異世界の異空間の戦い
蝋燭で照らされながらも暗い廊下を俺たちは進んでいく。
先へ進む道は灯りが続いているとは思えない暗さで、真っ暗だ。
隠し階段の先、魔王城へと入った俺たちは一度も魔物と出会わず静かで暗い道を歩いていた。
魔王城では、普通の魔物とはエンカウントしない。
城内には直線の廊下しかない。廊下の先には部屋があり、そこには魔王の使いが待ち受けている。
ここに出てくる魔王の使いは四天王と呼ばれており、連続で4回戦う羽目になる。
ゲーム中でも屈指の難所だ。正直間隔を空けられる魔王よりも辛い。
そういうわけから、魔物にエンカウントしないのは理解はできる。
しかし、四天王がいるはずの部屋へ入っても、そこにいるはずの四天王がいなかったのだ。
「おかしいなー、これだけの城で、しかも魔王がいるっていうのに全然なんにも出会わないなんて」
ユミナはそう口にしながら部屋の中を調べまわる。
魔王城の雰囲気は、アラドが現れた大聖堂の雰囲気とよく似ている。
その場にいる、という現実感が湧かない。
足をつけて歩いているはずなのに、つけた感触も薄く足は本当についているのか自信がなくなる。
明らかに、異質な状況だ。これは一度戻るべきかもしれない。
俺が、そう提案しようと後ろを振り向いた時だ。
「どこへ、行くんだ?」
!?
目の前に突然、アラドが現れた!
「みんな!後ろだ!」
「遅い」
アラドは腕を振り払うと、衝撃波がそこから生まれる。
「「「きゃあ!」」」
「ハル!イゼリア!ユミナ!」
3人ともその場から弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
そのまま気を失ったのか動かなくなる。
「クソ!まさか、こんなところで出てくるなんて思いもよらなかった!」
油断をしていた。この異質な空間に意識を取られ、アラドに気付くことができなかった。
それにしても、なんだ?
アラドから漂うこの気配。明らかに以前に感じたものよりも邪悪さが増している。
「待っていようとも思ったけど、城にいた連中は残らず吸収してしまってね・・・退屈でこちらから来てしまったよ」
「吸収・・? まさか!」
「そうさ。魔王城にいた魔物、四天王とか言っていたか。そいつらと、この城の主である魔王。既に僕の力となってもらったよ」
通りで誰もいないわけだ。
そして、アラドの禍々しい気配にも納得がいく。
「彼らの力はなかなかに素晴らしい。こうして魔王城そのものを別空間に切り離すこともできるほどだ。今までの僕とは違う。君みたいな偽の勇者なんぞもう相手ではない」
俺は、アラドから目を逸らさずに剣を抜く。
ここで、アラドを倒せば全てが終わる。終わらせてやる。
「さあ、耐えきれるかな!?」
アラドは右手から炎の魔法を、左手から氷の魔法を繰り出してきた。
レーザービームのように直線で俺に向かって飛んでくる。
凄まじい速さだ。だけど、避けられないほどではない。
俺は剣を構えながら、魔法を避けてアラドへ走り寄る。
アラドにあと一歩と近づいた瞬間、なにかが俺の顔に襲い掛かる。
間一髪のところで俺はそれを剣で受け止める。
受け止めたものの正体は黒い剣だった。
「これが僕の新たな力だ。たっぷりと味わうがいい」
俺は、受け止めていた剣をそのまま押し返してアラドの胸へ斬りつけた。
「馬鹿なっ!?」
驚くアラドの胸からは赤い血が流れ出る。
アラドは魔王たちを吸収して、強くなったのかもしれないが、なんてことはない。
俺のステータスがカンストしていたから、結局は相手にならなかった。
「こんな、こんな・・・せっかく魔王まで吸収したのに!ふざけるな!ふざけるな!なんなんだよお前!僕の邪魔をするなするなするなああああ!」
取り乱したアラドは黒い剣を振りかざす。俺はそれを躱して、アラドに最後の剣を・・・
◇
「・・・はっ」
アラドに剣を突き立てようとした俺の目の前には、アラドではなく、見慣れた黄ばんでいる古いゲーム機があった。え?なにが起こった?
確かに俺はさっきまで魔王城に、というかなんで俺の部屋に帰ってきているんだ?
テレビには、エンドクレジットの最後に現れる「AND YOU!」の文字が・・・
だが、その画面は徐々に歪み、真っ暗な画面を映し出す。
『にせものには、ごたいじょうねか"おう』
無機質に画面下部へ現れたテキストボックスにはそう書かれた。




