第2の再会
今回は前回よりも短いと思います。繋げてしまうと長くなりそうだったので、区切りのいいところで切らせていただきました。
2人目の前世の仲間()と再開します。仲間()です。1人目の黒川くん、もといヨハンはからかうこともあるけれど、基本的には真面目な子です。対照的に次は軽くて若干信用ならない子です。
楽しんでいただけると幸いです。
「ガーベラ」という素敵な名前をつけてもらって以来、すぐに反応ができるようになるため、ヨハンは私をそう呼ぶようになった。私も「ヨハン」と呼んでいる。最初の頃はお互いに違和感が多かったが、一週間も過ぎれば慣れていった。
今日もヨハンはこの牢獄にやってきた。
「おはようございます、ガーベラ。今日の朝食をお持ちしました。」
お盆にのったパンと野菜のスープ、それにチキンのソテーとデザートのフルーツは明らかに囚人が食べるものではないと思ってる。刺客時代に、なんとか脱獄できた仲間から聞いた話によると、パンの端と冷めた野菜の屑のみのスープを食べていたらしい。それとこれは天と地の差がある。
ヨハンは通常の囚人の食事を私に食べさせるのは許せないらしく、他の囚人とは別のものを用意してくれている。ありがたいことこの上ないけれど、本当に目をつけられてないか、心配でしょうがない。
「1つ、お話ししておかなければならないことがあります」
お盆をテーブルに置くヨハンの面持ちは神妙なものだった。
「明日から3日間、視察研修が入ったのでしばらくこちらに来ることができません。少しの間ですが、ガーベラに不自由な生活をさせることになります。申し訳ございません。連絡手段もないので、何かあっても駆けつけることができないことが無念です」
彼も貴族だから、こういうものがあるのは仕方のないことだと分かっている。上からの命令であれば、エリートコースに乗った偉い人の子供でもまだまだ駆け出しなのだ。深刻な問題とかではないから、一安心できた。
「視察研修と言っても、王領へ行く王子の視察について行ってこれからに活かすように、というものですので延長するようなものではないので、終わり次第すぐに戻って参ります!」
視察の準備があるらしく、その日は食事を持ってきてくれるだけで、長居はしなかった。
♢♢♢
正直に言えば、ヨハンが来なければとことん暇である。一応、持ってきてくれた本はある。けれど、何時間も本を読んでいるのも耐え難いものがある。
「やっぱり暇だな…」
何もしないことはある意味で拷問だと改めて認識できる。することがなさすぎて発狂したりはしないが、これならば労働をした方が何も考えずに済むだろう。とりあえず、ヨハンが戻って来る前に、持ってきてもらった本を読んでしまおう。届く範囲にあった本を手に取る。持ってきてもらった本はこの国の歴史であったり、慣習についてだったり、城下町で人気だという物語であったり様々だった。私が手に取った本はこの国の歴史をまとめたものだった。
国の歴史はとっても面白いものだと思う。その時代にいたわけではないから、どこまで本当のことかはわからない。けれど、研究者たちが地道に発掘や調査、資料を探して発見し、断定されたものが史実として本や学校で学ぶ教科書の一文になる。その血と汗の結晶を甘んじて受けられることは本当にありがたいものだ。
そして、この国の王権が今の国王の一族になったあたりのページを読んでいる時だった。
「君、何を読んでいるんだい?」
1人の白い軍服を着た軽薄そうな男が鉄格子の外に立っていた。
ちょこっとだけ出ました。
次の話で細かいプロフィールなどがわかります。メインが全員出たあたりで、一度登場人物まとめ回を作ろうかなと思っています。