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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

名もなき約束の木の下で

作者: DEER

いやはや難しいもんですな! 

なんとか人に見せても……大丈夫多分! ってところまで頑張りました。

何か書きゃいいか分かりませんが……まぁ5000文字程度です、あらすじなんてあったもんじゃないさ。


ちょこっと開いてみた方、暇ならどうか読んでみてくださいな。


全てはこの木から始まったんだっけな……」

                   立派な鎧に身を包み、歴戦の戦士然とした男がポツリと呟く。

           「アルマ……あれからいろんなことがあったんだ」

物思いに耽るように言葉を紡ぐ。

      「いろんな仲間にもあったんだ……皆気のいい奴らでさ」

軽く笑いながら過去を語るその男の顔は、ちょっと照れた表情ではあったが……どこか寂し気であった。

             「あれからちょうど五十年経ったんだ……」

                   その男の前には他よりも少し大きい桜の木と……

             「なぁ……俺は君との約束を守れたかな?」

小さく石が積まれただけの……

少女の墓があった……


もう男は動かない。

かつて少年だったその男は昔、ここで少女と約束を交わしていた。

その約束はあまりにも青臭く……言えば青春であった。

この男は間違いなく約束を果たした。

私はそう思う。

しかし……どうしてこの男はこんなにも。

泣きそうな顔で……縋るような声でここに来たのだろうか。

私は知らない。

それでも私はこの男が少女との約束を果たしたところをしっかり見届けた。

誇っていい、お前は約束を守った。

だから……ゆっくり休むといい。

願わくば……この二人があの世で幸せになれるように。

私は見るていることしかできない。

それでも……この願いが天に届いて欲しいと強く願おう。


 神とやらから声が届いた。

 レベルがどうたら進化がなんちゃら……

 私には分からなかった。

 それでも……分からないなりに答えてみた。

 少年と少女……二人だけのこの空間を守りたいと。

 私は大きくなった。

 二人を覆うように幹を広げ、何人たりとも入ることを許さない二人だけの空間を作った。

 私は見ていることしかできなかった。

 でも今は違う。

 約束する、絶対に君たちを守るから……。


 知らない誰かが来た。

 戦士風のガタイのいいスキンヘッドの男と、神官風の女、見るからに魔女の女の三人組だった。

 何を話しているかは分からない。

 でも何かを探していた。

 神官風の女がこちらを指さしていた。

 その後戦士風の男が私を切ろうと斧を振り上げた。

 でもその斧は私には届かなかった。

 魔女っぽい女が止めていた。

 そういえばこの女は見たことがある。

 一度少年が青年になった頃に二人でここに来ていた。

 あぁ……少年の仲間だったのか。

 二人の空間には入れてあげられないけど、心配する気持ちはよく分かる。

 私は幹をずらして中を見せてあげた。

 私が覆っている間は時間が止まっているらしい。

 少年はあの時のままの姿だった。

 少年は約束を果たした、だから弔いをお願いしたい。

 私は殆ど動けない。

 代わりに……どうか。

 三人は戸惑い、叫び、泣きながらも最後は冥福を祈ってくれていた。

 少年……本当にいい仲間を持ったね。


 あれから色々な人が来た。

 全員知らない人だ。

 あれからいろいろ変わった。

 私は大きくなった。

 私を中心に街ができた。

 この人たちは何なのだろうか。

 二人の空間を邪魔するならどこかに行ってほしい。

 でも私には追い払う力はない。

 だからせめて……強固に守ることにしよう。

 もっと大きく……もっと太く……


 皆私の前で約束をするようになった。

 しかも私相手にだ。

 何故だろう?

 なんでもいい。

 かつての少年のように約束を果たそうと頑張る人たちは応援したい。

 果たした人には惜しみない称賛を贈りたい。

 人は約束する生き物なのだろう。

 彼らもまた少年なのだろう。

 そうなら私は守りたい。

 彼らとの約束と……彼らの場所を。


 長く果てしない月日が流れた。

 私は大きく、天に届くほどにまで大きくなった。

 あれから一度天の声が聞こえたことがある。

 進化だそうだ。

 また私は守れるようになれるらしい、その可能性に喜びを隠せなかった。

 私は守ることにした、彼らを……この国を。

 約束する者、果たす者。

 その全てに祝福を与えたい。

 そうして私は世界樹となった……。


 歴史は繰り返すものだ。

 かつて少年が約束したように、また少年が現れた。

 勇者と呼ばれたその少年は私に魔王を倒すことを約束していった。

 大事なものは見失わないでほしい。

 かつての少年は約束に囚われ過ぎていた、だからというわけではないが……後悔していた。

 勇者に祝福を。

 どうか今度は笑って帰ってきて欲しい。


 数年経った後、また勇者が現れた。

 今度は少女だった……あまりにも若すぎる。

 こんな少女が魔王を倒すと私に約束していくのだ。

 どうして他の人間は約束しに来ない?

 不思議だ、全く持って不思議だ。

 それでも少女の目は本気に見えた……本気なのだろう。

 どうか無事に帰ってきて欲しい。

 勇者に祝福を……。


 なんということだ!

 少女は確かに帰ってきた!

 しかし誰がこれを無事と言えようか!

 背中には無数の爪痕を残し! うら若き乙女の顔には幾多もの切り傷が!

 あぁ! 行かないでくれ! そんな傷では死んでしまうぞ!

 私の声は届かない! 私の体は動かない!

 今ほど我が身の無能を呪ったことがあっただろうか……。

 どうか……お願いします神様! あの子を生きて帰してください……。


 それからまた数年の月日が流れた。

 あれから少女は帰ってこない、ずっと……ずっと待っているのに。

 今なら私の中で眠っている少女の気持ちが分かる、待つとはこんなにも苦しいものなのかと。

 私の葉はどのような怪我も、失った腕さえも元に戻すらしい。

 私から染み出す水は万病に効くらしい。

 それでも私はあの少女をここに生きて帰すには祈ることしかできない。

 あぁなんと無力か!

 誰か……誰かあの少女を!

 未来の可能性に満ちた少年少女たちを誰か救ってきてくれ!

 あぁ誰にも私の声は届かない。

 絶対に……絶対に帰ってくる。

 そう信じて私はここを守り続けよう……いつまでも。


 また勇者が来た。

 今度は少年だ。

 また約束をしていった。

 ……一体何人目だ?

 十から先は数えるのが辛くなって数えていない。

 どうして勇者は皆若いのだろうか……どうして……どうして。

 一度勇者の少女が殺される瞬間を見たことがある。

 モンスターから命辛々逃げ出して、必死でこの国に走っていた。

 その少女は頑張った、あと少しだった。

 あと少しの所で魔物に後ろから貫かれてしまった。

 少女は私との約束を守ろうと命を懸けた、そして儚く散って行った……。

 どうして……どうして……。

 どうしてこの国の者たちは勇者を助けなかった!

 勇者は命をかけて、世界を守ろうと全力を尽くした!

 なのにこの国の者たちは一体何をしただろうか!

 あの勇者の少女は死なずに済んだはずだ!

 もしあの時……この国の者たちがモンスターを食い止めるために! この国の中からでも援護していれば!

 この国は間違っている。

 勇者は必ず若い男女一人のみ、そして数年単位で新しい勇者が生まれて……散って行く。

 勇者は世界を守るために戦うが、他の者は安全地帯で何もしない。

   間違っている

        まちがっている    間違っている

  間違っている                       マチガッテイル

                間違っている!

私はこの国を守るべきなのだろうか?

本当に私はこのままでいいのだろうか……


                断じて否だ!

 

 私はこの国の為にここを守ることを辞めよう。

 次に私の目の前に現れた勇者に、私の全ての力を与えよう。

 決して傷つかぬように、必ず生きて帰れるように!

 待つのでは駄目だ ! 守らなくては!

 誰も勇者を守らぬならば、私が……私だけが勇者を守ろう!

 さあ勇者よ……早く私の前に現れるのだ。


 おぉ勇者よ、よくぞ私の下に現れた!

 さぁ! そなたに祝福を贈ろう!

 私の全てを以て過去の勇者たちの無念を晴らしてくれ!

 力を与えるのに合わせて私は枯れていった。

 私の全てだ……この国を守る力なんて必要ない!

 私が守っているからこの国は勇者にすがるのだ、そして勇者を見捨てるのだ。

 だったら私なぞ必要ない! 全ては勇者の為に……

 どうか……どうか役目を果たし、無事に帰ってきて欲しい。

 あとは……たの……ん……。



 不思議な夢を見た。

 少女と少年が約束を交わすところ。

 少女が泣きながら少し大きな桜の木の下で毎日泣いているところ。

 次第に少女は姿を見せ無くなり……。

しばらく経ってから顔をぐしゃぐしゃにした青年が目を開けない少女を木の根元に埋めて、ぎこちなく墓を作るところ。

 青年が魔女をつれて新たに少女に約束をするところ。

 そして……。

「よう、ずっと見たんだってな?」

 歴戦の戦士然とした男から声がかけられる。

「全く……泣いてた時の記憶なんざさっさと忘れてくれよな」

 気恥ずかしそうに頬を掻きながら、段々とこちらに近づいてくる。

「確かに俺はアルマとの約束を果たした、帰ってきたからな、……でももう一つは守れなかった」

 表情を曇らせ、苛立ちに拳を握りしめる。

「間に合わなかった! 確かに魔王は倒した! でも平和にはならなかった!」

 悔しさからか、はたまた別の感情からか、握りしめ過ぎた拳から紅い筋が流れる

「なぁ……頼むぜ、その子を……新たな勇者を絶対に守ってくれ!」

 言われるまでもない。

「だから……」

 その時、男の隣から少女が……男と約束を交わした少女が現れる

「「私(俺)たちをもう守らないでほしい」」

 そんな……そんなことは……。

…………。

そんなことはできない! それが……それが私と君たちとの約束じゃないか!

「なぁ……約束に囚われ過ぎないでくれ、俺はそれで悔やんでも悔やみきれない後悔を背負った」

 !!

……その言葉は私が最初の勇者に願った言葉。

「俺たちの全てをお前に託す! だから……新たな勇者に力を与えてくれ……頼む!」

 そんな……そんな……

 ……

 …………

分かった、私の全てを……いや、私と君たちの全てをあの勇者に託そう。

「あぁ……ありがとう! これで安心して逝ける……」

「ありがとう……桜の木さん、見守ってくれてありがとうね……」

 二人の体から透明な何かが抜けていく。

 残った体は私の中に吸収されていく……

 ああ、わかった……この思いは必ず勇者に届けよう。


「おぉ……なんということだ! 世界樹が……世界樹が枯れていっておる!」

「こ……国王陛下! 落ち着いてくだされ!」

「これが落ち着いていられるか! 世界樹が枯れるのだぞ! この……この国はお終いじゃぁぁぁ……」

「陛下―!」


国のいろんな人が叫んでいる。

嘘だ! どうして!

そんなことは気にしない、今は勇者……それだけだ。

さぁ勇者よ! かつて後悔の中で消えていった『勇者』の力を!

その無念を! そなたに託そう!

後は任せた……ぞ……


「おっと忘れもんだぜ?」

 どこからか声が聞こえる。

 まだ残っていたのか、心配性だな。

 でもそうだった、全てだった。

 最後の力で二人の空間を開こう。

さぁ勇者よ、私の中に有る勇者の装備を持っていくといい。

 それで本当に最後だ……

 ……

 …………




 三十二代目勇者によって魔王は倒された、しかしその勇者は呪われていた。

 勇者が必ず受けていた世界樹の祝福を受けられず、逆に世界樹を枯らしてしまったそうだ。

 勇者は血で染め上がった鎧に身を包み、一人で魔王に立ち向かったらしい。

 その勇者は討伐後、国王の問いにこう答えたと記録に残っている。

「この世界は間違っている」……と。

勇者が何を見て知ったかは定かではない、ただこれだけは言えるだろう。

「勇者とは……無力だ」

 その後の勇者は第二の魔王と言わんばかりに暴れたそうだ。

「俺は託されたんだ! 平和を!」……と。

 しかしその望みは叶えられなかった、数は力だ。

 世界を守り、世界を敵に回した勇者は……一体何を思い、何を成そうとしたのだろうか。

 それはもはや誰にも分からない……。


「……さて、お喋りはこの辺にしておいて早く次の街に行こか」

 まだまだ先は長い、こうしている間にも魔王は人間を脅かしている。

「なあ勇者さんよ、どうしてお前さんはそんなこと知ってんだ?」

「さて、なんでだろうね」

「またかよ……どうせ夢での話って落ちだろ? ま、面白からいいけどな」

「はは、そんなとこさ……」

 勇者が変な過去を持ってるなんて、もはやありがちじゃないか。

「行こうか! まだ私達には仲間が足りない!」

「おう、そうだな」

 今日もまた勇者は魔王を倒すべく旅をする。

 いつか、終わりが来る日を待ちわびて……。


「待つだけじゃ駄目なんだ、……今度こそはね」



end


どうでしょう、起承転結は意識しました。

書きたいことは大体前書きに書いたのでこのくらいで。


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