マテンの村
「え?故郷のはずなのになんでそんなに驚いた顔をしているんだ?」
イゼリアの様子は、久しぶりに故郷に帰ってきた人ではなく、明らかに見てはいけないものを見てしまった人のようだった。
「確かにここは私の故郷、旅だった時そのままの村よ!でも、こんな場所にあるわけないの!あんたが私と出会った場所、覚えてるでしょ!?」
「あ、ああ...」
ネタスの村だったな。
「私の村ってあの村からカマク村の方角へずーっと進んだ先の山を越えて、海を越えた先にある小島の中にあるのよ!どう考えてもこの大陸に存在なんてするはずないの!」
カマクの村を通り過ぎて山を越えてそのまた先へ...
確かに、この場所にあるのはおかしい。
「イゼリアさん、驚かれるのも無理はないでしょう」
先へ行っていたフィアナ王女がハルと共に大柄で立派な髭を蓄えた男と戻ってきた。
「フィアナ王女、そちらの方は...」
「お父さん!帰って来てたんだ!」
俺がその大男についてフィアナ王女に聞く前にイゼリアが声を上げる。
お父さん...じゃあ、この筋骨隆々で海の男ばりに髭がある男らしさ満点の人が大魔導士エラクスか!?
「おう、ちょうど旅が終わってな。王女さんがピンチみたいでこっちにすっ飛んで帰ってきたってわけよ。久しぶりに愛する娘とも会えたし、今日はいい日だ!はーはっはっ!」
エラクスは豪快に笑い飛ばす。トウシンで見た荒くれとか戦士にも引けを取らない。
ゲーム内で何度か名前を聞く機会はあったが、こんな姿をしているとは夢にも思わなかった。
「エラクスさん、本題の方へ入ってもよろしいでしょうか?」
「ん?おお!すまんね王女さん!存分に話しちゃってくれ!」
フィアナ王女は軽く咳払いをして、話し始める。
「まず、イゼリアさん。ここは間違いなくあなたの故郷、マテンの村です」
「やっぱり、そうみたいですね」
イゼリアは辺りを見回して納得する。
「では、なぜ遠く離れた島にある村がロレドニアの近くから行くことができたのか。それは、私たちがメキラの森で入った霧による効果です」
メキラの森にあった霧、俺が知る限りでは特に理由もなく道をふさいでいるだけの存在だった。
「実はあの霧は、転移魔法の役割を果たしています。ここ、マテンの村で霧を通る者を監視することで、脅威となる者は霧を通っている最中に転移させて入ってきた場所へ戻します」
「基本的に、監視はしていないんだがな。王女さんから直々にお達しがあったから今は霧を設置していたのよ。アラドっていう勇者が通ったら丁重にお返しするようにってな」
エラクスが加えて説明する。普段は設置されていないのか、あの霧は。
「霧は、そのようにしてマテンの村と繋がっている転移魔法です。その転移魔法の出る先をマテンの村にしてもらうように私が頼んだのです。だから、全く違う遠い場所へと来たのです」
「そ、そんな大掛かりな魔法が仕掛けてあったんですか...あの霧には...」
イゼリアが感嘆する。俺も、ぱっと見ではとてもそうは思えなかった。
「おっとぉ!俺からも話したいことあんのよ!そこのあんちゃん?にな!」
あんちゃんを微妙に疑問形にされた...
「な、なんでしょう...」
「あんたが自分の世界で見ていた俺たちの世界、あっただろ?」
そのことを...!いや、フィアナ王女と繋がっている人でただならぬ人なのはすぐにわかる。
俺の事情も知っているんだろう。
「ええ、はい」
俺は特にうろたえずに答える。
「あれなぁ、魔王が都合のいいように見せた世界なんだよなぁ」
「え!?どういうことですか!」
俺はうろたえて答えた。




