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本当の勇者

どういうことだ!?


なんで、いつの間に俺の部屋へ帰ってきているんだ!?

アラドはどこへ消えた?

多数の疑問が頭を駆け巡る中、俺はテレビにそのまま映っている画面を再度見てなんとなく理解する。


「偽物には、退場してもらう・・・」


俺は、無理やり元の世界へ帰されたんだ。

アラドのあの力で。ということは・・・今の俺は勇者でもなんでもないただの冴えない中年会社員だ。

カンストしたステータスだの、特別な魔法だの、ましてや勇者としての力なんてかけ離れた存在。


俺には、もうどうする手立てもない。


テレビの側に置かれた時計は午前5時を示している。

ああ、もう準備をして会社に行かなければまた八木さんに怒鳴られる。


そうだ、今までのことは夢だったんだ。ゲームをやりすぎた俺の夢。危機に瀕した異世界の少女たちなんて最初からいなかったし、俺はずっとここでゲームをやっていただけなんだ。


テレビだって、いつの間にかスタート画面に戻っている。

現実に帰ろう・・・会社へ行く準備をするために動かなきゃ・・・

・・

・・・

・・・・


だけど、そんな考えとは裏腹に俺の体は動けずにいた。

簡単に夢だったと一笑に付すことなんて、やっぱりできない。

俺の記憶には確かに、あの世界で過ごしたことが鮮明に刻まれている。

そして、彼女たちのことも。


だから、このままで終わりたくはない。あの世界を俺は救いたいと思ってしまうんだ。

なんとしてでも・・・!


そう願った瞬間、俺の部屋が光に包まれた。

な、なんだ!? この光、俺の額から出ているのか!?


【何としてでも世界を救いたいと思う気持ち、俺がかつて願ったことだ】


どこからか声が聞こえる。この声は、ロード!


【俺のかつての願いと、君の願いが真に一致する。これこそが与えた力を発動させる条件だったみたいだ】


力が覚醒したのはいいけど、どうやって戻れば・・・


【そう不安な顔をしないでくれ。本当の勇者のシフトは異世界間ですら自由自在さ。さあ、行ってやってくれ。彼女たちのもとへ。そして、俺の友達をよろしく頼むよ】


そう言い残すと声は遠くなり、消えてしまった。

俺は、強く念じてあの場所をイメージして唱えた。


「シフト!」


次の瞬間、俺の目の前にはまたアラドの姿が映る。

そして、気絶から立ち上がったのであろう、ハル、イゼリア、ユミナの姿も。


「お前、なぜ・・・!」


「ジルさん!よかった!」


「心配させないでよ・・・」


「お熱い登場だねー!」


帰ってくることができた。もう逃げはしない。

俺はアラドと向き合い、言い放つ。


「さあ、決着をつけよう」


「そうか、その額の紋章。ロードの力か!どこまでも、どこまでも僕の邪魔をぉぉぉ!その力もろとも僕の前から消え去れぇえぇぇぇぇええぇ!」


アラドは剣を抜いて、黒い斬撃の塊を飛ばしてきた。

だが俺はその斬撃を避けずに真正面から近づく。斬撃は俺に当たった瞬間、泡のように消える。


あっという間に俺は剣の間合いまで近づく。俺はアラドへ剣を突き立てた。

とっさにアラドは防御をしようとするがその前に俺の剣がアラドの胸へ届いていた。


「く、クソォ!・・・がはっ! なんで、なんでだ!ロードぉ!」


アラドは剣が突き刺さった部分から光の粒子となり空へ消えていく。


「アラド、ロードが俺の友達をよろしくと言っていたよ」


消えゆくアラドに俺はそれだけ言った。

それを聞いた直後、アラドはなにも言わなくなり、消えていった。


光で、アラドの顔は見えていなかったが、最後には笑って消えた。

俺はそう思いたかった。


次回はエピローグとなります。よろしければお付き合いください。

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