捕縛作戦:会議中
「おっと!すまんすまん。言い方が悪かった。魔王の力は強大でな、あいつの望む強い思念がそちらの世界に影響してあんちゃんが見ていた俺たちの世界が歪んじまっているんだ」
俺が見ていたこの世界、つまりは俺がゲームとしてやっていた「グランワールド」。そこで見聞きしたものは本来とは違った光景だったのか?
「そんな難しい顔するなよ!あんちゃんが知っていることはもしかしたら違うかもしれないくらいに思っといてくれたらいいんだよ!はーはっはっ!」
思案する俺にエラクスは肩をバン!と叩いて大笑いする。
か、関節外れるかと思った...
「まあ、魔王は他の世界にちょっと迷惑かけちまうくらいの力を持っている。加えて勇者の力を持った坊ちゃんも加担していて、正攻法で立ち向かうのは厳しい」
で、でも...
ゲームでは正面から倒せたという言葉が喉から出かかる。
「ゲームでは」。ゲームで魔王を倒すのは誰だ?勇者だ。
その勇者は誰だ?アラドだ。そうである以上、魔王の本当の力は計り知れない。
そもそも俺は結局のところしがないサラリーマンでしかないんだ。
大人しく話を聞いて、できることをやろう。
「そこで、まずアラドを捕縛して内情を探ろうと思います。アラドがメキラの森を抜ける方法を私の力以外で見つけたというのであれば近いうちに彼は必ずそこに表れるでしょう。しばらくは森にある霧のなかに捕縛用の魔法陣を仕込んで置き、霧を通ろうとした瞬間に捕えます」
「そ、そんな魔法があるんですか...」
俺はフィアナ王女に問う。
あるから言ったんだろうけど、仮にも勇者の力を持っているアラドを罠で捕えることなんてできるのか?
「ご心配には及びません。このような日のためにエラクスさんは対策できる魔法を開発する旅に出てもらっていました。エラクスさんほどのお方ならアラドも捕まえることもできましょう」
「え?それっていつからですか?」
イゼリアが間抜けな声を上げた後、フィアナ王女に詰め寄る。
「ええと、私が家を離れた時期だったので2年前ですね」
「お、お父さん?今まで帰って来てなかったのってそれが理由?」
イゼリアが恐る恐る問いかける。
「ん?そうだぞ」
「ええー!てっきりまだ昔のことが尾を引いてると思って無理に探したりもしなかったのに!」
「なーに言ってんだ。俺がそうそう落ち込むことなんてねーぞ」
エラクスはあっけらかんとしてイゼリアに言い放つ。
「で、でも!お父さんが一番最初に旅立ったのって...!」
「ん?おお、おお!あれか!あんときも別になんとも思ってなかったぞ。ただ本として置いておくと邪魔だなーって思ってよ。せっかく書いて捨てるのももったいねぇから親戚連中とかに預けに行ってただけだぞ?」
「じゃあ、なんであの時あんなに落ち込んでたの!?」
「そりゃ、お前...愛する娘としばしの別れってなったら落ち込みもするだろー」
んぐぐぐぐぐとイゼリアは唸り出す。
とても怒りたいようではあるが、最後に言われた内容が嬉しかっただけに怒るかどうかすごく悩んでいるみたいだ。表情が嵐のごとく乱れる。
「なに、それー!?」
すべての感情をその言葉に乗せてイゼリアは空に向かって叫んだ。




