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第三の再会

 休憩という名目で図書館から連れ出されてやってきたのは、ローエンの言ってていた中庭だった。城の中心からは離れているので、人が少なく、静かだった。その上、この庭園は王族のために造られたものであり、本来は中に立ち入れないのだけれど、私は半ば強引に連れて行かれてしまった。




「私、本当に入ってよかったの?」

 ローエン自身は王族だから別にかまわないのだろうけれど、この庭の門番も困ったような顔をしていた。彼らでさえはいることが許されないのに、王子同伴とはいえ、囚人をその中へ入れるのだ。なかなか難しいことだったと思う。

「さっきも言ったけれど、ここにはほとんど誰も来ない。来るとしたら俺だけだ」

 そう言いながら、ローエンは庭園の中央にあるガゼボで寝転んだ。どこから持ってきたのか、クッキーをつまんでいた。


 私はこの庭園を改めて眺めた。薔薇などを中心に植えらていて、見ているだけで胸が弾んだ。こんなに綺麗なのに、どうして王族は来ないのだろうか、こんなやつに独占されてかわいそうだと思うけれど、だからこそ、連れてきてもらえたのかな、とも思う。他の人がいたら、驚いてしまうだろうから。


「ローエン、誰か来たみたいだよ」

 一人、ゆったりと歩いてくる男性が見えた。

「へぇ、どんなやつだい?」

「ええと……金色の長い髪で、ローエンみたいな服を着てて、腰に剣を差している人」

「なんだって!?」

 滅多に焦らないローエンの顔が明らかに変わる。焦りと畏怖と……様々な感情がおり混ざった表情で、いつになく真剣に顔を合わせる。

「ガーベラ、悪いことは言わないから伏せていた方がいい。いや、むしろ隠れていた方がいい。その木の陰に隠れていろ。やってきているのはこの国の王様だ」

「王様!?」


「ローエングリン、何をしている?また町娘と戯れているのかね」

「彼女は悪くありません。俺がここに連れてきたのです」

「隠さなくてもよい。別に責めているわけではない。娘、顔を見せてみよ」

「っ!?」

 息をのむ。今まで感じていた畏怖の感情、強大なものを目の前にしたときのような気持ちの正体、それが私には理解できた。この世のものとは思えない、ありとあらゆる美と業を詰め込んだような、存在するものすべてを破壊し尽くす強大な獣のような方。

「らいんはると、さま」

 心が幼女になった。




♢♢♢

「らいんはると、さま」

 その美しい獣に目を奪われていた。あの絶対的な存在、美しき破壊の君。


 王は私を一瞥し、ああ、と納得した表情を浮かべた。

「見てくれは変わったものの、かつての」

「はい!ラインハルト様にお仕えしていた、マリアです。再びあなた様に出会えたことを心より感謝致します」

 私の体はかつてのように動き、ひざまずいた。

「おいおい……俺の時と全然違うじゃないか」


 この方―――ラインハルト様に前世の私は助けられた。とある大帝国の実験隊として生み出され、育てられた私には超能力が植え付けられており、その力で意図せずに周りを傷つけてしまっていた。誰からも忌み嫌われた私に手を伸ばしたのがこのラインハルト様だった。その世界でも簡単に言ってしまえば悪者で、この方が所謂ラスボスだった。私はそのラスボスの隣にちょこんといる幼女だった。いつも優しくしてくださった、遊んでくださった、大切にしてくださった、この方が大好きだった。だからこそ、勇者の負けてしまったときも彼のそばでともに果てた。



「弟よ。いや、かつてのマリアとの縁をもつ者よ。お前はいつこの娘のことを知った?」

「はい、陛下。この場合、陛下とお呼びするべきではないのかもしれませんね」

 そう言うと、私と会話をするときのような胡散臭い雰囲気を身にまとった。

「彼女と俺は悪魔であり、それぞれ自分の所属する勢力が勝利するために尽力していた。けれど、その途中で彼女は死亡、俺もそのあとなんだかんだ死んだ。それからこの世に生を受けて、アンタの弟として生きてきた。この子に出会ったのは偶然だよ。彼女の牢が賑やかだったから行ってみたら偶然、ってね」

 先ほどとはうって変わって崩れた言葉を紡いだ。本質的に彼はこういう人間なのだ。それと、私という存在がいるからある程度無礼を働いても許されると確信しているのだろう。

「ふむ。その様子ではほかにも我々のような者がいるようだな。ではお前が知り得た限りでかまわない、彼女との縁がある者を夕食後連れてこられるだろうか」

「お安いご用ですよ。その時間だったら、きっと帰ってきているはずだ」

 視察は一日早く終わらせることができたらしい。仕えるべき王子が仕事から帰ってきたら待っているんだ……吃驚しないといいけれど。そんなことを考えていると、ラインハルト様の視線が私に向いた。

「では、マリア。私の部屋に来るといい」

 かつてのような笑みを浮かべて、手を差し出す。

「んん?」 

 確かに私はマリアだけれど、そこまで子供ではありませんよ!


 ラインハルト様。三人目です!最初の予定ではローエンのお父さんにしようとしたけれど、年齢的な問題で長男です。

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