園です。20日の件ですが園児8名、大人3名で行きますのでよろしくお願いします』