銀世界の道しるべ
ゆ、雪景色!?
俺の知る限りでは雪のフィールドを歩くことはない。
これはつまり、エラクスの魔法であらぬ方向に飛んで行ってしまった可能性が...
それはまずい!のんびりもしていられないのに!
「うー、さむさむ。こんなこともあろうかと、よっと」
ユミナが自信のリュックを漁り始めて、中から毛皮のコートを数着取り出す。
「はい、みんなの分もちゃんとあるよ」
「ずいぶん準備がいいんだな」
ユミナは俺たちにコートを配る。
俺は感心する。
「魔法のせいで死ぬ心配はなくても着いた先はどんなところかわかんなかったからねー。それに、暑い寒いで必要以上に苦しめられるのはもう嫌だったし」
ユミナはうんざりした顔をする。砂漠のことでも思い出しているっぽいな。
早速、俺たちはコートを被せるようにして着る。
かなり大きく作られたコートで、鎧の上からでもすんなり入れられることができた。
「今度売りに出そうと思っていた特注品よ。いいでしょこれー」
ニコニコと俺たちにユミナが語り掛ける。
確かに、これを着るだけで今まで感じていた身を切り裂くような寒さがずいぶんと抑えられた。
毛皮の手触りも心地よく、質がいいのがわかる。
「暖かくてユミナの用意したこの服がいい品物なのはわかるけど、このままここにいればみんなそのうち凍えちゃうわ。とにかく、人がいる場所を探しましょう」
イゼリアはそういうと魔法を唱える。
「アカト」
すると、イゼリアの胸のあたりから小さな炎が煌々と灯され始める。
「暗いから、明かりをつけたわ」
「それは、お父さんの本に載っていた魔法かい?」
「ええ、そうよ。火を照らし続けるだけの魔法だけどこういう時に役立つでしょ」
辺りは、雪に覆われいつの間にやら夜になっていたらしく暗かった。
この中で歩くのは危険だが、野ざらしのここで休むわけにもいかない。
歩かざるを得ない状況でイゼリアがこんな魔法を覚えていたのはとても助かった
「でも、明かりをつけたのはいいけど、どっちに行けばいいやら...」
前後左右見渡す限りの雪景色だ。
こんな状態で、あてずっぽうに歩くと余計に迷うかもしれない。
俺が考え込み始めると、ハルが俺の手を引っ張る。
「ハル?」
「ジルさん、こっちです!」
そういって、ハルは俺の手を引いてどんどん前へ進む。
ど、どうしたんだ!?
「ハル、どうした!一旦落ち着こう!」
「こっちにずっとマテンでも見た赤い光が伸びてるんです!だから、きっとお母さんはこの先にいます!」
力の一端か!
信じ切ってしまうのは怖いが、こんな状況ではどこの道を行っても同じだ。
それなら、ハルを信じて行こう。
「わかった、行こうか」
俺はイゼリアとユミナに視線を移す。2人も俺と同じ気持ちなのか無言で頷いた。
謎は多いまま、俺たちは雪の道を歩いて行った。




