朝食と共に
「あっつ...」
寒い夜を過ごしたとは思えないほどの暑さとともに目が覚めた。
「一晩中密着はあったかすぎたねー」
汗だくになったユミナが起き上がりながら言った。
俺たちが階段を降りると、テーブルに料理が並べられていた。
「起きたかい。朝食ができているからお食べ」
メドさんが用意してくれたらしい。パンとシチューが人数分あった。
いい匂いが立ち込めて、とてもおいしそうだ。
「ありがとうございます」
「いいんだよ。それよりも、あんた達に話しておきたいことがあってね」
「話したいこと、ですか?」
俺が聞き返すとメドさんは頷く。
「そうさ。まあ、ゆっくり食べながら話そうじゃないか」
メドさんに促されて、俺たちはそれぞれ座って朝食を食べ始める。
おいしい。
「ここの村にはね、勇者と認められるための修練場があるんだよ」
「それはもしかして、勇者はここで生まれるということですか?」
「そうなるね。私はあまり詳しくないんだけど」
大元の勇者であるロードが生まれ育った地だというのならここが勇者を輩出した村だというのにも納得がいく。ゲームでは、勇者がなぜ勇者なのか一言も説明がない。もしかしたら、固定キャラとして作っていた時の没設定なのかもしれない。
「長い間挑む人間はいなかったんだけど、ロードと友達のアラド君が勇者になりたいといって飛び出すようにそこへ行ったんだよ」
「アラドが!?」
「2人とも小さいころから憧れていたからねぇ。危ないから止めていたんだけどついに私の目を振り切って修練場へ行ってしまったんだよ」
アラドは、ロードと古い付き合いをしていたようだ。
「毎日毎日、気が気じゃなかったわ。ほんの季節が変わるほどの期間だったのにとっても長い間待ったような感覚だったわ。2人ともボロボロになりながら帰ってきてね。帰ってきたロードには額に見慣れない紋章があって、ああこの子は勇者になれたんだと確信したよ」
「アラドは、どうでした?」
ロードは厳しい修練の果てに勇者になれた、それは想像が着く。
でも、勇者になれなかったはずのアラドはその時なにを思ったのだろうか。
「アラド君はね、勇者になれなくて悔しかったはずなのに友人として精一杯支えていきたいって言ってくれてねぇ。とってもえらい子だったわ」
アラドはなにを思ってそれを言ったのか。今の俺には想像が着かなかった。
「しかし、なぜこの話を俺たちに?」
「あんた、えーと...」
「あ、ジルです」
「そう、ジルを見ているとね、孫のロードを思い出すんだよ。不器用な癖に人を気遣おうとするところがなんだかそっくりでね。昨日のこともあって、つい孫の話をしたくなってしまったんだよ」
そ、そっくり、か...
なにか感じさせるものがあったのかな?
「勇者っていうのも久しぶりに思い返したね。よかったらその修練場を見ていくかい?」
「え?いいんですか?」
「興味を持っているようだしね。別に誰が管理しているというわけでもないから構いやしないさ」
「い、行ってみたいです」
その時、イゼリアがこつんと肘で俺をつつく。
そして、耳元に囁いてきた。
「ちょっと、ハルのお母さんのことはいいの?」
「それは、確かに急ぐべきだ...けれど、アラドの情報はできるだけ知っておきたいんだ。俺はアラドもアラドが奪ったロードの力のことも知らないから...」
俺は小声でイゼリアに頼み込んだ。ハルには後で謝っておこう...
「修練場は村を南に出て東だよ。私は腰が悪くて行けないが、見ていきなよ」
「はい」
俺たちは支度をして、勇者の修練場へと向かった。




