冷めたコーヒーと、絶望と
初投稿です。エッセイのような、私小説のような、なんとも方向性の定まらないものになりました。
冷めたコーヒーは、飲む気にならなかった。
インスタントとはいえ、朝食に、と淹れたコーヒーは、家族の世話をしていると知らぬ間に冷めてしまう。
「母さん、オレの体操服どこ?」
「今日のワンピースどう? 可愛い? 変じゃない?」
「弁当、弁当。あ、俺今日は部活で遅くなるから」
子供達が慌ただしく登校していくのを見送り、ゴミ出しをして、ついでに庭木の世話をする。
『毎日平和で、幸せ。』
庭木の世話をして、うちに入る。
手を洗い、子供達が出したパジャマの洗濯をして。
洗濯機が止まるまで、一息つこうとダイニングに行き、テーブルの上の冷めたコーヒーに、軽く絶望を感じる。
『毎日が幸せ。それは嘘じゃない。』
自分の椅子に座って、テーブルに肘をついてうなだれ、両手で顔を覆う。両の目から涙がツーッと流れる。
『この絶望は、何。』
ただコーヒーが冷めてしまった、それだけなのに。
自分が絶望を感じて、こんなにも泣けてしまう理由が、コーヒーが冷めてしまった、ただそれだけ、という事に呆然とする。
冷めたコーヒーに、絶望、した訳じゃない。
冷めたコーヒーは、飲む気にならなかった。
ただそれだけ、の、はずだ。
『わからない、わからない。』
感情が混乱して、暴走して。流れていた涙が大粒の涙に変わっても。洗濯が終わった事を知らせるピーピーと鳴る音を聞いても。
この感情が何なのか、私にはわからなかった。