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プレゼント

「ジルさん、あの、ちょっといいですか?」


俺の部屋の扉を半分ほど開けてハルが顔を覗かせる。

いつも元気なハルにしては珍しく、こちらに来るのを躊躇っているような様子が窺えた。


「大丈夫だよ、ハル」


俺の言葉にハルは小さく頷くと扉を開けて部屋へと入ってくる。


「ジルさん、えと、その...」


ハルはなにか言いたげだが、なんとも歯切れが悪い。


「大丈夫、俺は逃げないから。ゆっくりでいいよ、落ち着いて話してみて」


「は、はい。実はお母さんへの贈り物、まだ渡せていなくて」


ああ、そういえば。

色々と立て続けに起こったから、渡すタイミングを失っていたな。


「それで、その、渡そうとしたんですけど、いざ渡そうとするとなんだかどういう風に渡せばいいのかわかなくて...」


「どういう風もなにも、会った時のあの調子でいいんじゃないのか?」


ハルはぶんぶんと首を振る。


「あれは、久しぶりに会えてつい気分が舞い上がっちゃって。気分が落ち着くと、お母さんとどう話せばいいのかどんどんわからなくなって」


要するに、あれは久しぶりに会えた嬉しさからくる一時的な接し方であって、普段のハルとして接するにはどうしたらいいかわからず気まずさを感じているというわけか。


「それで、お願いなんですけど、お母さんへ贈り物を渡すのを一緒にやってくれませんか?」


「え?いや別にいいけど、なんでそんな?」


「ジルさんが傍にいると私、安心するんです。それに、私がここまで来てお母さんと会えたのもジルさんが私を旅に連れて行ってくれたから、ちゃんとお母さんに紹介したいんです」


ハルが出会った時に見た輝くような目で俺を見つめる。

こうやって頼って、信頼されるのはとても嬉しい。


「そうか。ありがとうな」


「い、いえ」


ハルは顔を少し赤くして下を向く。

俺はハルを連れて、フィアナ王女がいる部屋へと向かった。



フィアナ王女の部屋の前に立つ。

ハルは一度、大きく深呼吸をする。


「すーはー、よし!」


意を決したハルはフィアナ王女の部屋をノックする。

こんこんと小さな音が響く。


ノックを受けた扉はゆっくり開けられて、フィアナ王女が出てくる。


「あら、ハル。それと、ジルさん?」


ハルはぎこちない足取りながらも一歩前へ進む。


「あのね、お、お母さん。これ、受け取ってもらえないかな?」


「これって、箱?中にはなにが...まあ...」


箱を受け取り、中にある指輪を見たフィアナ王女はその輝きに目を奪われる。


「私、やっとお母さんに会えてうれしかった!でも、ここまで来れたのは隣にいるジルさんがいたから。今ね、こうしてお母さんへの贈り物を渡すことができるのもジルさんのおかげ。その贈り物はね、とっても素敵でお母さんの喜ぶ顔が見たかったから贈るの!」


ハルは拙いながらも、フィアナ王女へ自分の思いを告げる。

フィアナ王女はニッコリと笑ってハルを抱きしめる。


「ありがとう。こんなに素敵な贈り物は初めてだわ」


「えへへ、や、やったぁ」


ハルは顔を赤らめて照れ臭そうにしていた。


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