導かれるかの如く
「ここか...」
俺は粗末な看板の前に立つ。看板には「勇者の修練場」と書いてあった。
祭壇やなにかの人物の石像が立ち並ぶ遺跡のような景色で、修練場というよりは儀式の場所に思えた。
雪原の奥にひっそりと隠れるように存在していたここは、人が出入りしている様子などなく、あちこちがボロボロだった。
「こんなところで本当に勇者が生まれたの?」
イゼリアが訝し気に言う。
俺も疑問に思っていた。修練場というからには、なにか鍛錬するための道具が置いてあるのを想像していたんだが、どうやらそういった類のものは一切ない。
じゃあ、なんで「勇者の修練場」なんて名前が着いているんだ?
俺は考え込む。
(っち...だ...)
「ん?誰かなにか言ったか?」
突然、声が聞こえた。
俺は誰が喋ったか3人に聞いたが、3人とも首を振る。
(俺は...ここに...)
まただ。頭の中に響くように聞こえてくる。
しかも、今度はさっきよりもはっきりと。
(最奥の祭壇に...)
「最奥の...祭壇?」
その時、俺はこの修練場にある石造りの道だけは綺麗に整っていることに気づいた。
そしてその道は修練場の奥へ真っ直ぐに伸びている。
「ジルさん、この場所の一番奥にすごい光が見えます」
ハルがその道の先を指し示す。ハルもなにか感じ取っているらしい。
「少なくとも、無駄足ではなさそうだねー」
ユミナが前へ歩き始める。
「ちょっと、なにがあるのかわからないのに!」
前へ行くユミナをイゼリアが手を取って止める。
「勇者に関わりのある場所なんだしそんな危険なことはないと思うよ。ま、わかんないけどね!」
「いい加減すぎでしょ!」
「でも行けばわかるでしょ?それに、ジルもハルも入り口だけで満足する気はないみたいだし」
2人の口論をよそに俺とハルは修練場の奥へ進み始めていた。
「もう、しょうがないなあ!」
俺の頭の中の声に従って俺は石の道を前へ前へと進む。
隣にいるハルは目を凝らして光の正体を見定めようとしていた。
◇
(俺は、ここだ)
(俺はここにいる。どうかここまで来てくれ)
進むほどに声は大きくはっきり聞こえるようになってくる。
やがて修練場の最奥へとたどり着いた俺たちはみすぼらしい祭壇を見つけた。
祭壇の中央には勇者の紋章が入っている箱があった。
「最奥の祭壇ってもしかしてこれか...?」
「これです。ここからさっきの光が見えます。強いけど、なんだか温かい光が」
一見すると、ただの古い祭壇だがこれに特別な力があるのだろうか...
(よくきてくれた!)
「!?」
突然、頭の中の声が大きく響く!な、なんだこれは!?
(俺の名前はロード。元勇者だ)
その言葉が俺の頭の中で残響していった。




