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正直者

アラドは本来の勇者、つまりロードと入れ替わって勇者となった。

力を奪ったというのが本当ならば、ロードは無事ではない...


俺はメドさんにそのことを告げるべきか迷った。


「ジルさん...」


ハルが心配そうに俺を見つめてくる。心配をかけてしまって申し訳ないな。

こんな状況、俺にはどうするべきかわからない。

正直に言う方がいいのか、それとも知らないふりをして傷つけないようにする方がいいのか。


「その、メドさん。実はそのお孫さんのことを俺は知っていて...」


様々な考えがよぎったが、俺はメドさんに正直に話すことを決意した。


「おや、そうだったのかい。まあ、勇者なんて大層な称号をもらったんだから少しは名が知れていないとねぇ」


「そういうことではなくてですね...ロードさんはおそらく旅先で...」


俺がそこまで言おうとした時、メドさんが手を突き出して俺の言葉を遮る。


「お待ち。その先は言わなくてもいいよ。その様子だとあの子の身になにかあったみたいだね」


「は、はい...」


メドさんが俺の目を貫くような視線で言う。俺はその視線から目を逸らさず頷く。

俺のその様子を見て、メドさんは笑みを浮かべるとそのまま話を続ける。


「そんな心配そうな顔をしなくても私は大丈夫だよ。私の孫なんだ。やわにはできちゃあいないよ。どこかでピンピンしているだろうさ。だから、あんたもそんな辛い顔をしながら無理に話すことはないんだ」


それを聞いた俺は、それ以上話す気にはなれなかった。こんなことを言っていても、不安に思っているだろうに俺を気遣うことまでしてくれたんだ。俺はただ、頭を下げるだけだった。


「さ、疲れただろう。今日はもう休みなさい。こっちにあの子の部屋があるからそこで休みなさい」


メドさんは立ち上がって階段を上り始めた。


「行きましょう」


イゼリアが俺の手を引いて立ち上がらせてくれる。

見ると、ハルとユミナも俺を待って階段のそばにいた。


「ありがとね」


イゼリアはそれだけ言って俺の手を握ったまま進み始める。

俺はそのまま部屋へと向かった。



予想はしていたが、ベッドが1つしかなかった。

ロードとメドさんが二人で暮らしていた家らしく、メドさん以外の使えるベッドとなると必然的に1つだ。

メドさん曰く、詰めればなんとかなるとのことだ。そういうことではないような...


幸い、ベッドはかなり大きめだ。これなら狭いかもしれないが3人ぐらいなら一緒に寝れるだろう。

俺は適当に寝れそうな場所を探せば...


「俺は寝れそうな場所を探してくるよ」


だが、イゼリアが首を振る。


「こんな寒い場所でまともな寝床にも入らなかったら、風邪を引くわよ。だ、だからってわけでもないんだけど...一緒に寝るわよ!」


イゼリアの意外な提案に俺は目を丸くする。


「ほらほら、さっさと寝ましょ寝ましょ!」


ユミナが俺の背を押してベッドへ連れて行く。

反論する暇もないまま、俺はベッドに入る。続けて、イゼリア、ハル、ユミナが詰めて入ってくる。

俺の右には、イゼリア、左にはハル、イゼリアの後ろにユミナが入る形となった。


なんとか寝れそうなスペースはあるとはいえ、流石に4人もベッドに入ると狭い。

それに、これだけ近いと体の感覚を意識せざるを得ない。

眠れるのか...これ?


「今日は、頑張ってくれたから...」


「え?」


イゼリアが小さくなにか囁く。


「あんた、メドさんに勇者のこと言おうとしてくれたでしょ。そういうの、私にはできなかった。なんて言ったらいいかわかんなくて。あんたがその辛い役割を引き受けて頑張ってくれたから、私も頑張って今日はあんたに近づこうかなって...」


イゼリアは顔を真っ赤にしながら言う。が、頑張りは伝わるけど、近すぎるような...


「イゼリアー、まだまだ足りないよ。ほらほら!」


イゼリアの後ろにいたユミナがただでさえ近いイゼリアを押し込んでくる。

イゼリアがもはや密着していると言っていい近さにまで近づく。


「だ、大丈夫か?」


俺はイゼリアに聞く。


「平気、よ」


イゼリアの体温が急激に上がっているのがわかる。だけどイゼリアは少しも嫌そうな顔はせずにただただ気恥ずかしそうに顔を俯かせていた。


「イゼリアさんずるいです!私も!」


その様子を見ていたハルも俺にグイグイと近づき、俺の左右の腕の中にイゼリアとハルが収まった。


「寒いなら、人肌で温めあうのが一番だよねー」


「ひ、ひとは...!」


イゼリアは更に顔を赤くする。その背後のユミナのにやけた表情がちらつく。

また余計なことを...


赤い顔のイゼリア、それをからかい続けるユミナ、それにムキになるハル。

こんな様子を続けていて、眠れるか怪しかったが俺たちはいつの間にか寝てしまっていた。



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