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チョコレート・サイダー  作者: 大饗ぬる
10/11

最終章 コレが現実③

〜希望 I was saved miraculously〜

 少女姿のマナさんと二人きり。ワタシ、……いや僕より先にマナさんが口を開いた。


「ネコちゃんの言ったとおり、唯人くんは忘れちゃってるんだね……。この姿、覚えがない?」

 泣きそうな顔で笑った。

「あ……」

 小学生の頃の姿……、直井さんの小学生の頃の姿だ。

「横断歩道の話、好きだったな。……わたしはね、もう何度も唯人くんとこの()()()をしてるの。気が遠くなるほど長い間。唯人くんは覚えていないと思うけど……見捨てられたこともあるんだよ? でも今回は助けてくれたから赦してあげる」

 何の話しか信じられないという表情がでていたんだと思う。

「信じられないと思うけど、このゲームの世界では()()なの。わたしはね、数え切れないぐらい繰り返すうちにココロが負けちゃったの。……この世界の住人になることでしあわせを手に入れようとして——」

「じゃ、じゃあ現実のマナさんは!?」

「唯人くん、唯人くんは知っているはず。ううん、覚えているはずだよ。唯人くんは目覚めなきゃ。わたしみたいに過去にすがっちゃだめ……。現実で叶えなきゃ」


 僕は少しずつ思い出していた。


 ——久々に出た外でマナさんに出会ったんだ。

 でも色々言われるのが嫌で「唯人くん」と名前を呼ばれでも止まらず逃げて……

 道路に飛び出した僕を、マナさんは僕を助けようとして…………



 撥ねられた。



 僕は受け入れられず立ち尽くすのみ。

 誰かが救急車を呼んで、僕は……()()()


「大丈夫だよ……唯人くんのせいじゃ……ないから」

 ってマナさんは言ってくれたけど————

「ああああぁぁっ! 僕は……僕はなんてことを……身勝手に逃げた僕のことを! マナさんは気にかけて……声をかけてくれて……! そんな自分のことしか考えてない僕を助けてくれたのに!!!」

「泣かないで大丈夫だよ。思い出してくれてありがとう。これでわたしもこのゲームから解放される……」

 マナさんはキラキラ光って粒子みたいになって……さらさら空気に溶けて——

「行かないで……僕は僕は……」

 まだ謝っていない、という言葉は嗚咽でまともに言葉にならくて、もう触れられないマナさんを抱きしめようと手を伸ばした。

マナさんは最高の笑顔でもう一度、「大丈夫」と言って僕に口づけして消えた。僕だけを残して。


 しばらくぼうっと膝を抱えて座っていた。頭が壊れそうだった。 むしろ壊れてしまえば楽になれるのに。

 だめだ。

 マナさんが命をかけて助けてくれたのに、僕がここでまたゲームの世界に逃げたらそれこそ本当に最低だ。僕は現実の世界に戻らなきゃいけない!

僕は全てを思い出し理解していた。これは僕のための世界だったんだ。マナさんもクロネも僕のために。

 僕は僕の名前を呼んだ。


「唯人!!」

 叫ぶように呼ぶとクロネが現れた。

「マナからすべてを聞いて思い出したみたいだね、もう一人の僕。さぁ、さようなら」

「さようなら、もう一人の僕」

 と応えると、目の前が真っ黒になった————



 目を開けると僕は病院にいた。手術室の近くのベンチに腰掛けて眠っていたようだった。

 隣には直井さんの両親がいた。僕はなんて謝ったら良いのか、どうしたらいいのかわからなかった。

 僕のせいで直井さんは……。


 手術中のランプが消え、中から医者が出てきて簡素にこう言った——。


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