謎と既知
「到着ですー!」
「ここがネタスの村か」
俺とハルはカマクの村から歩き続けてネタスの村にたどり着いていた。
ネタスの村は海が近く漁業が盛んな村だ。
「わ、わー!海ですよ!ジルさん、海がこんなに近くに!私、初めてです!」
「ハルは海を見るのが初めてだった?」
「私、村の外へ出たことがほとんどなくて。海は遠くからしか見ることができていなかったんです」
「じゃあ、カマクのことしか知らなかったのか」
「はい。だから、嬉しいです。ジルさんが私を旅に連れて行ってくれて。お母さんのことはもちろんそうなんですけど、私が知らない色々な場所へ行けると思うとわくわくします!」
俺の選択はあまり褒められたものではないとはいえ、ハルが嬉しそうにはしゃいでいる姿を見てよかったと思う自分がいる。
「そうなのか。王都までではあるけど、色々と見ていくといいさ」
「はい!楽しみです!」
「そうだ、ちょっと待っていてくれ。俺は用があるから」
ハルのことも大事だが、俺はこの村に来た目的へ向かう。
ここは小舟ではあるが連絡船が通っていて、対岸の大陸へ向かうのに使う。それを使用するために俺は桟橋にいるであろう渡し役へ話しに行く。
「...んで!...行かなきゃ...!」
ん?なんだ?
なにか揉めているのか。
見ると、桟橋の上には渡し役ともう1人、ローブを身にまとった女の子がいた。
「もう!どうして向こうへ行ってくれないの!」
「だから言ったろうが。渡すための船は壊れちまってる。直そうにも材料が取れる森には手ごわい魔物が出るようになって渡すどころか修理がままならねえんだ」
渡し役の話はゲームでもあったイベントだったので聞き覚えがあった。
でも、あんな女の子いたかな?
「あ、あのーちょっといいですか?」
「なんだい、おっさん。渡し船なら...ん?あんたもしかして勇者かい?」
「ちょっと私の話を!」
渡し役は俺の剣を見て伺う。
「勇者ですって!?」
その話を聞いたローブの女の子が反応する。
「ええ、まあそうです」
俺は両方に返事をする。
「ちょうどよかった。勇者さまよ、村はずれにある森の魔物を退治してくんねえかい?」
「ええ、お話は聞かせて貰っていたので。やらせてもらいます」
どちらにしろここが動かないと俺はどこにも行けない。
「ちょっと待った!」
すると、ローブの女の子が声を上げる。
「私も行くわ!」
「それは、構わないけど...」
得体は知れないが、着いてきてくれるなら特に拒みはしない。
「よーわからんがとにかく困ってるんで助かるぜ。んじゃ頑張ってくれい」
なんだか流れに流されてしまった気はするが、俺はこの謎のローブの女の子と組むことになってしまった。